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このお話に関してはまだ目次がないので、
読み返しされたい方はお手数ですが、ブログのテーマ別から選択して読んでやってくださいm(_ _ )m
いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
どれくらいの時間が流れたのか、
次第に髪の色も戻った冴の身体から力が抜けるのを感じた沖田は
冴を腕から解放し、静かに布団に横たわらせた。
そこで気付いたのは前髪のうちの一束が白いまま残されていた。
『…髪が白いままの状態…今までいなかったはず』
部屋には集まった幹部の何とも言えない静けさが立ち込めていた。
「…どう見る、山南さん」
口を開いたのは土方だった。
「ギリギリのところ…だったのではないでしょうか…。峠は越したとみていいでしょう。
あとは…目が覚めるのを待つばかりといったところです」
「…そうか」
土方は静かに息を吐いた。
「土方さん。僕はここに残りますよ」
冴の顔を見つめたまま、沖田が土方に声を投げた。
「…条件がある」
「何です?」
視線だけを土方に向ける沖田。
「飯くらいは食え。それが条件だ。あとは好きにしろ」
「…わかりました。…ありがとうございます」
口元を微かに緩めた沖田は再び冴に視線を落とした。
「他の者はそれぞれ持ち場につけ」
土方の声に集まった幹部たちはそれぞれ動き出す。
冴の表情を見ていた斎藤も小さく息を吐き、スッと立ち上がり部屋を出て行った。
皆が部屋から去った後、残っていた山崎が口を開く。
「俺も行きます。沖田さん、何かあればすぐ呼んでください」
「…山崎君」
スッと立ち上がった山崎に沖田は声をかける。
「何でしょう、沖田さん」
「一君の手首、診てあげて」
「…承知しました」
軽く頭を下げた山崎は静かにその部屋を出て行く。
静けさを取り戻した部屋。
冴の微かな寝息だけが耳に届く。
冴の寝顔を見つめながら沖田は優しく声をかける。
「冴、ごめん。ずっと僕を呼んでくれてたんだね。
僕も君を呼んでいたけど、少し距離があったみたいだ。
もう大丈夫だよ。僕は君の傍にいる」
幼子の頭を撫でるように優しくそっと髪を撫で、
冴の輪郭を確かめるように指を沿わせてなぞっていく。
「ねぇ、また総司って呼んでよ、冴」
冴のか細い手を取り、上体を曲げて自身の頬に触れさせる。
「僕は…狂ってしまいそうだ」
伝わる微かな温もりに沖田は目を伏せた。
斎藤の自室にて山崎は斎藤の左腕を診ていた。
「折れてはいないですが…、もっと腫れてくるかもしれません。
とりあえず冷やして薬草を塗っておきます」
「すまない」
「…これは…松原さん、ですね?」
山崎の言葉に視線を逸らし、斉藤は静かに目を伏せる。
「ああ…。副長には俺から報告する」
「承知しました」
斎藤は今まで羅刹を斬り伏せることはあっても、直接羅刹の力を体感したことはなかった。
『あれほどまでの力なのか…』
自身の左手首を見やる。
羅刹として覚醒した冴を思い出し、口を一文字に結んだ。
山崎が部屋を去った後、障子戸を開け、廊下に出る。
視線が向くのはぼんやりとした光が障子に浮かぶ冴の部屋。
『お前が羅刹になった罪は俺達新撰組が受けよう。…忠司、生きてくれ…』
庭の木々が風で揺れる音を聞いた。
私はまだ闇の中にいた。
さっきの感覚はなんだったんだろう。
先程から包み込まれている感覚が心地いい。
何を言っているのかはわからないけれど、耳から入ってくる音色が私の気持ちを穏やかにしてくれる。
総司…かな。
ああ、会いに行かなきゃ。
きっと私を待ってくれているから。
ふわりと意識が浮かび上がる感覚。
暖かな光が見えた気がした。