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第1話はこちら→★
いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
季節は流れ、新撰組を取り巻く時代の流れが加速を増そうと力を蓄えていた。
月の光は変わらず京の町を照らしている。
風は秋の気配を漂わせていた。
綺月は呼ばれた部屋で名乗り顔を上げる。
「久し振りだな」
風間は口角を上げた。
「お久しぶりです」
戸の前に座り、頭を下げる。
「今日はお前に用があってきた」
酒を一杯煽ってから話を切り出した。
「…薩長の間で近日中に新撰組を襲撃する話が出ている」
「…!」
目を見開く綺月。
「お前もあの男の身は案じているのであろう?」
「…」
目を伏せる。
「この話、俺が潰してやっても構わん」
「…ご条件は?」
風間を見つめ、口を開いた。
綺月のその様を鼻で笑う風間。
「察しがいいな、綺月」
「次に原田が来た際に奴の刀の鞘をすり替えろ。それだけだ」
更に低くなった声が耳に響く。
「…原田様の鞘を何に利用されるおつもりですか」
「…そこまで言う必要はなかろう」
溜め息混じりに綺月の問いをあしらう。
「鞘をすり替れば屯所襲撃の話を無しにしていただけるのですね?」
「俺は嘘はつかない。ただ今上がっている屯所襲撃の話だけだ。それ以降の話は知らん」
『この話を引き受ければ…きっと歳三さんはお怒りになる…。
この方は私を利用するだけかもしれない。
…それでも…何も出来ない私が…何か出来るなら…』
唇を少し食む綺月。
「…わかりました」
「物分かりが良いな、綺月。近こう寄れ」
「…はい」
風間の隣に座ると置いていた風呂敷を広げる。
「この鞘ですか」
鞘を見つめ、呟く。
「そうだ。素人目にはわからんくらいには似たものを用意した」
「…ではこの鞘を利用すれば良いのでは…」
「中には目利きの奴がいてな。本物である方が都合がいい」
目を細める風間。
「…」
「お前に渡しておく。頃合いの頃にまた来てやる」
「…わかりました」
「この話は終いだ。綺月、酌をしろ」
「…はい」
銚子を一本開けて立ち上がる風間。
「また来る。頼んだぞ、綺月」
風間を見送る。
一つ大きな溜め息を吐いた。
翌日、原田は永倉と藤堂と飲みに訪れていた。
遊郭に入る際には皆刀を預けるのが慣例である。
綺月は信頼する家の従者に頼み、原田の鞘をすり替えさせた。
皆、程好く酒が回ってきた頃に綺月が原田に耳打ちする。
「明日、お一人で来て頂けませんか?」
「ああ、構わないぜ」
口角をあげた原田。
翌日、綺月の元に原田がやってくる。
「お前から誘ってくるなんざ初めてじゃねーか。綺月、早く来いよ」
綺月は原田の正面に座った。
「…」
「…昨日も今日も元気もねーし、何かあったか?」
綺月の顔を覗きこむ原田。
「……鞘のことか?」
その言葉に座ったまま後退し、土下座する綺月。
「申し訳ありません」
「…何でそんなことしたんだ」
「……申し訳ありません」
「…何でそんな事をする」
低くなった声。
「…」
全身にひんやりとした汗を感じる。
「…誰から、どんな条件で引き受けたんだ」
「…」
「…言えよ、綺月」
ふっと和らいだ声。
「…近々、新撰組屯所を襲撃する計画があると伝えられ…、それをなくすかわりに…」
「俺の刀の鞘をすり替えろって言われたわけだ」
腑に落ちたような声を出す。
「…はい」
「申し訳ございません」
深々と頭を下げる。
原田は一つ大きな溜め息を吐いた。
「…綺月、顔をあげろ」
「…」
綺月はゆっくりと顔をあげ、原田を見つめる。
「俺達は新撰組だ。俺達が薩長の連中に刀を向けるように、あっちだって俺達を狙ってる。
屯所襲撃の話を一つ潰したところで、また降って涌いてくる話だ」
「俺達が柔なやつらじゃないことくらい、綺月もわかってるだろ?」
綺月の顔を覗き込む原田。
「…はい」
「お前の気持ちも有難いが…、今後一切そういう話には乗るな。
乗るなら俺や…あの人に相談しろ」
「出過ぎた真似でした。すみませんでした」
頭を下げる綺月。
「綺月、こっちへ来い」
軽い溜め息を吐き、声を軽くした。
「…はい」
隣に座ると
「違う、ここだ」
胡座をかいた上に綺月を横座りで座らせる。
「俺は戦場(いくさば)では槍を使うんだ。刀は他の奴等ほど拘ってはねぇ」
綺月を緩く抱きながら見つめる。
「嘘…」
原田を見上げる綺月。
「嘘じゃねぇ」
「でも刀は…」
「本当だ」
綺月の言葉をゆっくりと遮る。
「…」
綺月は眉根を寄せた。
「まぁ、鞘に関しては斎藤や総司が気付くだろうが、しらを切る…しかねぇな」
綺月に優しい眼差しを向けながら、口角を上げる。
「…すみません」
「気にするな。ただ…」
「ただ?」
原田の顔を見つめる。
「この件は高くつくぜ?綺月」
ニヤリと口元に笑みを浮かべる。
「…はい」
「まずは…この件はあの人には言うな。二人だけの秘密だ」
「…はい」
「…今日は俺を名前で呼べ」
綺月の首筋に顔を埋め、首元から上へと舌を這わせた。
「……はい、左之助様」
綺月の耳朶を甘く噛む。
「で、最後だ」
「…」
鼻先が触れ合う距離で互いに見つめる。
「今日はお前から襲うこと。手加減しねぇぜ?」
「…覚悟しておきます」
綺月は両の手で原田の頬を包み、口付けした。
「いいコだ…」
しばらく互いの唇を貪りあったあと、
綺月は立ち上がり自分の着物を手際よく脱いでいく。
長襦袢姿になった綺月を見上げる原田。
原田を見下ろす綺月。
その綺月の視線だけで熱が集まるのを感じた。
「望むところだ」
口角を上げ、不敵に笑った。
その後、坂本竜馬が暗殺された現場に原田の鞘が残っていたとの噂が流れる。
原田は幹部に問われるも「俺の鞘はここにある」と言い張った。
原田の鞘を利用し、薩長からも敵視されている新撰組を
世間からも貶めようとする企みが見てとれた。
噂を聞いた綺月は居た堪れなくなるが、
原田の言葉を思い出し唇を噛んだ。
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まだまだ左之さんには綺月ちゃんが足りないだろうなと思って、
思い付いた話です。
次からお話が最終話に向けて走り始めます。
最後まで見届けていただければ幸いですm(__)m
みふゆ