日本のサービスの根底にあるもの~有名ホテル等の食材偽装問題を受けて~ ④特徴ⅱ:被害者の不存在 | mi-column(ミコラム) ~時事ニュースから社会を読み解く~

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ⅱ明確な被害者の不存在


二つ目の特徴は、今回の一連の食材偽造の多くが内部調査や内部告発から発覚していることから導くことができます。これは、突き詰めて考えると、犠牲となった被害者が必ずしも明確な形で存在したとは言えないことを意味しています。  


例えば、「芝エビとメニュー表示されていたものがバナメイエビだった」という事例については、プリプリとした食感で日本人好みといえるのはバナメイエビの方とも言える、などということが話題に挙がりました。この二種類のエビは、実際には2倍ほど値段に差があるようですが、芝エビがどのようなものかを理解していた消費者は少なく、その多くは名前の響きから「なんとなく高級で美味しそう」というイメージを抱く程度であったようです。つまり、「芝エビがバナメイエビだった」ということだけでは、そこに明確な“騙す側”と“騙される側”という関係性があったとはいえないのです。

また、「ビーフステーキ とメニュー表示されていたものが実際は牛脂注入肉であった」という事例もありましたが、これはフランス料理の「ピケ」という技法に似た加工を施した牛肉のことを指しており、味や安全性は(しっかりと火を通してあれば)問題がないもののようです。この二種類の牛肉も仕入れの値段に大きな差があるようですが、消費者が求めるものが「高級な雰囲気と美味しいもの」であるという場合には、やはり“騙す側”と“騙される側”という関係があったと断定することは難しいでしょう。


加えて、今回の食材偽装は、賞味期限切れのものを使用したというような、健康を害する危険性を孕んでいる事由は特に見当たらず、食事をしていて気がつくような味や質の低下も取り立てて生じていなかったようです。食材偽装が発覚した店舗の中には、ミシュランの格付けを得ているところも存在していますが(従って、見抜けなかったミシュランを批判する声も挙がっているようですが)、逆を返せば、それだけ料理や附随するサービス全体に高いレベルが保たれていたと言うこともできるでしょう。


つまり、今回の一連の問題のほとんどは、メニュー偽装があったという点を除けば、サービスそのものには問題がなかった(少なくとも一般人の感覚においては、実質的価値を著しく損なわせるようなものではなかった)といえるのです。

今回の食材偽装によって被害を受けたものをあえて挙げるとするならば、発覚した後の「人の心情」ぐらいなもので、その程度は、サービスを提供した企業の体制等によっても大きく異なります。消費者は、サービス全体を通して見ればそれほど問題がないと思えるような企業に対しては「そこまで騒ぎ立てるほどのことではないのでは」と思えるでしょうし、暴利や悪質さが目立つような企業に対しては大きな怒りを抱かずにいられないでしょう。

メニュー偽装・誤表示があった企業をこれでもかと探し並べ挙げ、それらを無分別に批判したマスコミの対応には、おそらく違和感を覚えた方も多かったものと思われますが、その違和感の原因の一つには、この「明確な被害者が存在しない」という点が深く関係しているのではないかと考えます。



→次回:食材偽装横行の背景に存在したものを探ります。