とは言えども、3時間という長時間を立った状態でただ待つというのはなかなか暇なものでして、その間ステージを見てたって誰がいるわけでもなく結局後ろばかり振り返ることになります。私の、いや多分ここにいる大多数のモーオタの皆様方の関心事は、やはりこの6万人以上も収容できるという大スペースのどれだけを埋めることができるのかということであり、万が一半分しか集まらないということであれば、同じアイドル枠の欅坂やももクロと比較し、まだまだその域に達していないと断じられ、そうなると私達はしょんぼりするほかなくなります。だから皆一様にもっとたくさん集まってくれという思いでおそらくは心配そうな面持ちをぶらさげて、後ろばかり見ているのです。
そうこうしているうちに、ステージ上で何やら黒Tシャツを着たスタッフの方々が動き始めます。マイクチェックや音響チェックなどをやっている様子で、途中、ジェラシージェラシーのインストが流れたりすると音楽に飢えた観客から大いなる声援が沸き起こります。ふと振り返るともう既にかなり多くの人波が押し寄せていて、何人かで参加している方々が声を出してその喜びを表すなか、私はひとり密かにほっと胸をなでおろします。
ようやく開演時間に差し迫ると、ひとりの黒Tシャツを着たスタッフ姿の男性がマイクを持って登場します。いったい誰なんだろうと思いながら見ていると、なんとこの方が渋谷陽一さんであることが分かります。彼は自己紹介した上でロッキンが20年目を迎えたことやこれまでの歴史などを話し、そしてモーニング娘。について語り始めます。それではここからはネット動画からの書き起こしとしましょう。
「きっと初めて見る人たちもすごく多かったと思うんですけど、彼女たちは本当に鮮烈な印象を残してくれました。何が凄かったと言えば、彼女たちはこのロックフェスだからと言ってロック仕様になったわけではなくて、いつも通りのパフォーマンスをやって、いつも通りにやって、そしてあれだけの熱狂を繰り広げてくれたわけです。まさにモーニング娘。を、このフェスは発見したわけです。今日ここで集まっているみんなは、レイクステージからグラスというこの巨大なステージになったときの、モーニング娘。をなんとか勝たせたいという人たち、そして彼女たちの勝利を目撃したいという人たち、そういう人たちとこれだけの人が埋まっています。みんな彼女たちの勝利を見たい、という思いだと思います。勝たせたいじゃないですか。そのためにはみんなの大きな声援が必要です。よろしくお願いします。大きな声援で迎えてください。モーニング娘。'19!」
私はこの彼の演説を聞いて初めて知るのです。なぜこれまで一度も夏フェスなどに参加したいと思ったことがないのに、突然行かねばならぬと思ったのか。これまでモーニング娘。のライブに参加できないままだったのが、今回に限ってなぜ実現できたのか。その答えは言うでもありません。私は、彼の言葉通りモーニング娘。をなんとか勝たせたい、そしてその勝利をこの目で見たかったのです。(つづく)