先日お伝えてしていた「体力・技術・危険の項目で最高グレードの登山コース」でございますが、無事行ってまいりました。もっとも・・・国内の数多くある山の中ではそんなとんでもない上級者レベルでもなく、皆様が想像するほどのものではありませんが、それでも私のこれまでの1年ちょっとの登山歴(そのほとんどが低山ハイキング)においては最上級過酷な山行となりました。

 

ちなみにデータ的なところをご紹介致しますと、距離は往復16km、標高差1,700mということで平均斜度は12度ちょっとといったところでしょうか。つまりスキー場の初心者コースよりもう少し急な坂を想像して頂ければよろしいかと思いますが、それがですね、頂上まで8kmずっと続くというわけなのです。で、登山なんかを趣味にしていらっしゃる方はこれをだいたい往路4時間くらいでクリアしちゃうところ、私はといえば・・・ハーフマラソン2時間!とかトレイルランニングの練習で山岳縦走20km!とか言ってるわりには全然大したことなくてですね、しかも山の道具を大幅に見直して全て超軽量級に買い換えてのチャレンジだったのですが、往路なんと7時間もかかっちゃいました。それも息も絶え絶えに身体中が悲鳴を上げた状態で。

 

特に頂上が近くなると斜度が物凄いことになってですね、そしてそれがこの7月も半ばになろうというのに、40℃近い酷暑だとか大騒ぎしているのにも拘らず、なぜか今も一面雪で覆われていて少しでも足を滑らせようものなら大滑落は免れないのです。それがこのコースの技術・危険最高グレードたる所以なのですが、本来なら12本爪のアイゼン(登山靴の下につける鉄の爪)なんかつけていれば足元をガッチリつかんで楽に登っていけるのでしょうけれども、私が持っているのは6本爪の軽アイゼン。それじゃ全然滑っていくのです。もっとも当日はアイゼンなしの方もちらほら見かけましたが。

 

おそるおそる、とにかく滑落して友人に迷惑をかけたり、また後々面倒くさいことになると困っちゃいますし、もちろん根本的に大怪我するのは嫌なので、足を滑らせないように、また万が一滑ったとしても前日のユーチューブ「ピッケルの使い方」で学習した通りに動けるよう心の準備を怠らず、一歩一歩確実に足元を踏み固めながら進んでいきます。

 

そうこうしていると、下山中のひとりの男性がすれ違いざまに「もう少しですから頑張ってください」と声を掛けてきます。これにありがとうございますと答えると、「ここを上がれば楽園が待ってますよ。今日は珍しくガスが出ていないので、後立山連峰が一望できます。ここが一番しんどいので慎重に」と話してくれます。私はその言葉に大いに勇気づけられ、心の中で「楽園が待ってる」と繰り返しながら軋む体を奮い起こし、さらに慎重に歩みを進めていきます。しかしながら彼が言った「もう少し」という表現は、いったい何を基準にしているのか分かりませんが、登っても登っても延々と急坂が続きます。それでも私は彼が残していった「楽園」と「もう少し」という言葉を頼りに遂には最後の岩盤に手を掛けます。

 

果たして、そこには楽園が広がっています。雪はすっかり消え去り、代わりに一面花々が咲き乱れるのです。そして私の脳裏には、佐藤優樹さんがこの前の冬ハローで歌った「こんな場所あったんだね」のシーンが再現されるのです。