芥川龍之介の『羅生門』

ずっと読んでみたいと思っていた作品でした。

ただ、どこか難しそうなイメージがあって、

なかなか手を出せずにいました。

 

それが最近、あらためて読んでみると、

思っていたよりもずっと身近な物語に感じられました。

人の心は、今も昔もそれほど変わっていないのかもしれません。

 

「生きるためなら、何をしてもいいのか。」

 

『羅生門』が投げかけてくるこの問いは、

むしろ今の時代にこそ、

私たちに突きつけられているように感じました。

 

朗読していて面白かったのは、文章そのものの緩急。

物語の前半には、静けさがあります。

薄暗い羅生門の下で、下人が周囲をうかがうように、

ゆっくりと辺りを見渡していく。

 

静かなのに、どこか気味が悪い。

 

その空気が少しずつ変わっていきます。

最初はおどおどしていた老婆が、

自分のしていることの正当性を語り始める。

その言葉には、人間の狡猾さのようなものが見えてきます。

 

そして、それを聞く男の心も変わっていく。

その変化とともに、文章にも次第に凄みと勢いが出てきます。

 

静かに進んでいた物語が、あるところから急に力を持ち始める。

その流れを声で追っていくのが、とても面白い作品でした。

文章の意味だけではなく、速度や間、勢いそのものが、

登場人物の心の動きとつながっている。

朗読することで、読むだけでは気づかなかった『羅生門』の面白さが見えてきた気がします。

 

今回、その『羅生門』をYouTube「夢見るバク」で朗読しました。

静けさから始まり、少しずつ空気が変わっていく物語を、

声でも感じていただけたらと思います。