「楽譜要らずのポピュラー音楽理論」と題した連載記事も、ひとまず終了です。


「楽譜要らず」なだけに、伝わりにくい部分や至らない箇所もあったかと思いますが、作曲、アレンジ、楽器演奏のために最低限必要な事項は記すことが出来たと考えます。


記事はテーマ分けしてあるので、機会を見つけて是非最初から読み直すことをお勧めいたします。


さて、この記事をお読みの方は、何らかの形で音楽に携わっている方、または音楽や楽器演奏に興味をお持ちの方でしょう。


そのような皆様が音楽の「理論」を学ぼうとする動機、目的も、様々かと思います。


ただ、ここで理論を学んだ(あるいは、これから学ぼうとする)方々に、認識していただきたいことがあります。


それは、いかなるフィールドにおいても、「理論」とは、「対象を楽しむためのツール」であるということです。


理論=ルール=制約


と考えてはいけません。


この記事が対象としているものは音楽ですが、音楽は、言うまでもなく楽しむためにあるものです。


音楽理論は、制約ではなく、音楽をより自由に楽しむためのツールです。


理論を知ることによって、無知の状態よりも、多くの自由を享受出来るのです。


メロディ作りに行き詰った時、ギターを鳴らしてコードを並べる時などに、音楽の先人達が築き上げた「理論」が、解決に導くヒントを提示してくれます。


また、楽器演奏者にとっては、理論が身についていればいるほど、フレーズの引き出しが増え、さらには演奏に余裕が生まれるため、その分の余裕を用いて、最も重視すべきリズムに注力することが出来ます。


さらに、私が考える音楽理論学習の最大の効能は、「ルールを自由に破る」術が身につくことです。


ルールを知らない状態でルールを破ると、多くの場合、「無秩序」になります。


しかし、ルールを認識していれば、意図的に予定調和から外れることで、「予想外のカッコよさ」のようなものを生成することが可能です。


例えば、E7 → Bm という、ルールに則った(予定調和的な)ドミナント・モーションがあったとします。


これを、E7からB♭mというコードに進ませて転調させたとしても(このような進行は、これまで書いてきた音楽理論からは外れています)、耳がOKサインを出せば、OKなのです。


「刺激的な展開」、「予想外のサウンド」になる可能性もあります。


ただ、元々のルールを知っていれば、「そのルールを外すと予想外のサウンドになる」、ということも予想がつくのです。


もちろん、闇雲にルールを破ったところで、全てが「カッコいい」になるわけではありませんが、ルールに適ったサウンドが必ず「良い音楽」になるとも限らないのです。


この先は、音楽を創る側とそれを聞く側の感性に委ねられます。


このように、音楽理論は、「音楽を楽しむ」、「予定調和を知る」、「予定調和から外れる」ための知識であり、ツールなのです。


そして、「音楽はフィーリングだ、理論なんか関係ない」と豪語する名高いプロミュージシャンも、この記事でご紹介した程度の基礎理論は、当然のように知っているものと思われます。


そのうえで彼ら彼女らは、自由に音楽を操り、人々に感動を与えているのです。


音楽をより自由なものとするために、さらに楽しむために、これからも音楽理論に触れ続けていただきたいと思っています。



※以降、本編では触れなかった、楽器奏者のためのアドリブ手法等の発展的内容、その他音楽に関する雑多な記事を、引き続き掲載する予定です。


※これまでの音楽理論記事は、テーマ欄より、順序に従ってお読みください。



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