7.テンション
7-1.テンションの意味と基本ルール
CM7というコードのコードトーンは「ド、ミ、ソ、シ」ですが、それ以外の音が付け加えられることがあります。
そのコードのコードトーンの他に、さらに付け加えられる音を「テンション」といい、テンションが用いられたコードを「テンション・コード」といいます。
テンションは、ストレートなロックや童謡などではあまり用いる機会がありませんが(テンションという名のとおり、テンション・コードはやや緊張感のある音なのです)、お洒落なポップス、AOR、フュージョン等のジャンルでは多用されます。
(また、ジャズの世界では、コードにテンションの表記が無くても、当たり前のようにテンションを含めて演奏することが多いです)
三和音、四和音よりも、さらに緊張感があり、浮遊的で都会的、時には刺激的なサウンドとなります。
テンションは、全7種類で、あるコードのルートから、
・長9度の音=9th
・短9度の音=♭9th
・増9度の音=♯9th
・完全11度の音=11th
・増11度の音=♯11th
・長13度の音=13th
・短13度の音=♭13th
と、それぞれ呼びます。
Cというコードで考えれば、9thの音は「レ」(ルートの「ド」から長9度の音、長2度と同じ音)、13thの音は「ラ」(ルートの「ド」から長13度の音、長6度と同じ音)ということになります。
表記はそれぞれ、C9、C13、となりますが、この表記の場合、「当然に7th音が含まれる」ことになりますのでご注意ください。
ですので、C9と書かれたコードの構成音は「ド、ミ、ソ、シ♭、レ」、C13と書かれたコードの構成音は「ド、ミ、ソ、シ♭、ラ」となります。
CM7というコードに9thの音が足されたコードは、CM7(9)のように表記され、また、7thを抜いた三和音に9thを足したい場合は、Cadd9のようにadd〇と表記します。
テンションとして使える音は、原則として次の2つの条件を満たす音です。
a.該当コードが存在する部分で使われるべきスケール内にある音
b.基本コードサウンドとの間であまりに強い不協和を生じない音
a.については、例えば同じAm7でも、Key=Cの時と、Key=Fの時とでは、使えるテンションが違ってくる、ということです(Key=CでのAm7では9thが使えますが、Key=FでのAm7では基本的に9thが使えません(Fメジャー・スケールに、Am7の9thである「シ」の音は含まれない))。
b.については、トライトーン(増4度(減5度)、5-2-b.参照)や短9度のような不協和音程が含まれると、もともとのコードの色合いが破壊されてしまうので、基本的には避けるべきと言えます(ただし、例外はあります)。
Key=CにおけるCM7で考察しましょう。
まず、使われる音階は当然、「ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ」のCメジャー・スケールです。
「ド、ミ、ソ、シ」がCM7のコードトーンなので、残った「レ、ファ、ラ」について検討します。
各コードトーン(ド、ミ、ソ、シ)と「レ、ファ、ラ」との音程関係を示します。
レについて、
ドから…長9度(OK)、ミから…短7度(OK)、ソから…完全5度(OK)、シから…短3度(OK)
ファについて、
ドから…完全11度(OK)、ミから…短9度(NG)、ソから…短7度(OK)、シから…減5度(NG)
ラについて、
ドから…長13度(OK)、ミから…完全11度(OK)、ソから…長9度(OK)、シから…短7度(OK)
以上を見ると、「レ」と「ラ」については、各コードトーンとの間に不協和音程は存在しませんが、「ファ」については、短9度と減5度という不協和音程が生じてしまっていることがわかります。
従って、Key=CにおけるCM7では、「レ」と「ラ」はテンションになり得る音ですが(それぞれ9thと13th)、「ファ」はこのルールに則して言えばテンションにはなれません。
この例の「ファ」のように、テンションとしてコードサウンドに加えることが出来ない音を「アヴォイド・ノート(Avoid Note)」といいます。
このような形でテンションとして使える音は決められていくのですが、例外も多々あります。
特にドミナント・セブンス・コードでは、もともとが不協和要素(トライトーン)を持っているコードであるため(5-2-b.参照)、コードトーンとの音程が増4度(減5度)、短9度になっていても、テンションとして使える音が出てきます。
ドミナント・セブンス・コードはさらに、音階に含まれない音さえテンションとして使われることがあります。
その他のコードタイプにおいても、習慣的とも言える例外が存在しますので、上記a.b.の原則は、あくまで「基本ルール」として頭に入れておいてください。
次回は、各テンションについて個別に解説していきます。