6-3.曲の終盤で、半音上または全音上のキーに転調する



曲の終盤で高揚感を出すために、ロックやポップスなどで多用されます。


カラオケ等で体感している方も多いでしょうから、馴染みやすいと思います。


以下の例をご覧ください(Key=C→D♭)


・Em7・Am7 → Em7・Am7 → Dm7 → Dm7/G・G7 → (N.C.) → D♭・Fm7/C → A♭m7/B・B♭7 →…


竹内まりやさんの「マンハッタン・キス」という曲のラストで、半音上のキーに転調する例です。


(N.C.)は、「ノン・コード」と読み、(ブレイク等で)コードが無い部分を意味します。


上記は、このブレイクをうまく使って、Key=Cのドミナント・セブンであるG7からいきなりKey=D♭のⅠに入っています(なお、転調後の進行は、ベース半音下降のクリシェとなっています(5-9-b.3))。


次の例も実際に存在する楽曲です(Key=G→A)。


・G・D/F♯ → Em・Dm7・G7 → C・C/D → A・E/G♯ → F♯m・C♯m7 →…


これは、Superflyの「愛をこめて花束を」の終盤でキーが全音上に転調する例です。


こちらも、転調前のキーのドミナント・セブンから唐突に全音上のキーに移行しています。


本来であれば、転調後の最初のコードに向かうドミナント・モーションやそのツー・ファイブ分割を用いた方が転調作法としてはベターなのかもしれませんが、特に最近のポップス・ロックにおいては、上の2例のように、唐突に(特に橋渡しのコードを挟むことなく)半音上あるいは全音上のキーに転調することが多いです。


その方が、聴き手にその転調効果をダイレクトに感じさせることが出来る、という理由からだと思われます。


6-4.突然に転調する



場面転換の効果としては、最もインパクトのある転調です。


一見すると大胆な、ある法則を用います。


それは、


トニック(Ⅰ)からはどこへでも行ける


ということです。


次の例を見ましょう(Key=C→A♭)。


・Dm7・G7 → CM7 → D♭M7・E♭7 → A♭M7・F7 →…


突然に3小節目からKey=A♭に転調しており、耳にはかなり刺激の強い転調ですが、このような転調が音楽的にNGかと言われれば、もちろんそうとは言い切れません。


トニックに終止すると、それまでのコード進行がひと段落するので、そこからの行き先は自由に設定しやすいのです。


最近では、聴く者をハッとさせるような鮮やかで大胆な転調が多く聴かれます。


トニックに終止すれば、その後はどこへでも行ける、というこの大胆な法則を、是非試してみて下さい。


もう1つ、大胆な転調アプローチをご紹介しましょう。


Ⅱm7-Ⅴ7やセカンダリー・ドミナントを活用する


次の例で考えてみましょう(Key=C→F)。


・C・Em7 → Dm7・G7 → Gm7・C7 → F →…


・C・Dm7 → G・A7 → Dm7・Am7 → B♭M7・C7 → F →…


どちらもKey=C→Fへの転調ですが、前者はKey=FのⅡm7-Ⅴ7を挟んだうえでの転調、後者はKey=CにおけるⅡm7へ向かうセカンダリー・ドミナントから、そのままKey=Fへなだれ込む転調です。


※後者の3小節目のDm7は、セカンダリー・ドミナントの向かう先であるKey=CのⅡm7であると同時に、Key=FのⅥm7でもあるため、両キーのピボット・コードと言えます


やや極端な表現かもしれませんが、セカンダリー・ドミナントや、転調後のキーの最初のコードに向かうⅡm7-Ⅴ7を活用すれば、どこへでも転調させることが出来ます。


特にジャズでは、Ⅱm7-Ⅴ7を頻繁に用い曲中で次々転調される例も多々あります。


肝心なのは、そのインパクトの強い転調が楽曲にとってプラスに働くかどうか(耳がOKサインを出すかどうか)ということに尽きます。


当然ながら、メロディーとの兼ね合いも重要です。



6-5.その他(平行調への転調)



平行調については、3-3-a.短調の構造で復習しておいて下さい。


平行調への転調は、構成される音階上の音が変わらないため、転調と言えるほどのものでは本来ないのですが、スタンダードジャズでは極めて多く見ることが出来るので、紹介しておきます。


以下の進行をご覧ください(Key=B♭→Gm)。


・Cm7 → F7 → B♭ → E♭ → Am7(♭5) → D7 → Gm → G7 →…


最も有名なジャズスタンダードナンバーと言っていい「枯葉」のテーマです。


5小節目からKey=B♭の平行調であるKey=Gmに移っていますが、B♭キーもGmキーも構成される音階上の音は同じであるため、殊更に転調したという印象は受けません。


例をもう1つ(Key=C→Am)。


・Am7 → Dm7 → G7 → C → F → Bm7(♭5) → E7 → Am・A7 →…


こちらも有名な「Fly Me to The Moon」です。


Key=Cから平行調たるKey=Amへの転調です。


このように、特にスタンダードジャズ系の楽曲では、あるメジャーキーからその平行調たるマイナーキーへの自然な移行が非常に多いです。



次回は、テンションについて説明いたします。



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