5-2-g.セカンダリー・ドミナント・セブン
Key=Cの曲の中で出てくる、ダイアトニック・コード以外のコード、例えば、A7やE7等のコードは、どのように考えたらよいのでしょう。
以下のコード進行を例に説明しましょう。
C → A7 → Dm7 → ・・・
Ⅴ7の役割は、ドミナント・モーションでコード進行の中にⅠに向かう強力な流れを生み出すことですが、その流れをⅠだけではなく、他のダイアトニック・コード(上記例ではDm7)に向かって作れば、そのダイアトニック・コードをⅠに見立ててドミナント・モーションが生まれ、よりスムーズな進行となります。
Ⅰ以外のダイアトニック・コードに向かうドミナント・セブン(Ⅰ7、Ⅱ7、Ⅲ7、Ⅵ7(上記例のA7)、Ⅶ7)のことを、セカンダリー・ドミナント・セブンス・コードといいます。
上記コード進行のA7 → Dm7の部分だけを見ると、Key=DmにおけるⅤ7→Ⅰm7なので、A7は、Key=Dmから借りてきたコードという意味で、借用和音とも呼ばれます。
・A7 → Dm7(Ⅵ7→Ⅱm7)
・B7 → Em7(Ⅶ7→Ⅲm7)
・C7 → FM7(Ⅰ7→ⅣM7)
・D7 → G7(Ⅱ7→Ⅴ7)
・E7 → Am7(Ⅲ7→Ⅵm7)
左側のドミナント・セブンス・コードが、それぞれのKey=Cのダイアトニック・コードに向かうセカンダリー・ドミナント・セブンス・コードです。
全て、2つめのコードをⅠと見立てて、それに向かうⅤ7という形になっています。
なお、Ⅶm7(♭5)にはセカンダリー・ドミナント・セブンは存在しません。
また、Ⅱ7は、もともとのドミナントであるⅤ7にあたるコードに向かうことから、ドミナントのドミナントという意味で、ドッペル・ドミナント(ダブル・ドミナント)と呼ばれることがあります。
Key=C以外でも、セカンダリー・ドミナントがしっかり把握できるようにしておきましょう。
Key=Fにおける例を以下に示します。
・D7 → Gm7(Ⅵ7→Ⅱm7)
・E7 → Am7(Ⅶ7→Ⅲm7)
・F7 → B♭M7(Ⅰ7→ⅣM7)
・G7 → C7(Ⅱ7→Ⅴ7)
・A7 → Dm7(Ⅲ7→Ⅵm7)
5-2-h.Ⅱm7→Ⅴ7(ツー・ファイブ)
ポピュラーミュージックのコード進行論において、最も重要といえる項目です。
Key=Cにおける、
Dm7 → G7 → CM7
という進行がⅡm7→Ⅴ7→ⅠM7(ツー・ファイブ・ワン)と呼ばれるもので、ルートがD→G→Cと5度下行(4度上行)と動く、非常に強力な終止感を持った進行です。
また、ドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割する、という考え方も非常に重要です。
全てのドミナント・セブンは、Ⅱm7→Ⅴ7に分割することが出来ます。
以下のごとくです(Key=C)。
G7 → CM7(Ⅴ7→ⅠM7)
を
Dm7・G7 → CM7(Ⅱm7・Ⅴ7→ⅠM7)
と、G7をDm7・G7に分割しています。
もちろん、g.において説明したセカンダリー・ドミナント・セブンも、Ⅱm7→Ⅴ7に分割出来ます。
A7 → Dm7(Ⅵ7→Ⅱm7)
を
Em7・A7 → Dm7(Ⅲm7・Ⅵ7→Ⅱm7)
上記例は、Key=Cにおいて、Dm7をⅠと見立てて、それに向かうⅡm7→Ⅴ7を形成しています。
ルートの動きを見るとわかりやすいでしょう。
以下は、ジャズスタンダードとして有名な「サテンドール」のコード進行です(Key=C)。
Dm7・G7 → Dm7・G7 → Em7・A7 → Em7・A7 →
Am7・D7 → A♭m7・D♭7 → CM7 ・・・
Ⅱm7→Ⅴ7が連続する流れです。
なお、2小節目から3小節目にかけて、
G7 → Em7
と進行していますが、これは、本来のドミナント・モーションであるG7 → CのトニックであるC(Ⅰ)を、同じトニックグループであるEm7(Ⅲm7)に置き換えたと考えることが出来ます(5-2-f.ダイアトニック・コードの機能分類参照)。
このように、機能の変わらない他のコードを替わりに使う場合、その替わりのコードを代理コードと呼びます。
(上記進行のD♭7はⅤ7(G7)の代理コードなのですが、これについては後述します)。
5-2-i.Ⅱm7→Ⅴ7を使ったリハーモニゼーション
リハーモニゼーションとは、コード進行がより変化を持ちスムーズになるように、コードを変更する(リハーモナイズ)ことです。
先述した、ドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割することも、代表的なリハーモニゼーションといえます。
例1.
B♭・D7 → Gm7・B♭7 → E♭
を
例2.
B♭・Am7・D7 → Gm7・Fm7・B♭7 → E♭
例1.のドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割すると、例2.のようになります。
Ⅱm7→Ⅴ7の響きをよく味わってください。
例3.
C → G7 → G7 → C → G7 → C → C → G7
を
例4.
CM7・Am7(※2) → Dm7(※1)・G7 → Dm7(※1)・G7 → Em7(※2)・A7(※3) →
Dm7(※1)・G7 → Em7(※2)・Am7(※2) → D7(※4) → Dm7(※1)・G7
※1.Ⅴ7をⅡm7→Ⅴ7に分割したもの
※2.Ⅰを、同じトニックの機能を持つⅢm7やⅥm7に変更したもの
※3.分割して出来た次のⅡm7に向かうセカンダリー・ドミナント・セブンス・コードのⅥ7
※4.ラストのG7(Ⅴ7)に向かうセカンダリー・ドミナント・セブンス・コードのⅡ7
このように、ドミナント・セブンのⅡm7→Ⅴ7への分割やセカンダリー・ドミナント・セブンス・コード等を複合的に組み合わせ、リハーモナイズすれば、コード進行は無限の可能性を持つと言っても過言ではありません。
5-2-j.分割するとⅡm7(♭5)→Ⅴ7になるコード
Key=Cにおいて、Ⅵ7、Ⅶ7、Ⅲ7(A7、B7、E7)はそれぞれ、Ⅱm7、Ⅲm7、Ⅵm7(Dm7、Em7、Am7)と、マイナーコードに進行します。
マイナーに進行するドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割する場合、Ⅱm7(♭5)→Ⅴ7にすることが多いです。
以下は、「我が心のジョージア」のコード進行です(Key=F)。
FM7 → Em7(♭5)・A7 → Dm7 ・・・
Em7(♭5)・A7 → Dm7の部分だけ、Key=Dmと考えた場合、Key=DmのⅡはⅡm7ではなくⅡm7(♭5)であるから、Em7(♭5)にした方がよりスムーズな流れが得られると考えられるため、ツー・ファイブをⅡm7(♭5)→Ⅴ7としているアレンジです。
しかし、マイナーコードに向かっていく場合であっても、以下のように意図的にⅡm7→Ⅴ7を使う場合も頻繁にあります。
FM7 → Em7・A7 → Dm7 ・・・
実際にコードを鳴らし比べて、その違いを味わってみてください。
ちなみに、最近では後者の方がポピュラーミュージックにおいては多く用いられているように思います(もちろん、メロディとの兼ね合いでどちらかしか選択できない場合もあり得ます)。
次回は、ドミナント・セブンの代理コード等について解説します。
![ペタしてね](https://stat.ameba.jp/blog/ucs/img/decoPeta/pc/decoPeta_16.gif)
Key=Cの曲の中で出てくる、ダイアトニック・コード以外のコード、例えば、A7やE7等のコードは、どのように考えたらよいのでしょう。
以下のコード進行を例に説明しましょう。
C → A7 → Dm7 → ・・・
Ⅴ7の役割は、ドミナント・モーションでコード進行の中にⅠに向かう強力な流れを生み出すことですが、その流れをⅠだけではなく、他のダイアトニック・コード(上記例ではDm7)に向かって作れば、そのダイアトニック・コードをⅠに見立ててドミナント・モーションが生まれ、よりスムーズな進行となります。
Ⅰ以外のダイアトニック・コードに向かうドミナント・セブン(Ⅰ7、Ⅱ7、Ⅲ7、Ⅵ7(上記例のA7)、Ⅶ7)のことを、セカンダリー・ドミナント・セブンス・コードといいます。
上記コード進行のA7 → Dm7の部分だけを見ると、Key=DmにおけるⅤ7→Ⅰm7なので、A7は、Key=Dmから借りてきたコードという意味で、借用和音とも呼ばれます。
・A7 → Dm7(Ⅵ7→Ⅱm7)
・B7 → Em7(Ⅶ7→Ⅲm7)
・C7 → FM7(Ⅰ7→ⅣM7)
・D7 → G7(Ⅱ7→Ⅴ7)
・E7 → Am7(Ⅲ7→Ⅵm7)
左側のドミナント・セブンス・コードが、それぞれのKey=Cのダイアトニック・コードに向かうセカンダリー・ドミナント・セブンス・コードです。
全て、2つめのコードをⅠと見立てて、それに向かうⅤ7という形になっています。
なお、Ⅶm7(♭5)にはセカンダリー・ドミナント・セブンは存在しません。
また、Ⅱ7は、もともとのドミナントであるⅤ7にあたるコードに向かうことから、ドミナントのドミナントという意味で、ドッペル・ドミナント(ダブル・ドミナント)と呼ばれることがあります。
Key=C以外でも、セカンダリー・ドミナントがしっかり把握できるようにしておきましょう。
Key=Fにおける例を以下に示します。
・D7 → Gm7(Ⅵ7→Ⅱm7)
・E7 → Am7(Ⅶ7→Ⅲm7)
・F7 → B♭M7(Ⅰ7→ⅣM7)
・G7 → C7(Ⅱ7→Ⅴ7)
・A7 → Dm7(Ⅲ7→Ⅵm7)
5-2-h.Ⅱm7→Ⅴ7(ツー・ファイブ)
ポピュラーミュージックのコード進行論において、最も重要といえる項目です。
Key=Cにおける、
Dm7 → G7 → CM7
という進行がⅡm7→Ⅴ7→ⅠM7(ツー・ファイブ・ワン)と呼ばれるもので、ルートがD→G→Cと5度下行(4度上行)と動く、非常に強力な終止感を持った進行です。
また、ドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割する、という考え方も非常に重要です。
全てのドミナント・セブンは、Ⅱm7→Ⅴ7に分割することが出来ます。
以下のごとくです(Key=C)。
G7 → CM7(Ⅴ7→ⅠM7)
を
Dm7・G7 → CM7(Ⅱm7・Ⅴ7→ⅠM7)
と、G7をDm7・G7に分割しています。
もちろん、g.において説明したセカンダリー・ドミナント・セブンも、Ⅱm7→Ⅴ7に分割出来ます。
A7 → Dm7(Ⅵ7→Ⅱm7)
を
Em7・A7 → Dm7(Ⅲm7・Ⅵ7→Ⅱm7)
上記例は、Key=Cにおいて、Dm7をⅠと見立てて、それに向かうⅡm7→Ⅴ7を形成しています。
ルートの動きを見るとわかりやすいでしょう。
以下は、ジャズスタンダードとして有名な「サテンドール」のコード進行です(Key=C)。
Dm7・G7 → Dm7・G7 → Em7・A7 → Em7・A7 →
Am7・D7 → A♭m7・D♭7 → CM7 ・・・
Ⅱm7→Ⅴ7が連続する流れです。
なお、2小節目から3小節目にかけて、
G7 → Em7
と進行していますが、これは、本来のドミナント・モーションであるG7 → CのトニックであるC(Ⅰ)を、同じトニックグループであるEm7(Ⅲm7)に置き換えたと考えることが出来ます(5-2-f.ダイアトニック・コードの機能分類参照)。
このように、機能の変わらない他のコードを替わりに使う場合、その替わりのコードを代理コードと呼びます。
(上記進行のD♭7はⅤ7(G7)の代理コードなのですが、これについては後述します)。
5-2-i.Ⅱm7→Ⅴ7を使ったリハーモニゼーション
リハーモニゼーションとは、コード進行がより変化を持ちスムーズになるように、コードを変更する(リハーモナイズ)ことです。
先述した、ドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割することも、代表的なリハーモニゼーションといえます。
例1.
B♭・D7 → Gm7・B♭7 → E♭
を
例2.
B♭・Am7・D7 → Gm7・Fm7・B♭7 → E♭
例1.のドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割すると、例2.のようになります。
Ⅱm7→Ⅴ7の響きをよく味わってください。
例3.
C → G7 → G7 → C → G7 → C → C → G7
を
例4.
CM7・Am7(※2) → Dm7(※1)・G7 → Dm7(※1)・G7 → Em7(※2)・A7(※3) →
Dm7(※1)・G7 → Em7(※2)・Am7(※2) → D7(※4) → Dm7(※1)・G7
※1.Ⅴ7をⅡm7→Ⅴ7に分割したもの
※2.Ⅰを、同じトニックの機能を持つⅢm7やⅥm7に変更したもの
※3.分割して出来た次のⅡm7に向かうセカンダリー・ドミナント・セブンス・コードのⅥ7
※4.ラストのG7(Ⅴ7)に向かうセカンダリー・ドミナント・セブンス・コードのⅡ7
このように、ドミナント・セブンのⅡm7→Ⅴ7への分割やセカンダリー・ドミナント・セブンス・コード等を複合的に組み合わせ、リハーモナイズすれば、コード進行は無限の可能性を持つと言っても過言ではありません。
5-2-j.分割するとⅡm7(♭5)→Ⅴ7になるコード
Key=Cにおいて、Ⅵ7、Ⅶ7、Ⅲ7(A7、B7、E7)はそれぞれ、Ⅱm7、Ⅲm7、Ⅵm7(Dm7、Em7、Am7)と、マイナーコードに進行します。
マイナーに進行するドミナント・セブンをⅡm7→Ⅴ7に分割する場合、Ⅱm7(♭5)→Ⅴ7にすることが多いです。
以下は、「我が心のジョージア」のコード進行です(Key=F)。
FM7 → Em7(♭5)・A7 → Dm7 ・・・
Em7(♭5)・A7 → Dm7の部分だけ、Key=Dmと考えた場合、Key=DmのⅡはⅡm7ではなくⅡm7(♭5)であるから、Em7(♭5)にした方がよりスムーズな流れが得られると考えられるため、ツー・ファイブをⅡm7(♭5)→Ⅴ7としているアレンジです。
しかし、マイナーコードに向かっていく場合であっても、以下のように意図的にⅡm7→Ⅴ7を使う場合も頻繁にあります。
FM7 → Em7・A7 → Dm7 ・・・
実際にコードを鳴らし比べて、その違いを味わってみてください。
ちなみに、最近では後者の方がポピュラーミュージックにおいては多く用いられているように思います(もちろん、メロディとの兼ね合いでどちらかしか選択できない場合もあり得ます)。
次回は、ドミナント・セブンの代理コード等について解説します。
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