4-4.5度音が変化するコード(ディミニッシュコード除く)



これまで説明してきたトライアド、セブンスコードは、いずれも5度音は完全5度でしたが、この5度音が半音下がる、あるいは半音上がることによって生成されるコードがあります。


つまり、「ルートからの5度音程が減音程となるコード」、「ルートからの5度音程が増音程となるコード」があります。

前者は、C(♭5)、Cm7(-5)などと、トライアド、セブンスコードに「(♭5)」や「(-5)」の表記を付します(それぞれ、「フラットファイブ」、「マイナスファイブ」と読み、同義です)。


C(♭5)は「ド・ミ・ソ♭」、Cm7(-5)は「ド・ミ♭・ソ♭・シ♭」となることは、ここまでの記述の理解から容易に解答可能かと思われます。


このコードの中では特に、「マイナーセブンフラットファイブコード」が重要となりますが、そのあたりについては後述いたします。

後者は、C(♯5)、Cm7(+5)、C7augなどと、トライアド、セブンスコードに「(♯5)」や「(+5)」、「aug」の表記を付します(前二者を「シャープファイブ」と読み、「aug」は「オーギュメント」と読みます)。


C(♯5)は「ド・ミ・ソ♯」、Cm7(+5)は「ド・ミ♭・ソ♯」、C7augは「ド・ミ・ソ♯・シ♭」となります。

本書においては以下、それぞれ「♭5」、「aug」を用います。


4-5.ディミニッシュコード


4-5-a.構造


ルート・短三度・減5度・減7度」の各音から成るコードを、ディミニッシュコードと呼び、「Cdim」のように、「dim」の表記を付します。


「dim」の表記で、3度音程が短音程となり、5度音程と7度音程が減音程となることを意味しますので、「Cm7dim」のような表記をしないことに注意してください。


また、「Cdim」と表記する場合と、「Cdim7」と表記する場合がありますが、通常、「dim7」と表記されていなくても、減7度音程が含まれるものと解釈します(以下、「dim」は、減7度音も含む表記として扱います)。

また、気づいた方もいらっしゃるかもしれませんが、このコードは「マイナーセブンフラットファイブコード」と構成音が似通っています。


「マイナーセブンフラットファイブコード」は、ルート・短3度・減5度・短7度から成るコードですが、「ディミニッシュコード」は、ルート・短3度・減5度・減7度から成るコードですので、異なるのは7度音程のみということになります。


「Cdim」は、「ド・ミ♭・ソ♭・ラ」となります。


ルートからの減7度音程は、「シ♭♭」シのダブルフラット、すなわち「ラ」となります。


これに対して「Cm7(♭5)」は、7度音程が短7度ですから「ド・ミ♭・ソ♭・シ♭」となります。


両者はいわば兄弟関係のようなコードで、Cm7(♭5)のような「マイナーセブンフラットファイブコード」のことを「ハーフディミニッシュ」と呼ぶことがあります(特にジャズの世界)。


4-5-b.特徴


ディミニッシュコードが特徴的なのは、構成音同士の音間隔にあります。


ルート・短3度・減5度・減7度という音構成、Cdimで言えば「ド・ミ♭・ソ♭・ラ」の音構成の特徴は、全ての音間隔が短3度である」ということです。


ルート(ド)と3度音(ミ♭)の音程は短3度、3度音(ミ♭)と5度音(ソ♭)の音程も短3度、さらに5度音(ソ♭)と7度音(ラ。減7度音です)の音程も短三度。


つまり全ての構成音が短3度という等間隔で並んでいます。


例えばトライアドのコードであれば、メジャーであれマイナーであれ、構成音の音間隔は長3度と短3度、あるいはその逆で短3度と長3度、という組み合わせで、このバランスによりコードの響きとしての均衡が保たれるのですが(ルートと完全5度が固定される中で、3度音程如何によってコード感に影響を与える等の合理的調和性)、ディミニッシュコードのように全てが等間隔で並べられた音で構成されたコードは、いわば軸となる音がなく、非常に不安定な、あるいは不安を煽る響きとなります。


4-5-c.ディミニッシュコードは3種類しかない。


1.Cdim=E♭dim(D♯dim)=G♭dim(F♯dim)=Adim

2.Ddim=Fdim=A♭dim(G♯dim)=Bdim

3.Edim=Gdim=B♭dim(A♯dim)=C♯dim(D♭dim)


1.2.3に列挙した各ディミニッシュコードは、それぞれルート音が違うだけで、その構成音は全て同じです。


ディミニッシュコードは世の中に3種類しか存在しません。ルート音が異なるだけで構成音が同じディミニッシュコードが3種類あるだけなのです。


これは、b.で解説した、全ての音間隔が短3度という等間隔で並んでいるという特徴に由来します。


例えば、Cdimの構成音は「ド・ミ♭・ソ♭・ラ」ですが、全ての音が短3度という等間隔で並んでいるわけですから、ルートをミ♭に変えて同じ構成音で音を重ねれば、「ミ♭・ソ♭・ラ・ド」という、ルート音が異なるだけでCdimの構成音と全く同じE♭dimというコードが出来上がるわけです。


4-6.sus4コード、シックスコード


4-6-a.sus4コード


メジャートライアドコードやドミナントセブンスコードの長3度音が一時的に完全4度音程に吊り上げられたコードです。


Sus4は「サス4」と読みます。


Susとは、吊り上げるという意味のSuspendの略表記で、3度音が4度に吊り上げられたという状態を表現するものです。


Csus4であれば、Cの長3度音である「ミ」が4度に吊り上がり、「ド・ファ・ソ」というコードとなります。


このコードには典型的な用い方がありますが、コード進行の章で後述します。


4-6-b.シックスコード


メジャートライアドコード、マイナートライアドコードに、ルートから長6度にあたる音を加えたコードです。


ですので、C6(シーシックスと読みます)は「ド・ミ・ソ・ラ」、Cm6(シーマイナーシックス)は「ド・ミ♭・ソ・ラ」となります。


メジャートライアドに長6度音が加わったコードを「メジャーシックスコード」、マイナートライアドの場合は「マイナーシックスコード」とそれぞれ呼びますが、シックスコードにおいて短6度音を加えることはありません(その音が加わった場合は、♭13コードという、別のテンションコードとなります。後述)。


シックスコードは、牧歌的でのどかな響きであると一般的には言われます。


くどいようですが、あくまで一般的なイメージです。


また、メジャーシックスコードは、ジャズにおいては頻繁に用いられ、例えばKey=Cの曲で譜面上「C」と表記してあれば(この場合のCをトニックコードと呼びます)、特に「6」と書かれていなくても、当たり前のようにC6で演奏されます。


次回から、コード進行論の解説に入ります。


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