本稿は、小説やエッセイを読むような感覚で文章を通読する作業のみでポピュラー音楽の作編曲作法等を習得することを目指した音楽理論入門記事です。

このような手法を用いた理由を極論すれば、「作曲は譜面がわからなくてもできる」「音楽理論とはヒトの耳が感知する一定法則の公式化にすぎず、音を聴きとりうる誰しもが感覚的に身につけているものである」ということを証明するのに適切な方法だと考えたからです。

ただし、本稿はあくまで音楽の知識を特別にお持ちでない方が通読することにより必要最低レベルの作曲ノウハウを身につけることを目的としていますので、音楽理論が育まれた背景やクラシックにおける理論の引用などは割愛いたします。

「ハナウタ」レベルの作曲を基に、後付けで一定の法則を提示し、より「音楽的な」作品へと発展させるために有効な方法論・音楽理論をお伝えします。

本稿の目指す到達地点は

・いいメロディを創り出すコツを知る
・調・音階・和声(コード)の仕組みを知る
・メロディに和声(コード)を当てはめる
・和声(コード)を並べる一定の作法(コード進行論)を学ぶ
・あらかじめ用意されたコード進行にメロディを当てはめる

といった各課題のクリアとなります。

従って、コードアレンジの知識までは提供いたしますが、リズムの概念そのものやバンド等アンサンブルアレンジの手法、あるいは楽器奏者がアドリブを取るために必要な理論(アヴェイラブルノートスケール等)は扱いません。

また、楽譜を用いないで音楽理論を解説することにはもちろん限界がありますので、本稿は市販されている入門的な音楽理論書・楽典解説書を読むさらに前段階において、音楽を学ぶということへの抵抗感を無くすという観点から書かれています。

詳細は他書に譲る部分が多々ありますので、本稿読了後は是非「一般的な」解説書に歩を進めていただきたいと考えています。

タイトル通り本稿を「読むだけ」で、日頃耳にしている音楽がどのような仕組みになっているのかを味わっていただき、更にはそのことによって皆さんのクリエイティブな活動意欲を刺激することができればと考えます。