If you judge children, you have no time to love them.
「子どもが言うことを聞かない」と言う話をよく聞きます。自我がちゃんと育っている証拠ですね、素晴らしいことです。私(園長)は以前から、『人は指示命令では動かない』と言う命題を抱えていました。言うことを聞かない子を見ていると、つくづくこの命題を実感します。
お昼寝が終わってカーテンを開けると、子どもたちは夢の世界から目覚めます。ゴロゴロと、お昼寝の余韻を楽しんでる子に「Aくんおはよう!」と声を掛けます。もうすぐ3歳のAくんは、私の掛け声に応じてこちらを見ます。立て続けに「あ、Aくんがパジャマを脱いでる」と声を掛けると、彼はパジャマを脱ぎ始めます。Aくんに限らず、多くの子が同じように振舞い、技術的にできない子もパジャマを引っ張ったりして、脱ごうと努力を始めます。
私は「脱ぎなさい」とは一言も言いません。ただ目を見て、して欲しいことを“あたかも既にしているかのように”現在進行形の言葉を掛けるだけなのです。不思議な働きかけですが、よく効きますよ。
子どもは、親の言う通りに育ちます。言う通りとは、言うことを聞くの意味ではなく“評価通り”と言う意味です。子どもは、親の評価に応えようと努力するのです。園長先生の「脱いでる」と言う評価に応えようとするわけです。この傾向を、心理学で【ピグマリオン効果】と言います。
もし、「うちの子は、言うことをきかなっくて困ってます」と、子どもが聞いているところで言ったなら、子どもは、益々言うことを聞かなくなるでしょう。子どもの前で否定的なことを言うと、必ずその通りに育ちます。子どもは誠実ですから。
親は子どもを躾けるとき、「パジャマを脱ぎなさい」とか「靴を履きなさい」とか「片付けなさい」「○○しなさい」「△△してはいけません」などと、数えきれないほどの命令をします。命令がいけないと言うつもりはありませんが、命令は子どもの自主性を邪魔することになり、決してやる気を育てることにはならないのです。
命令は、簡単に言うと『今できていないのだからやりなさい』と言うメッセージです。つまり、『今できていないあなたはダメ』なのです。そう言われ続けたら、誰でもへこむでしょう。決してやる気は育ちません。
子どもはみんな、心に“やる気”の火種を持っています。そこに火をつけるのは親ではなく子ども自身です。もし、親が無理に火を付けようとするなら空炊きや酸欠、さらには爆発となり、心は壊れてしまうかも知れません。
「子どもが言うことを聞かない」ことは素晴らしいことです。子どもは奴隷ではありませんから。