If we are expected, We tend to produce a result.
子どもが何かを成し遂げたとき、「できたねえ、すごいねえ」なんて褒めることはあると思います。しかし、幼児前期(1歳~2歳児)は、成し遂げる事柄はかなり限りがあるのも事実です。失敗が圧倒的に多い時期だからです。成し遂げるまで待っていたら、大人は褒める機会を失うことになることでしょう。
私(園長)は、子どもが『それ』をやる前から「○○ちゃん、やってる(やった)ね、すごいねえ」などと、現在進行形、時には過去形で、あたかも既に成し遂げているかのように声を掛けることがあります。不思議な声掛け(働きかけ)ですが、多くの子は、期待通りに『それ』をやり始めます。
2歳のTくんは、いつもニコニコしている穏やかな男の子。汚れるのが嫌で泥遊びもしたがらない子です。
ある日、Tくんのママが「うちの子は走るのが遅いんですよ、泥も触れなっくて・・・、もう少し活発になってくれたらねえ・・・」と、ため息交じりで私に打ち明けたことがありました。
「そうですか」と、ただ聞いていた私は、しばらくそのことが気に掛かっていました。以前は、部屋中を走り回っていたTくん。そういえばこの頃、走る姿を見ていません。そして私は、ある試みを始めました。
彼が少しでも急ぐ姿を見かけると「Tくん早いね」と、声を掛けたのです。その声に一瞬立ち止まり、嬉しそうに再び走り始めました。そして彼が走る度に、「すごいねえ、早いねえ」と、声を掛け続けました。実際に早いかどうかは別にして、Tくんの走る場面は確実に増え、彼の表情は自信と誇りに満ちて行きました。
後日、そのことについてTくんのママは「「かけっこが遅くても、泥が触れなくても、笑顔でいてくれるだけでいいと思いました」と、私に言いました。
子どもは、親の言う通りに育ちます。『言う通り』とは、言うことを聞くという意味ではなく、評価通りと言う意味です。「この子は○○ができる、と信じてそのように接すれば、子どもは○○を達成し、「できるはずない」と決めつけていれば、その通りになる傾向があるのです。これを【ピグマリオン効果】と言います。
子どもは、親がどう自分を評価しているかを感じ取っています。そして誠実に、そう振舞おうとします。達成するかどうかは別にして、彼らは親の評価=可能性に真っ直ぐなのです。その健気さを、私は美しいと思います。