村上隆著『芸術起業論』 | ハマログ

村上隆著『芸術起業論』

本書では、「欧米の芸術の世界のルールをふまえて、欧米美術史の文脈から作品をプレゼンテーションしていくことが必要である」というメッセージをコアにして日本の美術界に対して愛憎まみえた生の言葉が投げかけられています。

芸術起業論/村上 隆

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読み始めから早速心に刺さる言葉が並んでいます。

 なぜこれまで日本のアーティストは、片手で数えるほどしか世界で通用しなかったのでしょうか?
 単純です。
 「欧米の芸術の世界のルールをふまえていなかったから」なのです。
 欧米の芸術の世界は、確固たる不文律が存在しており、ガチガチに整備されております。
 そのルールに沿わない作品は「評価の対象外」となり、芸術とは受け止められません。
 ぼくは欧米のアーティストと互角の勝負をするために、欧米のアートの構造をしつこく分析しました。(p.24)

これは、芸術の世界に留まる話ではないと思います。政治や経済、ビジネスやスポーツに至るまで、日本人に共通する行動規範としてこれらの分野にも当てはまるのではないかと。

日本は基本的にボトムアップを重んじ、トップダウンでコンセプトや戦略を打ち立てて下に落としていくことを苦手としますので、これだけの経済力を持ちながらも国際政治・経済の舞台でも新たなパラダイムやスキームを構築することにことごとく失敗してきました。

「失われた10年」という言葉がよく使われていますが、この現状を打開するに必要なのは本書で述べられている「世界基準の戦略」を構築するというマインドが日本人には必要になのではないでしょうか?

私自身は芸術家では無いので、本書で提示されているメッセージを経済やビジネスの分野に当てはめて読み進めましたが、そういった意味では本書は、世界で戦う人の心得、世界基準の新たな価値を生み出すための日本への提言として受け取ることができるのではないかと思います。

最後にもう一文、本書から抜粋です。

 「世界で唯一の自分を発見し、その核心を歴史と相対化させつつ、発表すること」(p.140)

広がる世界と歴史の広大な視野から、自分自身のアイデンティティのミクロの片隅まで向かい合って極限まで考え尽くそうとしているその姿勢、本当にすごいと思います。