No.45 続法務省旧本館:制作2002年7月+2022 年11月、銅板12㎝×18㎝

 

   本ブログNo.44で紹介したように、ドイツ人建築家エンデ&ベックマン設計の法務省旧本館(1895年竣工)は、昭和20(1945)年の東京大空襲で焼失し、昭和23(1948)年から同25(1950)年に復旧工事が行われた。

   この復旧工事では、屋根の葺き材を天然スレートから和瓦とし(それに伴い屋根勾配が緩やかになる)、建物の3面にあったロッジア(吹放しの柱廊のこと)のうち、西側正面以外の列柱を取り除く等の大きな改変がなされた。

   その約40年後の平成3(1991)年から同7(1995)年に実施された改修工事により、法務省旧本館は創建時の姿に復原された。現在、ここには法務総合研究所本所、国立国会図書館支部法務図書館等が入り、3階の一部を、法務史料ならびに建築史料の展示室として公開している。このうち、法務史料展示室はかつての大臣官舎の食堂であり、外観同様に往時の姿を取り戻した。

   同改修工事において、筆者は、近代建築の保存活用の分野で多大な業績を上げられていた村松貞次郎先生(東京大学名誉教授、故人)とともに設計監修を行った。村松先生は大所高所から意見を述べられ、筆者はエンデ&ベックマン関連資料を提供した。

   創建時の姿に復するために、建物の屋根形状、天然スレートの葺き方、新設する煉瓦と銅板の色、復原室(法務史料展示室)の内装など多岐にわたって議論を交わした。同工事は、保存ならびに復原の意味を根源的に考える上で大変貴重な学びの場となり、そこから得られた知見をもとに、当初の小屋組、床構法、煉瓦の耐震技術等の解明のためにドイツと日本の技法書を紐解いて、建築史上における法務省旧本館の位置づけを行った。ここでの経験は、その後、様々な歴史的建築の復原(復元)考察を進めていく上での基盤となった。

   原版(ブログNo.44)への20年後の加筆は、雲となる。当時の綿菓子のような雲に流れを与え、かつ「おぼろ月夜」とした。