こんにちは公認会計士の内野恵美です。
さて「利益シリーズ」についてはもう終わらせるつもりでしたが、やはり少しだけ補足をしたいと思います。
よく「利潤の追求」等で言われる「利潤」という言葉ですが、これは基本的には経済学の用語と考えてよいでしょう。
それでは「経済上の利潤」と「会計上の利益」の違いはどこにあるかというのが今回のテーマです。ごく簡単に説明したいと思います。
経済学でいう利潤は、企業が生産物の販売によって受け取る金額(総収入)から企業が生産に要する投入物の市場価格を差し引いたものとされます。
利潤(profit)=総収入(total revenue)-総費用(total cost)
経済上の利潤は、英語では会計上の利益と同様にprofitと呼ばれますが、総費用の定義が会計とは異なるため、算出される利潤は会計上の利益とは一致しません。
経済学における費用は、「あるものを得るために放棄したものの価値」、すなわち機会費用を含んでいるため、金銭の支出を伴う費用(明示的費用 explicit costs)に加え、金銭の支出を伴わない費用(潜在的費用 implicit costs)を含みます。
例えば、ある事業に資金を投資した場合、投資せずに資金を預金として保有した場合に得られた預金金利収入は潜在的費用にあたります。
これに対して、会計上の利益計算における費用の概念は、いずれも金銭の支出を伴う明示的費用にあたり、経済学でいう潜在的費用を含めない概念です。
したがって経済上の利潤は、会計上の利益とは異なる概念であり、その利潤は会計上の利益よりも小さくなります。
以上、これらはN・グレゴリー・マンキュー「マンキュー経済学Ⅰ ミクロ編」第2版 (東洋経済新報社, 2005年、pp. 358-362)を参考にしたものですが、同書の下記のイメージ図も合わせてご覧ください(クリックして拡大してください)。
ここまでお読みくださってありがとうございます。
このように「利益」に関して、似たような用語は、数多くあり、いろいろな用いられ方をします。ときには本来の意味で用いられないこともあるでしょう。
これだけでなく、会計や経営に関連する多くの用語をめぐっても同じようなことが起こっていると感じています。
コミュニケーションをとるときは、相手が何について話しているのか確認することが必要であり、もちろん自分が何について話しているかも明確にする必要があると肝に銘じています。
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