中山
「中島、今日は残って郊外学習のしおりのホチキス止め、お願いできるか?」
先生の問いかけに学級委員の中島は愛想よく頷く。
「はい、もちろんです。」
「いつも悪いな。終わったら職員室の先生の机に置いてそのまま帰っていいから。」
「分かりました。」
中島に仕事を押し付けた教師はそそくさと教室を退散していく。
それを見送ると彼はイスに座って作業を始めた。
彼は、真面目な秀才で、そして人当たりも良い。学級委員になるということは、クラスの雑務を引き受けるということであって、文句を言わずそれをやり通すという意味では真面目で穏和な性格の中島は適任だった。
紙を折り、重ねて、ホチキスで止める。それをクラスの人数分、40部作らなければならない。普通は投げ出してしまいそうな、その単純作業を彼は黙々と続けていた。
紙の擦れる音と、ホチキスわ止める音だけが、放課後の教室に響いていた。
「あれ、いいんちょーじゃん。」
突然教室の扉が開き、男子生徒が顔を出した。耳にはピアス、ネクタイはだらしなく緩められ、いかにも不良っぽい雰囲気を漂わせている。
「山田くん?どうかしたんですか?」
「ケータイ忘れちゃってさ。」
彼はステッカーや落書きだらけの自分の机を漁り、ケータイを取り出した。
山田はケータイをポケットに収めると帰らず、中島の前の席に向かい合って座った。
「帰らないんですか?」
「いいんちょー、それ楽しい?」
中島の問いかけには答えず、山田は中島の顔を覗き込む。必然的に上目遣いになって、近くで見る山田の顔はとても綺麗だと委員長は思った。
山田は中性的はとても端正な顔立ちをしていた。学校指定ではない黒いパーカーのフードから覗く明るい茶色の髪がその顔に少し幼い印象を与えた。
「楽しいわけでは…。」
「じゃあなんでやるの?」
「自分は学級委員長なので。」
「ふーん。」
山田は自分も手にホチキスを持ち、しおりの作成を手伝い始めた。そしてまた問いかける。
「いいんちょーは、どうしていいんちょーになったの?」
「周りがやれっていうから流れというか…。」
「いいんちょーはやりたかったの?」
「そういうわけでは…。」
「ふーん。俺にはわかんないなー。俺は、興味あること、好きなこと、やりたいと思うことしかやんないから。」
中島はそこでふと手を止める。そして山田の方を見た。
「山田くんは…。」
「何?」
「やりたいことなんですか、そのホチキス止め。」
中島は山田の手元にあるホチキスに視線を落とした。
そこでしばらく間が空き、山田は委員長に可愛らしい笑顔を向けた。
「やりたいことだよ。いいんちょーがやってることだから。」
その笑顔と想像もしていなかった言葉に、中島は山田を見つめたまま固まってしまう。
「俺、いいんちょーに結構興味あるんだよね。」
さっきよりもいっそう可愛らしい笑みを中島にお見舞いして、
「まっでも、今日は飽きたから帰るね。」
山田は教室をを出ていってしまった。
また一人残された教室で、真面目な学級委員長は、初めて感じる異常な胸の高鳴りの正体に気づけずにいた。
end
これは続編もかけそうですね。とにかく山田くんのキャラ設定は可愛いものを目指したい。そして、いいんちょー呼び、これが最大の萌えだと思っております(笑)
