去る1月24日に初めての県レベルでの「創作脚本講習会」が行われた。講師は籔、福田、五ノ井という兵庫の創作脚本顧問をはじめ、生徒創作で今まさに話題の作家生徒を召喚するという画期的企画。ゲスト含め約70名が御影高等学校清明会館に集まった。その中で異色の講師として登場したのが県立御影高等学校、久保心菜さんであった。
彼女は近畿ブロック代表の生徒講評委員として、2025年夏に開催された「かがわ総文2025」に参加した生徒である。演題は「私が思うおもしろい台本、演劇とは~全国生徒講評委員の体験を踏まえて」というもの。こんなざっくりした演題で何を聞かせてもらえるだろうという疑問を一瞬で打ち砕く圧巻プレゼンに、当日参加した全員が舌を巻く結果となった。
聞くところによると彼女は入学当初バレー部マネージャーであったが、演劇部顧問の熱心な?スカウトにより演劇部に入部し生徒講評へのエントリーを決意。県大会での熾烈な予選を潜り抜け近畿代表の椅子を手に入れた。彼女が選ばれた理由は的確な劇評以上に、他の講評委員の意見を受け止めたうえで、自分の意見も表現できるバランス感覚にあった。
全国大会では充実した講評活動を体験したわけだが、一番の出会いは講評を担当した最優秀賞受賞作品、長野県松本美須々ヶ丘高等学校の「愛を語らない」との出会いであったのではないか。彼女はその経験から面白いお芝居のキーワードとしてリアルかどうかだと気付いたようだ。彼女は言う。リアルとは現実的という意味ではなく、“自分の”過去の経験や感情に通じる部分があるということだと。だから共感が生まれ「え、ばりおもろいやん…」につながると。
彼女は作品がリアルかどうかを判断するキーワードとして「そうはならんやろ」と具現化した。不自然さ・都合の良さに対する観客からのツッコミが生まれた瞬間、観客は客席で「そうはならんやろ!」と突っ込むのだと。
それでは彼女のプレゼンを振り返ってみよう
- 台詞【台詞<行為】
長々と思いや境遇をセリフで説明するより、お芝居という手法を取る以上、シーンとして描く人物像が「そうはならんやろ」を回避する。 - 状況【リサーチ→詳細】
記憶喪失や殺人事件など日常経験しない出来事は詳しく描くことは難しい。5W1H、時代背景など丁寧に描くことで「そうはならんやろ」を回避せよ。 - キャラクター【過去、今、未来=人生】
都合よく場面によって人となりを変える登場人物には一貫した説得力は生まれえない。感情の起伏、流れ、問題、出来事に対する思いや行動を一貫させることで「そうはならんやろ」を回避せよ。 - 展開・結末【逆算】
打ち切り漫画のように結末を急ぐ物語は破綻している。シーンは切り取りられた一部の場面であるが現実には必ず前後が存在する。それぞれのキャラクターの思いを途切れることなく描くことでラストに行き着く過程を丁寧にし、「そうはならんやろ」を回避せよ。
バレー部のマネージャーとしてスタートした彼女であるが、まとめに際しこう伝えてくれた。「お芝居は奥が深くて面白い。お芝居と出会えて本当に良かったです」と。高校3年生である彼女は進路を決めたのち、後輩部員たちと母校の小品発表会に参加した。上演された3作品でそれぞれ、作・演出、照明オペレーター、役者として。僕は少し緊張し上気したその頬に「演劇と出会えてよかった」のリアルを見せてもらった気がした。
久保さんが生徒講評委員として担当した劇評はこちら。ご一読ください。
長野県松本美須々ヶ丘高等学校 「愛を語らない」



