今回とりあげるキーワード・言葉は「サブスクリプション」型ビジネス・サービス

 

                          (出典:フィードフォース)

 

●「サブスクリプション型」ビジネス・サービスとは?

 

「サブスクリプション型」ビジネス・サービスとは、継続課金型のビジネスモデルを言う。利用期間に対して支払いをする形式で、「月額制」や「年額制」などの料金設定モデルがある。企業としては安定した収益を見込むことが期待でき、ソフトウェアや音楽、動画などデジタル系のサービスでは現在当たり前となりつつある。

 

さらに現在では、自動車、洋服、コスメ、シェーバーなど「非デジタル」なプロダクト(製品)にもこのサブスクリプション型モデルが取り入れられるようになり、人々の購買行動に大きな転換をもたらそうとしている。

 

●背景にあるものは?

 

これまで慣れ親しんできた大量生産型モデルが、デジタルトランスフォーメーションの波を受けて、大きく変わろうとしている。これは消費者視点で見れば、モノを“所有”するのではなく、必要に応じて“利用”する消費スタイルへの転換である。

 

ものの所有から利用へ、この消費の大きな流れの変化がサブスクリプション型のビジネスモデル台頭の背景にあると言える。これまでは、価値の高い機能を売り手(ベンダー)が考えて製品に実装してきたが、製品を作って売るビジネスモデルでは、もはや企業の成長は頭打ちとなっている。

 

ユーザーにとっての本当の価値がこれまでとは変化してきている。そんな中、サブスクリプション型のビジネス・サービスが、既存市場の常識を覆し顧客との新たな関係性を築き始めている。今や、すべての業界でフロー型からストック型へのビジネス変革が起こりつつある。

 

                         (出典:電通)

 

●サブスクリプション型モデルに移行(アドビの例)

 

2012年夏から、ソフトウェア大手のアドビシステムズはソフトウェアの販売方式をプロダクト販売型からサブスクリプション型(月々一定の金額を支払えば利用できる方式)へと変更した。ウェブ制作や映像制作のプロに利用されることが多い同社がこの決断をしたことは、業界の誰もが驚く改革であった。

 

その結果として、従来獲得することが難しかった新規顧客の増加、そして全体的な収益化にも貢献し、業績向上に大きく寄与することとなった。売上が大きく伸びただけではなく、その売上の約4分の3(74%)を継続課金が占めるまでにいたり、大成功を収めている。

 

●その他の事例

 

①「Office」シリーズの製作販売会社でもみなさんお馴染みのMicrosoftの場合は、Adobeと違って箱入りパッケージとサブスクリプション型クラウド版ソフトウェアの両軸であるという点。

 

Amazonもサブスクリプション型サービスを充実させている。「Amazonプライム」サービスは送料無料やお急ぎ便などの配達だけでなく、音楽聴き放題サービスや映画やテレビ番組見放題など様々な特典があり、今後もさらにサービス内容拡充していくと予想される。

 

株式会社ドワンゴが提供する「niconico動画」のプレミアム会員がサブスクリプションモデルにあたる。ただし、「niconico動画」は無料でもサービスを利用でき、より充実した機能を使うために課金する仕組みとなっている。

 

無料でサービスを利用し、より良い機能をつけるための課金制度は主流のサブスクリプションモデルの流れである。

 

●6つのサービスモデル

 

アメリカでは下記の6つのサブスクリプションサービスがある。

 

1. Dollar Shave Club型 消耗品お届けサービス

2. Birchbox型 ディスカバリーお届けサービス

3. Netflix型 レンタルし放題サービス

4. Amazon Prime型 送料だけ無料サービス

5. MealPal型 回数券サービス

6. Costco型 会員制サービス

 

●3つのチェックリスト

 

自社の製品・サービスがサブスクプリプションモデルに適しているかどうかを判断するには、下記の3点をまずチェックしてみる必要がある。

 

①サービスに持続性はあるのか?

サブスクリプションモデルは、「サービスを継続して使い続けるユーザーがいる」というのが前提となっている。そのサービスは何度も利用されるものである必要があるということである。が、一見モデルに適さないものもサブスクプリプションモデルに移行することで、意外性を持ち、新しいビジネスチャンスとなる可能性もある。

 

②サービスの購入(使用)頻度はどうか?

サブスクプリプションモデルで、持続性の他には、頻度が重要である。購入(使用)頻度がある程度あるものはサブスクプリプションモデルすることで、顧客の手間を省くという大きなメリットを生む。

 

③競合他社がいるか

自社の製品・サービスの競合他社がサブスクプリプションモデルを実施しているかどうかをまず調べる。先行優位性が働くので、競合他社が実施していなければ、モデル移行はチャンスなのか、不可能なものなのかを前向きに検討する価値はある。

 

●サブスクリプション型ビジネス・サービスの普及

 

これからますます普及が予想されるサブスクリプション型のビジネス・サービスでは、生活者と企業は常に「つながった状態」にあることが前提となる。さまざまな業界で「生活者にサービスを継続利用してもらい、関係性を持ち、深める」ことで収益化を目指すモデルへのシフトが進みそうである。

 

■自動車業界

すでに台頭しているサービスに「毎月一定金額を支払うことにより、契約期間中に好きなだけ自由に自動車を利用できる」サービスがある。このサービスでは、自分で購入・所有した際に必要な税金や保険の心配がいらず、在庫があれば、新車を含む好きな車に乗れる権利が得られる。

 

■ファッション・アパレル業界

話題になり始めているサービスには、「プロのスタイリストなどが選んだ服が定期的に届くレンタルサービス」や「好きな服・靴・アクセサリーなどのアイテムを一定点数まで何度でも借りられるサービス」などがある。。

 

■コスメ業界

今、人気のサービスとして、「自分の嗜好性を登録するだけで、毎月興味にあったサンプルが届く(有料)サービス」がある。消費者のトライアル機会を増やすことで、商品購入のきっかけづくりにも効果が高いと言える。

 

■タイヤ業界

今実現しているサービスは、「タイヤ自体を販売するのではなく、センサーを取り付けることで、走行量に応じた分だけ課金するスタイル」。これにより、購入ハードルを下げられるのみならず、走行データから利用実態を把握した新サービス開発も期待されている。

 

●参考になる本

 

 

●参考サイト

 

2016年はサブスクリプション型ビジネス元年、サブスクリプション型への移行には何が必要か

「サブスクリプション」型モデルでビジネスを変革!

サブスクリプションモデルとは?事例から考える、成功するために必要な3つの条件

サブスクリプションのサービスを6つに分類

所有から利用へ。「サブスクリプション」型モデルでビジネスを変革!