おごってしまったホテルの板前のために弁護しておけば、調理が.下手なわけではない。ぼくの舌がおごってしまった。昔食べた思い出がさき走って思いだけが先行してしまった。どう調理しようと、鯨はやはリ鯨なのである。つまり鯨は「初恋のブス」ということがわかった。ふと、勝浦でテンプラ屋をしているI子のことが頭に浮かんだ。ぼくの記憶のなかにあるI子は二十歳だが、現実のI子は五十歳を越えている。