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「見つけたぞ、当たりだな!」
砂漠に機体を走らせながら、ハリソン少佐は歓喜の声を上げる。
「例のキャノンだ!あいつ以外は無視しして構わん!」
通信機に向かって叫ぶや、随伴した8機が散開する。が、ぶつかった敵は例の"のっぺらぼう"ばかりだ。何かを感じたのか、キャノンタイプは後ろにいる。
「やはり、ニュータイプか!?勘がいい!」
突破して向かおうとするが、敵も中隊規模を率いていて、なかなか巧みに防いでいる。砂漠に慣れてきたのか、数日前の夜襲とは動きが違う。
後方のキャノンは乱戦に参加してこない。射撃に味方を巻き込むのを躊躇しているのか、撃ってすらこない。

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(……怯えている?)
後方で立ちすくむ敵機の姿が、ハリソンの目にはそう映った。だとしたら、チャンスだ。

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ハリソンは目の前の敵機をすばやく左にかわし、キャノンに迫った。
 向かって左、敵の右翼後方から、友軍を示す識別信号が迫っていた。妙な位置からの奇襲だが、気の利く味方がいたらしい。ハリソンは即座に通信を入れる。
「狙いはそこのキャノンタイプだ!掩護しろ!」
『了解、少佐。』

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「中尉か、トマス・オトゥール中尉!」
つぎはぎだらけの装甲に、獅子の紋様を付けたザクが、敵機の後ろからこちらに向けて飛び出してきた。マシンガンを斉射し、キャノンとハリソンの間に割って入る。ハリソンは敵のマシンガンをシールドで防ぎながら、キャノンに取り付けず、再び距離を取った。
「貴様、生きていたのか!?」
 アーサー・クレイグ大尉の報告にあった、敵に鹵獲されたらしき、つぎはぎのザク。連邦軍か、現地のゲリラの鹵獲と思っていたが、まさか、かつての自分の部下だったとは予想もしていなかった。
「どおりで、連邦軍の進軍がスムーズだったわけだ。貴様が協力したな!?」
 "敵のザク"は、通信に応えない。いつの間にか識別コードも連邦軍のものを発している。右手に持ったハンマーを思い切り放り投げ、こちらを牽制してくる。
 元部下、トマス・オトゥールに気を取られているうちに、例のキャノンが息を吹き返した。組み合っている"のっぺらぼう"が、ぱっと離れた隙をつかれ、部下のザクが狙撃されていく。2機が、続け様に撃墜された。

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「全機、サンドストーム!」
 各機、思い切りバーニアをふかして、砂塵をまきあげる。
 残りは、自分を含めて7機。最初の攻撃で、こちらも3機は墜としている。やはり、MS戦の練度はこちらが上だ。他の敵はどうでもいい。とにかくキャノンを墜としたい。
「敵にもザクがいるぞ、気をつけろ!」
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 予定していた進軍経路のやや北から、嫌なプレッシャーを感じた。ミヤギが進んでいる方向のはずだ。
「進軍方向を変える。」
ヘントの率いる中隊と、ミヤギの中隊とは、攻撃地点をややずらして、敵拠点にプレッシャーをかける予定だった。
「ミヤギ曹長の中隊と合流する。」
命令違反の上に、周囲には"そういう仲"と見られている。応答には、不満の声も混じった。
「すまない、嫌な予感がするんだ。」
合理的ではない。ニュータイプにでもなったつもりか、と、自分を叱る。だが、ガンダムに搭乗してから、勘が冴えている気がするのは、確かだ。
「ルーク准尉、この中隊の"シングルモルト"は君が引き継げ。」
ビームスプレーガンを装備した2番機に命じる。
「5番機と、6番機は随伴しろ。責任はわたしが取る。君らはわたしの命令に、無理に付き合わされた。」
2機に随伴を命じると、ヘントは、ミヤギの進軍ルートを目指した。

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 ガンダムのバーニアを思い切りふかすと、凄まじい推力で、文字通り飛ぶように、機体が前に進んだ。随伴を命じた2機とは、あっという間に離れてしまった。体験したことのないGに耐えながら、ヘントは、砂漠の向こうから自分を呼ぶミヤギの声を聞いた気がした。

【#22 Fury / Nov.26.0079 fin.】





 ヘントとミヤギは、シャアとララァみたいなもんです。急にヘントがニュータイプっぽくなったのは、たぶん、ミヤギから力を得たのです。まあ、そういうことでしょう。

 "シングルモルト"の発想が、なんとなくララァ専用MAを、リックドムに掩護させた、あの運用ぽいな、とセルフツッコミを入れて、そんなことを思いました。




















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次回、
MS戦記異聞シャドウファントム
#23 The last sand storm



砂漠に流されるのは、誰の血か——。



なんちゃって笑

今回も最後までお付き合いくださりありがとうございました。





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いっておけば、よかった?