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【#20 Single malt combat / Nov.23.0079】

 


 キョウ・ミヤギ曹長が提案した作戦は、”シングルモルト作戦”と銘打たれた。名付けたのはラッキー・ブライトマン少佐だが、なかなかいいセンスなのではないかと思える。
 ガンキャノンは、V作戦の最初期ロッドの機体群であるため、ルナ・チタニウムをふんだんに使用した重装甲が特徴だ。加えて、鈍重な見た目の割に推力も高く、軽快な機動性を誇る。そこに”ニュータイプ”と目されるミヤギ曹長がパイロットである。個の戦力だけで戦いの趨勢が決まるわけではないが、ミヤギ曹長の存在はこの旅団が現時点で持つ戦力として、頭一つ抜けていることは間違いない。
 そのガンキャノンが、全軍の先頭を駆ける。ミヤギの狙撃能力と、ガンキャノンが本来力を発揮する、中距離の射撃を生かす。会敵の矢先、先制攻撃を仕掛け、敵の奇襲を封じるという算段だ。その後の乱戦を、ガンキャノンの機動力と、ミヤギの操縦技術でうまくかわし、後続の味方に繋ぐ。
 ヘント・ミューラー少尉とイギー・ドレイク少尉が、それぞれMS中隊を率いてそれに続く。なるべくビーム兵器を装備したジムを連れていき、敵に突撃し、ミヤギが崩した敵に更なる打撃を加える。

「エスコートはわたくしめが努めましょう。」
 ”ロレンス”がうやうやしく話す。少し距離を取って随伴し、乱戦になれば、ミヤギと共に突撃するつもりらしい。
「ジオンもわたしの存在を認知していることでしょうから、先程のように騙されてはくれないでしょうが、それでも初撃くらいは助けになれるでしょう。」
「撃たれても知りませんよ。」
ミヤギのはっきりした物言いにも、覚悟の上です、とにこやかに応じる。
「こちらの後味が悪くなるということが言いたいのです。少佐、せめて味方の識別コードを供出できないのですか。」
「そうだよな。ここまで来て敵のスパイかもしれんなんて言っていられないだろうしな。」
イギーもミヤギに味方する。
「まあ、それは可能だが、敵を撹乱するという意図は薄れるな。」
「それでは、これならどうでしょう。」
 “ロレンス“の提案はこうだ。
 連邦の識別コードは使うが、敵との乱戦に突入するまでは、ジオンのコードを使う。敵に打撃を与えられるタイミングを計った攻撃を、効果的に機能させるための偽装にジオンのコードを使うのだ。乱戦に突入したならば、同士撃ちを避けるべく、連邦のコードを使う。
「いいんじゃないかな、賛成だ。」
ヘントが言うと、他のパイロットも倣った。
「では、シングルモルト作戦は100分後に発動だ。MS隊は、ヘント少尉と最終的な陣形を確認しろ。」
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「あなたは、ジオン軍人なのではないですか。」
 MS隊との打合せを終え、各々配置のために座を解散した後、ヘントは”ロレンス”を呼び止めた。
「鋭い洞察力をお持ちですね、少尉。」
いつもどおり、”ロレンス”は余裕のある笑顔を崩さない。
「民間人のゲリラが簡単に扱えるほど、MSは単純な機械ではないですからね。それに、あなたのその、妙に芝居がかった話し方。ジオン訛りを隠すためのもだ。」
ほぅ、と”ロレンス”は感心して声をあげる。
「よく、ご存じで。」
「祖父がサイド3からの移民でして、ジオン訛りには多少馴染みがあります。」
応じながら、
「しかし、何故です。」
当然の疑問を投げ掛ける。
「ルウムの戦ですよ。コロニー落とし、あれは、人間の所業ではない。そうは思いませんか。」
 ”ロレンス”は、第2次地球降下作戦の際に、ここ、レバントを制圧した部隊にいた。そこで、見てしまったのだ。自分たちジオンが、コロニー落としの結果招いた地獄を。疫病や、異常気象は、そこに暮らす人々の暮らしを打ち砕いた。もがき、苦しむ人々を、MSの巨体で踏み潰し、神の雷のごとき120mm砲を炸裂させた。有史以来、人間の文化が起こす争いの渦中の地であった中東の地を、人々の想いや歴史ごと焼き払った。人類の文明発祥の地とも言えるユーフラテスの流れ。そこに息づく文化の営みを、人間の歴史が育んできた尊い財産を、今、ここに生きる人々の暮らしも、全て破壊し尽くした。

「たった数ヶ月で総人口の半数など、あり得ないことだ。」

 その後悔が、"ロレンス"の心を蝕んだ。サラサールに拠点を設けるべく仕掛けた、バクダット制圧戦で、彼は自分のザクをゲリラに落とされたかのように装い、ジオン軍を離反した。
「あなたの志は、わたし個人としては理解できますし、共感もできます。しかし我々の仲間には、あのコロニー落としを憎んでいる者がたくさんいます。」
 だから、その素姓は隠した方がいい、と忠告する。
 勿論です、と"ロレンス"は穏やかに応じる。
「砂に潜るザクの部隊を指揮しているのは、ルウムからわたしの上官だった男です。戦場でよく働く男でした。手強いですよ。」
「分かっているつもりです。頼りにしています。部下を頼みます。」
「勿論です、お任せください。」
それでは、また戦場で、と、いつもの芝居がかった優雅な仕草と声で告げると、"ロレンス"はその場を立ち去った。
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「シングルモルト作戦は、お前の入れ知恵か?」
 コクピットに乗り込む直前のブライトマンの問い掛けに、ヘントは振り向いたが、つい、首を捻った。
「違うのか。ダマスカスで外出許可を出した時に、てっきりなあ、寝たものだと思っていたが。」
「出撃前にご冗談が過ぎます。」
品のない質問に、心底うんざりしたという顔付きでヘントは応じた。まあ、少尉もそんなことを焚き付ける柄じゃないか、とブライトマンは独りごちている。
「だとしたら大した玉だな。意外としたたかだよ、曹長は。」
ヘントはますます分からないという顔をする。
「自分のアイドル性をよく分かっている。曹長はこの旅団のアイドルさ。そのアイドルが、自ら命を懸けて先陣に立つと言えば、後に続く野郎どもはそりゃあ奮起するよ。姫様を死なせまいとな。」
ミヤギがそこまで考えるだろうか、とヘントは思ったが、いつもどおり口にはしない。
「まるでジャンヌ・ダルクだ。」
ブライトマンが楽しそうに笑う。
「それはさすがに縁起が悪いです。」
思わず、口に出た。かの聖女の物語は、鮮烈で美しくもあるが、その結末は悲劇に他ならない。
「ああ、だから作戦名をシングルモルトにしたんだろうが。」
からからと笑うと、手元の通信機から全軍に気合を入れる。
「ようし、各員配置についているな。ミヤギ曹長を死なせるなよ!」
 おう!と、いう、全軍の雄叫びが聞こえるようだった。案外、ミヤギがしたたかでもあるという発想は、ブライトマンの邪推でもないのかもしれない。
「なあ、ところで本当に……」
ブライトマンがにやついた顔をこちらに向けたところで、ヘントは配置につきます、とだけ答え、"マスタング"のハッチを閉じた。
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 両翼に、61式洗車の大隊を展開させ、ミヤギ曹長のガンキャノンが、全軍の先頭を駆ける。
 戦闘濃度のミノフスキー粒子が、肌に痛いほどに感じられる。実際は、そんなことなどあり得ないと分かっているのだが、集中力の高まりと共に、ミノフスキー粒子下を駆ける機体と、自身の身体が一体化してくるように思えてくる。
 ミヤギは、"ゾーン"に入っている

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 目の前に、稲妻が走ったかのような感覚の直後、一瞬、刻が止まって見えた。
 300m先の2時方向。砂の中に潜っていて、姿の見えない敵機の、"姿が見える"——。
「そこっ!」
口中で静かに呟くや、肩の低反動キャノンを放った。
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 潜砂していた先鋒の1機がやられたのに動揺し、友軍機が次々と砂から這いずり出た。敵が十分に接近する前に、姿を晒してしまった。奇襲は失敗した。
 敵が間近にいれば、足場を崩して隙を作ることもできたが、砂から出たばかりの機体を敵から遠くに露わにすれば、却って動きの鈍い的になる。続け様、あっという間に2機がビームライフルの餌食になった。
 夜襲を阻んだ、キャノンタイプだ、と、エドガーはすぐ気づいた。
(だが、どうやって砂の中の我々を検知した?索敵の結果では、グラウンドソナーのホバートラックを使うような布陣ではなかったはずだぞ。)
まさか、例の鹵獲機を使うゲリラの情報か。いや、歩兵も放ち、人間の動きにも注意を払って布陣したはずだ。
 ニュータイプ、という言葉が頭をよぎる。そんな都合のいい兵士などいるはずがないと、一笑に付してきたが、上層部は本気で研究しているとも言う。
「全隊、プランB"サンドストーム"に移行!」
そんなことを考えても仕方のないことを、エドガーは知っている。すぐに砂をまきあげる例の戦い方をするよう、MS隊に指示を飛ばした。
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『戦車隊はそのまま突っ切れ!中段の戦力と共にルトバを目指して包囲しろ!』
 通信機から聞こえるヘントの声が、いつもより荒々しい。
『MS隊は我々で包囲、殲滅する!いいか、ここで殲滅しろ!ミヤギ曹長を全力で掩護だ!!』

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 背後の頭上に、プレッシャーを感じた。 ミヤギは機体を180度転回させて、上空にビームライフルを構えた。正面から来ている敵機は、追い越して行ったイギーのジムが片付けてくれると分かっていた。 感じた通りだ。
 背後の頭上に、プレッシャーを感じた。
 ミヤギは機体を180度転回させて、上空にビームライフルを構えた。正面から来ている敵機は、追い越して行ったイギーのジムが片付けてくれると分かっていた。
 感じた通りだ。"血塗れの左腕"を載せた、ヒラメ飛行機が迫っていたが、間髪入れず撃ち落とした。

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『ミヤギ!動け!』
 ヘントの叫びを聞いて、ミヤギは咄嗟に反復横跳びのような動作で、ガンキャノンを退かせた。
 グフが、サーベルを上段に振りかぶり、降下しくる。
(タンクが要と思っていたが、このキャノン砲が本命か!?)
通信が繋がっていないはずなのに、敵機のパイロットの声が聞こえた。
 素早く踏み出し、サーベルと左腕のガトリングで巧みに攻めてくる敵機に釘付けにされる。近距離すれすれを攻められ、240mmキャノン砲もビームライフルも、うまく取りまわせない。これでは、仲間の掩護ができない。焦るミヤギの視界に、サンドカラーの見慣れた機体が飛び込んできた。"マスタング"が敵機に体当たりを仕掛け、ガンキャノンから引き離した。
『こいつは俺が相手をする!曹長はもっと敵を落とせ!』
了解、と返事をして、再び機体を旋回させ、前に進める。
「014、026のジム、どけ!」
名指ししたジムが左右に退くのを認めて、ビームライフルを2発放つ。同じ数、爆炎が砂塵の中にあがった。
「あと、何機だ——!?」
ミヤギは更なる獲物を求め、敵の中に分け入った。
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(戦いは、終わったな。)
 エドガーは敵の火砲をなんとか掻い潜り、紅白ののっぺらぼうを叩き潰しながらも、この局面の敗北を受け入れ始めていた。
 キャノンの機体の鬼神のような射撃に、完全に全軍を崩された。おまけに敵機も砂地に慣れてきている。そうなれば違いすぎる物量に、あとは押し潰されるだけだ。
(だが、キャノンか、サンドカラーか、ビームの槍のやつか、どいつかは、せめて——!)
敵の中で特に脅威なのは、その3機だ。槍のやつはさっきから乱戦の中をあちこち飛び回っていて捕まりそうもない。キャノンは、たぶん、近づく前に撃ち落とされる。考えながら動いていると、アーサーのグフと組み合っている、サンドカラーの機体が見えた。エドガーは、戦いの前に仕込んでおいた、最後の策を思い出した。
「わたしがやります、大尉!マイロ!今だぞ!」
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 背後から迫ったザクが、この戦いの指揮官だと、ヘントは直観した。
(ニュータイプてのはな、ミノフスキー粒子を媒介にした、感染症みたいなものだって学者もいるらしい。最近勘が冴える気がするのは、曹長のせいかもな。)
ダマスカスでの待機中に、ブライトマンとそんな話をした。確かに、ミヤギだけでなく、自分すらも、勘が冴えてきているようにヘントは感じる。
 組み合っていたグフの背後から、また例の航空機に乗った別のグフが迫っていたが、そいつに戦意らしい戦意がないことも、直感でわかった。
 空から来たグフは、ヘントの相手をしていたグフを、右手から出した触手のようなワイヤーで絡め取ると、そのまま空に消えていった。その先のはるか高空に、ガウの姿が見えた。あれに収容されて、戦線を離脱するのだろう。
 背後から来たザクが、"マスタング"にぶつかってきた。突撃しながら放たれたマシンガンで、かなり被弾したが、"マスタング"の装甲ならば充分に耐えられた。左手のヒートホークを叩き込まれそうになるが、マシンガンを捨てて押さえ込む。相手がザクなら、パワーはこちらが上のはずだが、なかなかどうして押し切れない。
『少尉!』
 ミヤギの、泣きそうな声が通信機に入る。
「ミヤギ、撃て!こいつが指揮官だ!」
こいつを撃てばこの局面は一度片がつく。
「キャノンを使え!」
ビームではなく、と言う意味だ。敵機の機体越し、"マスタング"の装甲ならば、耐えられる。その意図は伝わっているはずだ。躊躇うミヤギに、もう一度、撃てと促す。

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 そして、ガンキャノンの240mmキャノン砲が火を吹いた——。

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「少尉!ヘント少尉!ヘント!」

 ミヤギは声を震わせながら、頭部と右腕が吹き飛んだ"マスタング"に、ガンキャノンで取りついた。吹き飛んだ頭部の首元にある、コクピットハッチがひしゃげている。

「返事をしてください!少尉!」

ミヤギがガンキャノンで、ひしゃげたハッチをこじ開けると、オレンジ色のノーマルスーツが転がり出て、砂地に大の字になった。ミヤギも慌ててコクピットを開くと、ヘントに駆け寄って、抱き起こした。

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「大丈夫だって、言っただろう。」

「ふざけないでください!」

 そんな言葉は、一度も耳にしていません、と強い口調でもう一度ヘントを責める。ミヤギは涙目でヘントを睨みつけたあと、その胸に顔を埋めた。

「2度と……2度と、あんなこと……させないで……ください……」

しゃくりあげながら言うミヤギの背中に、そっと手を置き、ヘントはすまない、と呟いた。

 ミヤギが泣き止む様子がなく、動けないヘントが困り果てていると、地響きを立てながら、イギーの乗るジムストライカーが近づいてきた。

「こら、そこのバカップル。」

機外スピーカーで呼び掛けるてくるイギーの声に、この局面の戦闘が終結したことを、ヘントは理解した。

 とにかくまた、生き延びることができた——。

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 U.C.0079 11月23日。

 地球連邦軍、ベルベット作戦レバント方面侵攻第3軍は、同第4軍と合流し、ルトバ近郊にあるジオン軍の前衛拠点を制圧した。同拠点の守備に当たっていた、ジオンのMS隊も殲滅。同月26日、トルコから南下した第1軍、第2軍と共に、サラサール基地への攻撃を決定した。

 

【#20 Single malt combat / Nov.23.0079 fin.】

 

 今まで読んできた漫画や、観てきた映画、インターネット上の創作物など、ために貯めた厨二病的な妄想の産物が結集して物語を動かしている感じがします笑

たのしー笑

先日、テーマソングはなにがいいかなー、とか色々聞いていたら、昔好きだった曲が、なんか妙にマッチして、こう言うイメージも影響してるんだろうなと思いました。

ちなみに、完成した文章をAIに要約させたり、解説音声つくらせたりはしていますが、作品はすべて自分で打っております。あしからず。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次回、

MS戦記異聞シャドウファントム

#21  Overload

 

若き命が、躍動する——。

 

なんちゃって笑

 

今回も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。

次回のお越しも心よりお待ちしております。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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あなたが、いきていてくれて、よかった。