
【#11 a Shadow phantom - 2】
「とうとうオデッサが落ちたってよ。」
ジオン公国アフリカ方面軍歩兵隊の、ケビンは、隣に腰を下ろしたスチュアートにコーヒーをすすめながら言った。
「北の方なあ、昨日は随分と、空に雲が伸びていったよな。宇宙に脱出した奴らのHLVかねえ。」
コーヒーを一口すすると、スチュアートは不味いな、と呟いた。
「てことは、次はここかな。」
2人が露営するのは、シリアの砂漠である。ジオンのアフリカ方面軍が張っている、ベースキャンプの中だ。
レバント地方と呼ばれる、中東、北アフリカの広い地域は、開戦から間も無く、ジオンの電撃作戦によってあっという間に制圧された。名だたる将軍や精鋭部隊が名を連ね、地球連邦軍や現地ゲリラの度重なる反抗作戦も跳ね除けてきた。
アフリカ戦線のジオンは強兵。
それが、敵味方共通の認識であった。
しかしその強さも、オデッサを中心とする東欧のジオン勢力圏を盾にするような勢力図があってのことであるのは明らかであった。オデッサが落ちたとなれば、少なからぬ不安が将兵によぎる。
「でも、ここまで攻めてくるには、トルコやエジプトを抜いてこなくちゃならんだろ。落ちるとしてもここは最後さ。」
小便から戻ってきたもう1人の歩兵、ボブが会話に加わる。
「落ちるって、なんで負けるのが前提なんだよ。」
「ばか言え、勝てるかよ。あっちはMSもないのにオデッサを抜いたんだぞ。」
ケビンの抗議に、ボブは物量が違わあ、と返す。
「MS、もう持ってるんじゃないかって噂だけどな。」
今度はスチュアートだ。
「ああ、例の"ガンダム"だろ。でもなあ、たった1機のMSで……」
「違うよ、公表してないだけで、もう量産機を持ってるってさ。」
ありそうな話だ、と口には出さないが皆が思う。いかに地球連邦軍が圧倒的な物量を持っていようと、やはりMSの相手にはMSが必要だ、というのは、鋼の巨人に守られてきたジオン兵たちの、素直な感覚なのだ。

ズン……と、遠くから、地を揺らす重い衝撃が響く。
「……MS?哨戒任務なんか、聞いてたか?」
ケビンが2人の顔を見るが、揃って首を横に振った。

にわかに、空が明るくなった。直後に、爆発音が届いた。攻撃だ。
「敵襲!?」
あちこちの幕営から、兵士が飛び出してくる。見ると、遠くに、露天駐機されていた友軍のザクが2機、火を吹いていた。敵の襲来など、まったく予見していなかったため、呆気なく撃破されたようだ。

「待て、もう1機……?」
ボブが不審の声を発する。
闇夜の中、ひとつ目の巨人の影が、炎に照らされている。
このベースキャンプには、ザクは2機しか配備されていないはずだ。


火明かりの中、ザクはゆっくりとマシンガンを構えた。
「おい、まさか……」
ケビンが息を飲んだ直後、120mmの凶弾がジオンの陣地に降り注いでいた。

U.C.0079 11月10日。
オデッサ作戦を完遂した地球連邦軍は、レバント地方に展開する、ジオン公国アフリカ方面軍の掃討に向け、戦力を整えはじめていた。北アフリカへの進攻作戦は、11月18日の発動を決定。作戦名は”ベルベット作戦”と命名された。
【#11 a Shadow phantom - 2 / Nov.10.0079 fim.】
今回も最後までお付き合いくださりありがとうございました。
こちらにもまとめております。

