
【#10 ”Soldiers” of sorrow / Nov.9.0079】
『やられた!戦車隊と歩兵隊が!』
突如降下してきたザクを撃破したものの、イギーの叫びにヘントはハッとする。
「まだだ、イギー!上!」
今の攻撃は、自分たちを狙っていなかった。MSを狙った本命の攻撃が続くのではないか。
『3時、9時の上空!挟撃!』
通信機に、少佐の声が入った。
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『まだだ、イギー!上!』
『3時、9時の上空!挟撃!』
ヘントと少佐の声に、イギーはとっさに振り返る。ヒラメのように扁平な航空機の背面に乗ったザクが、低空から突っ込んできていた。
「…っ、野郎!」
マシンガンの掃射で、"ヒラメ"は爆散したが、爆風で加速したザクがイギーに組み付いた。十八番を奪われ、バランスを崩しながらも、シールドで押し返す。パワーはこちらが上だ。

敵機がマシンガンを構えて後退しようとしたところを、シールドを構えて突っ込み、そのまま、力任せに押し倒す。マシンガンを叩きこむ直前、コクピットからパイロットが転がり出た。
「思い切りがいい……っ!」
ジムの足元を思い切り駆け抜けて、後ろに抜ける。

「……っ!!ヘントッ!?」
敵を追った目線の先、巨大なガトリングを装備したジオンのMSの足元に、ガンダムが火を吹いて倒れているのが見えた。敵機はイギーに向けてもガトリングを斉射し、牽制する。敵の銃撃をしのぐシールド越し、先ほど逃がしたパイロットが、ワイヤーで敵機に取りつくのが見えた。

ふと、轟音が響く。敵の“ヒラメ”が、ジムの頭上すれすれをかすめた。

敵機はそいつに飛び乗り、そのまま戦線を離脱してしまった。
鮮やかな引き際に、イギーは放心し、敵の消えていった空を眺めていた。
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『3時、9時の上空!挟撃!』
通信機に、少佐の声が入った。無事だったか、と一瞬の安堵が、機体の動きとヘントの視線を迷わせた。3時方向にいるイギーを、振り返ってしまった。突っ込んできた敵機に、組み付かれているのが見えた。慌てて、自機も転回する。扁平な航空機の背から飛び降り、最大戦速でミサイルのように滑空してくる敵機が視界に飛び込んできた。

巨大なガトリングを向けられ、至近距離から機体に叩き込まれた。完全に、不意を突かれた。直撃だ。
「……っ!!」

激しい衝撃の後、ヘントの意識は途絶えた。

U.C.0079、11月9日。
地球連邦軍第4軍が、ジオン公国軍オデッサ方面採掘基地郡の絶対防衛線を突破したことを皮切りに、ジオン公国軍の戦線は崩壊。地球連邦軍はそのまま戦力を反転させ、ルーマニア以南の地域も制圧、ギリシャまでを勢力圏に取り戻した。
ジオン公国オデッサ方面軍の指揮を執っていたマ・クベ大佐は、司令の任を解かれ、ザンジバル級で宇宙に脱出。地球連邦軍全軍を率いるレビル将軍は、オデッサ作戦の完遂を宣言した。
第87対MS戦隊は、オデッサ市にてジオン軍のアーサー・クレイグ大尉の率いるMS隊と交戦。戦車隊、歩兵隊は事実上壊滅。ガンダムは中破、ビームライフルも喪失。87戦隊は解隊。L3038MS試験隊“ライオンズ”の残存機6機を統合し、新たに2機のMSと1名のパイロットを補充。MS中隊・第22遊撃MS部隊として再編。
87戦隊と交戦したジオン公国軍アーサー・クレイグ大尉、イアン・リー曹長、マイロ・アンダーソン伍長は、オデッサ市の宇宙港で洋上空母を接収、トルコのジオン勢力圏まで脱出。レバント地方に展開する、ジオン公国アフリカ方面軍に合流した。
【#10 ”Soldiers” of sorrow / Nov.9.0079 fin.】
シャドウファントムのオデッサ編はこれにて一度閉幕です。第2部も考えております。
当初は、架空戦記系の投稿をされているモデラ―の先輩方を真似て、
・大極に影響のない散発的な戦闘を描く
・主人公不在(ヘントらはあくまで狂言回し)のドライな列伝・叙事詩風のショートストーリー
を目指していました。「オデッサ作戦の最後でちょっとほっとしたところで、通りすがりのグフカスタムにガンダムを撃破させる」というラストはずっと考えていたのですが、アーサーのようなキャラクターは作る気がありませんでした。アーサーのキャラクターを創作したことで、予定より物語りがながくなってしまうと共に、個々のキャラクターを掘り下げるきっかけとなった気がします。


幼いころ、まだ素組と部分塗装程度で満足していたあの頃も、こんな妄想をしながらガンプラを眺めてにやにやしていたなあ、と思い出しながら、続けてまいりました。地上でピンチのジオン軍を、勇敢な指揮官が率いて戦線離脱、という話はよく妄想していました笑
今後とも、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
今回も、最後までお付き合いいただきありがとうございました。
こちらにもまとめております。



