【#04 Front line / Nov.1.0079】
U.C.0079、11月。地球連邦軍は、オデッサ作戦の足掛かりとして、ジオン勢力圏から、国際空港を擁するリヴィウの奪還に成功した。
61式戦車の大隊を主力に、力押しの物量戦で、敵の戦力を殲滅した。87戦隊も本作戦に参加。ワルシャワの野戦本部から押し出してきたガンタンク隊と連携し、対MS戦を展開していた。

戦闘も小康状態となった頃、イギーのジムの足元に横たわったザクからは、なんとか生き延びたジオンのパイロットが、両手を挙げてコクピットから出てきていた。
「すばしこい奴だったな。」
100mmマシンガン銃口を、敵兵に注意深く向けたままイギーは呟いた。

カーキのザクは、おそらく敵のエースだろう。
器用なステップを踏みながら、ビルなどの遮蔽物の陰に、巧みに身を隠し、うまく立ち回った。ガンダムのビームライフルに右腕を吹き飛ばされた後も、残った左腕でヒートホークを抜いて、迫っては退いてを繰り返した。イギーのジムもいつもの体当たりをかませずに、やや離れたところから散発的な銃撃しかできず、致命傷にならない。その銃撃も残った左腕でコクピットを庇い、なかなかしぶとい。
ようやく右足をビームライフルで吹き飛ばしたことで動きを止めたが、パイロットはまんまと生き永らえた。さすがに力尽きたと見え、おとなしく投降の意思を示したが、軽口を叩く余裕はあるらしい。

「あれが噂のガンダムか?ビーム兵器ね、すごいもんだな。」
「うるさい、黙ってさっさとこっちに来い!」
歩兵隊にも損害が出ているため、連行する兵士も気が立っている。

「南極条約がある、捕虜の扱いには気を付けろ。」
ホバートラックで指揮を執っていたラッキー・ブライトマン少佐が、スピーカーで注意を促すが、「こいつの態度次第です」と、歩兵の返事も荒々しい。

ふと、甲高い音が頭上で鳴り響き、遥か後方で爆音があがった。味方が展開していない方向からの砲撃だった。ジオンの残存兵力が、まだ抵抗しているらしい。

もうもうと黒煙がたち上る中、応じるように、ガンタンク隊からの激しい砲撃が始まった。ガンタンク隊の放った火線が、大型の仕掛け花火のように輝きながら上空を横切った。爆炎と硝煙で薄曇りのようになった空も、たちまち、明るくなる。
「派手にやるな。うちは随分景気がいいことで。」
ブライトマン少佐の軽口にヘントは、
『リヴィウの美しい街並に、もう少し気を遣ってほしいものですが。』
と応じる。
(……戦場にいる人間が風流を語るか。どっかズレてるんだよな、こいつは。)
少佐は、あえて口にしない。

「ソナーに反応。ザクですかね、3時方向に1機。」
観測員のマーク曹長の声に、ヘントとイギーが動き出す。
ここは、地上の最前線である———。
【#04 Front line / Nov.1.0079 fin.】
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