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【#03 a Shadow phantom / Oct.27.0079】

 リヴィウ近郊で哨戒任務に就いていた、ジオン軍突撃機動軍所属アーロン曹長は、ここ数日の連邦軍の動きに違和感を感じていた。
 攻撃を仕掛けてくる時は、61式戦車あたりを物量に任せてやたらと送り込んできていたのだが、この数日は、せいぜい2個小隊程度が散発的な攻撃を加えては、素早く撤退していくということを繰り返していた。そして、市街地にはやたらと歩兵がうろついて、対MS用バズーカ砲をチマチマと撃ち込んでくる。

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「オデッサへの大反抗作戦を計画していると聞くが……」
『だとすれば、この先の空港は欲しいのではないかと思うのですがね。』
 僚機のサイモン軍曹が応じたように、アーロンらの部隊が拠点としているリヴィウには旧世紀から国際空港がある。オデッサを堕とすなら、まず空港を奪取して、航空戦略による打撃を加えてくるだろうというのが、上層部の読みだ。
 もう少し西の、ポーランドには、連邦軍の陸上戦力が終結しつつあるとも聞くが、国境付近には厚い防衛網が敷かれており、突破できない。見えない距離から、散々砲撃を浴びて帰ってきた部隊が幾つもある。
『MS大の、バカでかいタンクがそびえ立っていたって言いますが、ビッグトレーてのとは違うんですかね?』
「MS大なら、ビッグトレーは小さすぎる気がするけどな。」
『噂では連邦軍もとうとうMSを投入したとか。なんでしたっけ?ガン……なんとかって」
「ああ、でもそいつは中央アジアでゲリラ戦をしてるんだろう?いくらなんでもこんなところに参戦してきやすまい」
 サイモンが何か答えようとしたが、次の瞬間、熱源を探知するアラートと共に、凄まじいノイズが通信機に入った。

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 サイモンのザクが、火を吹き、上体が爆散した。
 何かが、胴体に直撃し、貫通していった。戦車砲にしてはいやに図太く明るい"それ"は、光のような速さで———

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(……光……ビーム砲か!?)
 連邦軍のMSは、先程サイモンと話していた、中央アジアのゲリラ部隊にしかないはずだ。
連邦軍のMSは、先程サイモンと話していた、中央アジアのゲリラ部隊にしかないはずだ。"ニュータイプ"と噂される、異常な戦力の部隊とは聞くが、まさか東の果てからヨーロッパまで、突然現れるなどできるはずがない。
 ザクを一撃で屠る威力を持つ新兵器、ビームライフル。それに、あの、V字アンテナに、人間の顔のようなツインアイ。あれは、まさしく、噂に聞いた……
「ガ、ガンダムだと!?」

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(連邦の白い悪魔……神出鬼没の亡霊だとでもいうのか……)
考える間に、アーロンのザクもその胴体を凄まじい熱に灼かれていた。

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 U.C.0079 10月25日を持って、地球連邦軍はオデッサ作戦の最終確認を終え、各地で陽動作戦を展開。来たる大反抗作戦の発動を同年11月7日と定め、全軍に通達した。
 第87対MS戦隊は、リヴィウ国際空港奪還のための第1次作戦に参加。陸戦隊に加わり、ウクライナ国境を越えて進軍を開始した。

【#03 a Shadow phantom / Oct.27.0079 fin.】


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