その人は、静かに座っていた。



みんなでワイワイ騒いでいる中、その人は、こっそりとしているかのように、静かにただ飲んでいた。




何となく寂しそうな感じがしたので、話してみると、とても穏やかで落ち着いた人で、楽に話せる人だった。




何度か店で顔を合わせるようになり、そのたびにゆったり話し込むようになった。







ある日、何人かでその人のマンションに遊びに行くことになった。



無機質なくらい何もない部屋。元々京都に住んでいるのだが、仕事でこっちに来ているのだと話していた。




それから何度か、その人のマンションへ遊びに行くようになった。


特に何をするわけでもなく、ただ二人で他愛のない話をしていた。





ある日、店に遊びに行くと、誰かから『あの人、背中に彫り物あるよ』と言われた。


確かに、上は脱ごうとしない。


隠しておきたいんだろう…話してくれるまで待とうと思った。






ある日、熱があるから来てほしいと電話があった。



慌てて買い物をして部屋へ行くと、その人はソファに横になっていた。


とりあえずベッドに連れて行こうとしたら…抱きすくめられ、色鮮やかな背中が少しだけ見えた。








それから数日後、その人がマンションを引き払って京都に戻ることを聞いた。

『実家のペットショップを継がなければならない』と言っていた。



みんなでお別れパーティーをしようということになり、ウチも誘われたのだが、行かな…行けなかった。








あの人は、今、どうしているのだろうか…。
『これ、今日手に入ったばっかりなんだ』



と渡されたのは、ストッキングのようなパッケージに入った…網?





だいぶ頭が麻痺していたのだろう。言われるがままに奥の小部屋へ入った。


カーテンがついた窓のようなのがある。あとからそれはマジックミラーだと知った。




とりあえず着てみたものの、隠れる部分がない。全身網タイツなのだ。


それに、さっきから、窓の向こうに人の気配がする。




小部屋から顔だけ出して『…着ました。』と伝えた。
仮面…。


色々なコスチューム…。



そして、大人のオモチャが、オブジェのように飾られている。



そして、他の男性客がこっちを見ていたことに気がついた。





…何なんだ、ここは。






するとマスターが『着てみる?』と聞いてきた。