久々に父から着信があった。
母と父の離婚後会ったのは数回、電話も数回。もう30年近く疎遠の父。
そもそも私が生まれた頃から愛人の所に帰っており、一緒に寝た記憶がない。
正確に言えば40年近く疎遠の父。
他人のような存在だが一応血の繋がりはある。
子供の頃全然会えなかったけど、たまに帰ってきてカブトムシ取りに行ったりした記憶も数回ある。
今日の電話口は病院からだった。
極めて命の危険がある状態。今きっと生死を彷徨っているのかもしれない。
想いは行動に現れるとも取れるし、行動より想いが勝るかもしれない。
そんな事を感じたり、愛人側の立場への配慮も少なからずある。
母親は父にたくさん苦しめられたであろう。
父は父で他の人を好きにならなければこちら側で幸せな家庭を築けたかもしれない。
そんな事を考えながら少しでも楽に逝かせてやりたいとか、俺らは血の繋がりはあるものの色々な事が障害となり交わる事は少なかったけど、本当は幸せな家庭で育ちたかったという部分もあるし、そうではない事で得た物も大きくて、感謝もある。
自分自身も子供と離れて過ごす身、自分が親としてとってほしいと思う行動を俺は選択する。
俺が大人になった時、大人対大人であなたの失敗談を酒でも酌み交わしながら語れたらよかったけど、親というのはいつまでも親で、俺を子供として見ていたからであろうそれすら叶わなかった。
ただ負い目が大きすぎたんだろうし、どう足掻いてもうまくいかない時はうまくいかないもの。
それが人生で俺はそんな所に寄り添いたいと思う。
それが俺らの今置かれている関係性での俺からできる唯一の親孝行であり、大人の俺があなたに示す「想い」だ。
医師には私たち側の意志は「処置はしない」の回答をした。その奥には色々な意味がある。あなたの妹はそれにより生かされて苦しんでいる部分もあるし、何より生きることも色々ありすぎて疲れただろう?あと生かされたあと、想像を絶する不自由の苦しみが待っている。
これはドラマではなく現実。生かされることがどれだけ苦痛かはあなたの妹を近くで見ている俺がよく知っている。
あなたの愛人はあなたが好きなんだろう。処置に同意した。俺とは反対の考えだけど、あなたがそちら側で良い関係を築いたのだろう。それに関しては幸せな事だからよかったね。
あなたの妹を見て大変さを知っているから家族誰もが同じ状況になった時延命処置は絶対にしないと決めていた。そういう意味では家族に戻れたという事と捉えてもらえればいい。
どちらの決断も尊重されるし、幸せや想いがあっての決断だと思う。
オヤジとはまともに話した事は無かったけど、連絡もなく、お金を入れる事もなく、側から見れば捨てられた家族だった。俺なんか養育費払っても捨てられたって元妻に言われてるんだぜ?
ただ俺らはあなたに対してそんな事思っていない。それがおそらくお袋の方針として俺とねぇちゃんに引き継がれているんだと思う。
お袋は自然体が好きだから無理な事は好まない。生きるも死ぬも自然。だから死ぬ時は楽に逝かせてやりたかった。
離れて住むと想いが強くなる。
想いが強いと行動に現れる。
想いが強いから行動を起こさないという行動をとったともとれる。あなたも色々心を痛めただろう。他人にどう思われたって俺は構わないけど、命が繋がってももう自分の意志で自由に行動はできない。だから遠くから労って、この世に誕生させてくれた事に感謝します。
世の中にはオヤジの事、無責任とか最低だとか言う人もいるだろう。というかそれが世間一般の考えだから仕方ない。不倫して家庭を捨てたんだから。ただ、結局離婚が先か、関係構築が先かのくだらない差であって、俺は気にしてないし、本当は飲みに行けるうちにそんな話をできたらいいなと思っていたけど、叶わなかったな?
想いを伝えるって難しいんだよな。うまくまとまらないし、普通ならこんな時は親のそばに居れるものだろうけど居れないのはあなたが作り出した関係性だし、こんな時すらそばに居れない息子の気持ちもわかってほしい。