「んー。明日の夜明け前とか、もしかしたら夕方くらいになるかもしれんな」
と産科医の先生が言ったのが午後6時くらい。それから1時間するかしないかで妻が痛みで悶絶し始めた。いやちょっとこれは命に関わるんじゃないのかと思って看護婦さんを大急ぎで呼びに行き、看護婦さんは大急ぎで先生を呼びに行き、妻は分娩室に運び込まれ、私は妻の絶叫を聞きながら廊下をうろうろしていた。
午後7時半に分娩室に呼ばれ、それから程なくして娘が誕生した。血にまみれた娘は、10秒か20秒ほど外の世界を警戒するかのように慎重に様子を窺い、それからおもむろに泣いた。妻は全身脱力し、虚ろな目で中空を眺めていた。およそ4年前に初めての娘が生まれたときのことを思い出した。あの時にも心から思ったものだが、また今日あらためて思った。
女性は偉大だ。つくづく女性には敵わない。本当におつかれさま。
そして新しい娘よ、ようこそ外の世界へ。