お仕事の忙しさがピーク。バランスをとるために仕事から思い切り距離のある小説を、と思って読むのを中断していたピンチョンの『ヴァインランド』を再開。おかげさまで頭がぐちゃぐちゃになってきた。

仕事なんてどーにかなるものよ、などと開き直りの気持ちにさせてくれるのがピンチョンのいいところ。
どこかで誰かが(両方とも忘れてしまった)猛烈に推薦していたトム・ジョーンズという作家の『拳闘士の休息』を読んでいる。

短篇集なのだが、最初の三つを読んで完全にノックアウトされた。こんな荒々しくて乾いた文章読んだことない。絶句。

これは皆さんもぜひ読んでみてください。
『1Q84 BOOK3』を読んでいる。実に面白い。BOOK2を読み返してから読んだほうがいいんだろうな、細部をけっこう忘れてしまっているものな、などと思いつつ、読むのを中断できん。

おそらくいま何十万人かの日本語を読める人たちが、いろんな場所でこの本を読み進めているんだろう。
『わたしを離さないで』読了。深く、強く、そして静かな感動。全身にゆっくりとしみわたる感動。もっと早くに読んでおくべきだった。

続けて同じ作者の『日の名残り』を読み始めた。プロローグで一気に引き込まれてしまう。なんということだ、これまた大傑作に違いないぞ。
『わたしを離さないで』を読み継いで三分の一あたりに差し掛かったところで衝撃的な(この物語のなかの)事実が明かされた。

まさかこんなことが待っていたなんて。少なくとも朝には全く似つかわしく展開だな。
忙しさにかまけて小説を読んでいなかった。久々に手に取った小説はカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』。会社の同僚が、ぜひにと貸してくれたもの。数十ページしか読んでいないが謎めいた独白が魅力的。期待がいやが上にも膨らむ。こりゃ面白いぞ。
以下の文章には極めて不快な内容が含まれています。あらかじめご了承ください。

朝、出勤途上の御堂筋。休日出勤は憂鬱ではあるが、人気の無い日曜日の朝のオフィス街を歩くのは気持ちいい。清々しい朝だ。何気なく路上に目をやると二羽のスズメが木の実か何かをついばんでいる。まことに爽やかな光景である。

少し近寄ってみると、スズメがついばんでいるのは酔っぱらいの吐いた雑炊のようなゲロであった。

責任者出てこい。
東海道新幹線で東京へ移動中。車中の読書は『未完の「国鉄改革」』。労組と経営側のやり合いが迫力あって面白い。

自ら書いたのではなく口述したのを部下の人たちが書き起こしたものらしい。それゆえ文章に起伏がないというか色気がないのが残念ではあるが、逆に言えばそんな文章でもテーマ次第でこれだけ面白くなるという好例。

日航機に乗りながら『沈まぬ太陽』を読むのと同じ感じですな。
『ザ・コールデスト・ウィンター』の下巻の帯に「すべては歴史にひれ伏す」というようなことが書いてあった。それがちっとも大げさな表現でなかったことが読み終えた今よくわかる。

まだ3月なのに、今年の読書でナンバーワンになりそうな予感がする。あらためて教訓。「本屋で買うかどうか迷ったら、買うこと。(ついでに、服屋で買うかどうか迷ったら、買わないこと)」。出会えて良かった。
「んー。明日の夜明け前とか、もしかしたら夕方くらいになるかもしれんな」
と産科医の先生が言ったのが午後6時くらい。それから1時間するかしないかで妻が痛みで悶絶し始めた。いやちょっとこれは命に関わるんじゃないのかと思って看護婦さんを大急ぎで呼びに行き、看護婦さんは大急ぎで先生を呼びに行き、妻は分娩室に運び込まれ、私は妻の絶叫を聞きながら廊下をうろうろしていた。

午後7時半に分娩室に呼ばれ、それから程なくして娘が誕生した。血にまみれた娘は、10秒か20秒ほど外の世界を警戒するかのように慎重に様子を窺い、それからおもむろに泣いた。妻は全身脱力し、虚ろな目で中空を眺めていた。およそ4年前に初めての娘が生まれたときのことを思い出した。あの時にも心から思ったものだが、また今日あらためて思った。

女性は偉大だ。つくづく女性には敵わない。本当におつかれさま。
そして新しい娘よ、ようこそ外の世界へ。