さよなら実家 | 日記

日記

日々の徒然

物が運び出されると今までそこらじゅうにあった母の形跡が消えた。

 

母が別居を始める時、本当に嬉しそうにこの部屋に立っていたことをふと思い出し、切なくなった。ここは母にとって新しい人生を始めるための希望に満ちたマンションの一室だったのである。

 

こうして慌てて始めた「実家終い」は3日前には想像もしていなかったことであった。生前の母からもそう言われていたが、将来私が一時帰国や移住した時に安心して住める場所として残したい、それは姉も了解しているはずだった。ただ母は私だけに有利な遺言書を作って姉妹の仲違いになってはいけないと何も残さず、自分は相続はいらないと言った姉の言葉を信じていた。それがお葬式での姉夫婦の言葉で話がひっくり返ってしまったのであった。両親が亡くなって肉親が姉と2人だけになった今、争いは絶対に避けたかったので何も聞くことはできなかった。遺産は多くない家の方が揉めるというのも何かわかる気がする。お金は怖い。

 

そんな訳で自身の一時帰国という時間の制約と、お葬式での相続の話の行き違いで急に実家の売却が決まったため、物事が早く進み過ぎて実は心が全くついていけてなかった。だって本当は簡単な片付けと掃除のつもりで実家に入ったのだったから。

 

ところであの世というのは存在するのだろうか。私はここに来てからずっと大きな声で母に話しかけながら作業をしていた。母はまだその辺にいてきっと聞いているはずだと安心感さえあった。ただあの世が無いという可能性もある…参ったなぁ。何も無いなら途端にこの心の行き場に困ってしまう。

ランチを探しながら街を歩き、近所の本屋で「あの世のしくみ」という本を買ってみた。あの世からのメッセージを受けることができるようになったと言う女性の著書である。真偽は不明だがあの世はどうやらあるらしいとの見解に少し心が安らいだ。やはり無になるのは寂しいし怖い。

 

さて不用品回収業社に布団まで持って行かれたので、今夜からまたホテル生活に戻ることになった。部屋が空になった今もまだ本当にこれで良かったのか自信はないが、もう乗り越えるしかないのだ。明日もう一度 最後の掃除をして落ち着いてさよならをすることにしたえーん