「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024年)6月29日(土曜日)
        通巻第8309号   <前日発行>
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< 速報 >
  初のテレビ討論会はトランプが圧勝
   CNN直後の調査でトランプが勝ったが67% vs バイデン33%

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 KADOKAWAがハッカー攻撃でやられたが
  犯行声明のブラックスーツはロシア諜報機関系から派生
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2024年6月8日にKADOKAWAのデータセンターのサーバーがランサムウエアによるサイバー攻撃を受けた。とくに動画配信「ニコニコ動画」ならびにシステムにハッカー攻撃による障害で復旧に一ヶ月以上を要すると発表された。
同月27日になって、犯行声明がロシア系のハッカー新興集団の「ブラック・スーツ」から出され、サイバー攻撃によって同社の事業計画やユーザーなどのデータを盗み取ったとした。

データはあわせて1.5テラバイト。身代金の支払いに応じなければ7月1日にすべてのデータを公開すると脅迫した。一説に身代金は四億円ともいう。

「ブラック・スーツ」の暗躍はロシアのロイヤル集団の分派で、23年5月からその暗躍ぶりが米国で確認された。手口はランサムウエアを使った攻撃で、標的企業や組織のデータを暗号化し、事業を立ちゆかなくさせた上、解除と引き換えに身代金を要求する。北朝鮮の遣り方の大型化である。

 最初の被害が確認されたのはマイクロソフト社で、「ロシア政府が支援するハッカー集団が同社の内部システムに侵入し、顧客の電子メールにアクセスした」とユーザーに通告した。

ついで全米の自動車販売店ネットワークが被害に遭った。
CDK は、自動車販売店で販売やその他の取引に使用されるソフトウェアを製造している。米国内のフォルクスワーゲンのディーラーの約半数とアウディのディーラーの約60%が深刻な影響を受けた。またオペラや音楽祭、演奏会、ミュージカルなどのチケットをオンラインで行っている企業も襲撃を受けた。

ロシアのハッカーは最初はロシア諜報機関が濃厚に関与したとみられるアノニマス集団が有名で、身代金というより政治的な宣伝、フェイク、攪乱情報などが主体だった。
2006年頃にオーブリー・コトルなる人物が創設し、米国の外交工作の邪魔をする意図が濃厚だった。

アノニマスは2010年の「アラブの春」ではエジプトやチュニジア政府のHPを改竄したり、12年には日本のJASRACや裁判所を攻撃した。2015年にはISISを攻撃し、またトルコ政府攻撃、2021年にはミャンマー軍事政権の政府サイトをハッカー攻撃するなど、政治活動の一環だった。

このコトルの「弟子」たちがロシアでファンシーベアなどを創設し、2020年の米国大統領選挙では民主党から多くの機密を盗み出し、この時期には中国の「ムスタングパンダ」なとどいうハッカー集団も出現した。

 ▼政治宣伝から身代金狙いへ

政治宣伝を離れ、身代金要求というビジネスに転換したのがロシアの「ロイヤル集団」で、2023年5月に、そこからスピンオフしたとされる「ブラックスーツ」によって、世界の95の組織のシステムが侵入された。攻撃を受けたのは主に工業製品や教育などの分野のアメリカの政府組織や企業だった。

FBIと米国のサイバーセキュリティ機関CISAは、「ブラックスーツ」はロイヤル集団の亜種であるとし、「ロイヤルに類似したいくつかの特定されたコーディング特性を共有している」と報告した。ロイヤルの身代金要求額は2 億 7500 万ドルを超えた。

ロイヤルは病院や医療機関を標的にしており、ランサムウェア・ギャングと言われた。
FBIは長年、ハッカーの身代金を支払わないよう被害者に勧告してきた。身代金を支払えばさらなるサイバー攻撃が誘発されるからだ。

 現在、ハッカーの標的は多彩で、政治宣伝目的は全体の三分の一、身代金要求のハッカー集団は、エネルギー、発電、通信目、医療機関、運輸などを攻撃目標にしている。中国では民間企業の「アイスン(ISOON)」などにハッカーの機密盗取などを委託していたことも判明した。
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