「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)5月31日(金曜日)
        通巻第8272号  
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 大都会から地方のちいさな街へ、引っ越しブームの行き着く先は
  マサチューセッツ州は歳入が激減、モンタナ州は「新参者」に憤慨
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 アメリカの人口動態の激変は田舎町へ及んだ。
 これまでの移住動機は「物価が安くて自然に囲まれた場所へ」、つぎが「収税の安い州へ」だった。コロナ禍が拍車をかけた。
昨今は「都会の喧噪からのんびりとして田舎へ」となり、いまでは「治安の悪い都会から治安の良い田舎町へ」が合い言葉となった。

 ニューヨーク、シカゴ、ロス、サンフランシスコなどの「聖域」は暴力、窃盗、強盗殺人、フェンタニル、大麻、ホームレス、不法移民など危機的なレベルに達した。万引きは950ドル以下なら逮捕もされない。大都会の中心部は無法地帯となって、サンフランシスコの銀座といわれたショッピング街は半分以上が店を閉じた。ダーティハリーは去った。

現在、アメリカでは大都市からの「避難民」が次々と地方都市、小さな町へ押し寄せた。ロンバードの調査では、住民激減現象は400万人以上の大都市圏に集中している。
パンデミック以前には年間40万人の住民現象レベルだったが、過去3年間で二倍近くなった。

米国の大都市での生活の質は驚くほど酷いものとなった。たとえば、シカゴに住む住民は覆面をした強盗が自宅に侵入した後、警察官が到着するまで何時間も待たなければならなかった。不法移民のテント村が出来ると、従来からいる住民は不安を感じ、引っ越しを考えなければならなくなる。
銃が売れ、射撃場が混雑し、もはや銃規制などと口で入っても実現は不可能である。

移住の動機はもちろん税金も絡んでくる。とくにマサチューセッツ州は 州民が大量流出、歳入が10億ドル減少すると予測される。ボストン大学クエストロム経営大学院の予測では、2030年までに9万6000人以上の住民が州を離れることになるという。

反対に移住先のトップはミシシッピ州だ、
別の国のように生活費が安い。住宅価格が国内で最も安い。だが移住する人が増えれば公共サービスが鈍化し、住宅価格が急騰する。

モンタナ州ボーズマンの住宅価格は平均77 万ドルにまで上昇した。人口僅か5万6000人だった。イエローストーン国立公園や高級スキーリゾート地ビッグスカイに近い。ボーズマンでは賃貸住宅が次々と建ちはじめ、需要が大きいため家賃高騰。モンタナ州住民の多くが「新参者」に憤慨しはじめ、「モンタナは満員」のステッカーが街やクルマに貼られた。
移住先でもあたらしい難題が発生している。

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