「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和六年(2024)1月11日(木曜日)
        通巻第8087号  <前日発行> 
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 これから五年以内に労働市場に重大な混乱が訪れる
  AI導入で職を失うのはホワイトカラー。清掃、運輸、介護には影響なし
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 ゴールドマンサックスの報告書は2023年3月に発表され、労組ばかりか経営者、そしてルーティンワークのホワイトカラー、法務関係、金融ビジネス関係者の衝撃を与えた。
 「世界中に『非凡な高給取り』がおよそ3億人いるが、AI導入により10%以上が不要になる。とくにホワイトカラーの25%から50%は不要だから大量の失業がうまれるだろう」との予測だった。

 たとえば言語開発ソフトのデュオリンゴ社は生成AIでソフトが作成として、10%の社員を解雇した。このようにAIが雇用を奪い、労働組合は緊張状態となる。
 ハリウッドの脚本家組合、俳優組合がストライキに突入、ミシガン州では自動車労組がEVにより雇用激減を懼れストに突入した。脱炭素とかの寝言をいうバイデンを自動車労組が見限った。

 AIが原因というより不況による賃金不払い、突然の解雇が凄まじいのが中国である。
 中国の労働争議件数は、
 2020年  802件
   21  1091
   22   831
   23  1793件
 ト鰻登り、深刻である。

 しかし思い出すことがある。
産業革命がおきた英国で蒸気機関車の驀進する沿線では昔ながらの農民の農作業が行われていた。

産業ロボットがブームになったおり、労組の反対がもっとも激烈だったのはフランスだった。ラインの機械化を遅らせたため、ルノーも、プジョも、シトロエンも次世代自動車の開発に乗り遅れた。フランスへ行かないと仏車を見かけなくなった。

 英国の老舗自動車メーカーは青息吐息、ロールスロイスは銀座とか高級ホテルでしか見かけない。ドイツはVW)フォルクスクワーゲンがシェアを大きく後退させ、ボルボは中国資本傘下となった。これらはAI導入以前のことである。
 ところが日本では塗装ロボット、溶接ロボットなどに「愛称」をつけて共生し、生産性を向上させた。

 運搬、荷揚げ、運輸方面をみても港湾のクレーン、カーゴ・コンテナ規格統一により荷役業務の労働者は激減した。しかしコンテナから荷物を取り出し、仕分けし、トラックに小分けする作業は人手が必要だし、運送トラックは人手不足であり、つまり全行程の一部で労力が不要となっても、ほかの部門は自動化に難があり、職種によっては生き残る。
 日本は炭鉱を全廃したが、炭鉱労働者は新興の自動車産業、部品メーカーやタイヤメーカーに転職した。

繊維産業もアメリカの圧力と工場の近代化で有力メーカーは生き残ったが中小零細は転業した。日本の通産省政策は転業に補助金を出した。

 農業の機械化自動化は耕耘機や収穫、田植え機などの導入で過剰労働のプロセスは合理化されたが、水田への水の供給システムや草むしり、害虫対策では一部だけ自動化がすすんだものの、手作業が多い。そもそも農業の肥料が化学肥料となって、ビタミンの配分が変わり、別の弊害も起きた。

 アルコールの製造、とくに醸造酒の自動化は、攪拌や瓶詰め作業では格段の効率化があるものの、醸造ノウハウは杜氏の仕事である。ロボットが味覚をもつことはない。

 こう見てくるとロボットが特化し需要がまだまだ伸びるのは介護ロボットと、医療分野であることは明白だろう。事務職、製造・組立工、会計士、税理士、通関士は生成AIが代替できる。

電気通信技術者、コンピューター関係、警備システムの導入で警備員も影響を受けるし、ネットで読めるようになった新聞配達の人員は激減の最中、販売店の再編が進んで。無人レジの普及でスーパー店員や、ドローンの登場で宅配便配達員も影響を受けそう。
タクシー・電車・バス運転士は自動運転の区域が増えても大量の失業とはならない。寧ろ運転手が不足している。

要するにパターン化が可能で、単純作業の繰り返しが多いホワイトカラー、弁護士、特許弁理士などは書類作成がAIに取って代わられるが、それ以外の職種にはAIが適用できないとうことである。
AIはビッグデータを分析して現状に即したソフトを作成できるが、創造することはできない。 

「AI失業」の可能性の低い精神科医、外科医、言語聴覚士、助産師、教員など、とくに創造性が求められる職種、精神や感情に関わりのある仕事、教育関連の仕事だ。
中国の予備校、学習塾、家庭教師の大量失業はAIとは無関係である。習近平のおもいつき、ゲームも規則を強化したので、テンセントなどゲームソフト企業は株価下落に見舞われた。
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