人間の土地 / サン=テグジュペリ | mfcs's favorite things

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純粋なる音の繋がりは、人にどこまで感動を与えることができるのでしょう... とりあえず私の場合はこんな感じです。

堀口大學 訳(昭和三十年 発行、平成十年 改版)

以前紹介した、伊坂幸太郎さんの「砂漠」で、"真の贅沢というもの、それは人間関係の贅沢だ" という引用の元が本書だということで、読んでみました。

8編から構成される随筆集、デグジュペリの体験に基づいたエッセイ集ということのようですが、特にリビア砂漠に不時着遭難した3日間を綴った「砂漠のまん中で」は、想像を絶する恐ろしい体験と奇跡の生還について記されておりまして、読んでいる最中、これは創作物語であってくれ... と願わずにはいられませんでした。それだけ文章に引き込まれた、ということでしょうか。絶望的な渇きの先にあった、奇跡。一部引用してみます。

 水よ、そなたには、味も、色も、風味もない、そなたを定義することはできない、人はただ、そなたを知らずに、そなたを味わう。そなたは生命に必要なのではない、そなたが生命なのだ。

また「砂漠で」という話では、本当の名前を奪われ長い間奴隷として生きてきた老師が、テグジュペリらの施しによって自由の身となり、帰路の途中で立ち寄った街で、施しの全てを、その街の当然見知らぬ子供達にわけあたえてしまう、というエピソード。そのときの老師の心境について、以下に引用してみます。

 してみれば、こんな金が何だ...。そして彼は感じた、深い飢えのように、人間たちの中の一人の人間、人間たちと関連のある一人の人間になりたいという欲望を。

パイロットであり、冒険家であり、小説家であったサン=テグジュペリ。様々な経験を、特に極限的な状況(環境)下における体験を経て、人間の(生命の)本質を探求する姿勢に、心を揺すられました。

人間の土地 (新潮文庫)/サン=テグジュペリ

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ちなみに、私が買い求めた文庫本のカバー挿画は、あの宮崎駿さんによって描かれたものであり、訳者あとがきの、さらに後に「空のいけにえ」というタイトルで短い挿話も収録されています。アニメーターにとどまらずクリエイターとしての宮崎さんの想いを垣間見ることができる内容です。