東京バレエ団「ドン・キホーテ」感想② | 慧琳の鑑賞眼

慧琳の鑑賞眼

舞台芸術の作者、演者の思いを受け取れるように鑑賞眼を磨いています。分野横断的に書いています。詳細はアイコンクリックの後、プロフィール、メッセージボード、パソコンならばブログトップをどうぞ。

 ここからはひたすら推しについて語る会ですブルーハート名前を知っている人だけ双眼鏡で追っていますので大変偏った見方をしておりますラブラブ
 
 冒頭では怒る人がたくさん出てきます。まずはキトリ。髭剃りが早く終わらないかと怒っているのでしょうか。前回のドンキでは椅子の上からバジルに抱えて下ろしてもらう流れになっていたので今回は変更されているのでしょうね。そしてバジル。いつまでドン・キホーテにかまっているのだということですね。それから近所の女性。サンチョ・パンサが食べ物を盗んだので怒っています。
 
 近所の女性たちはその後次々に現れ、舞台上を掃除します。おそらくドン・キホーテの家の掃除をしているのでしょうか。旅に出るからには立つ鳥跡を濁さず、なのかもしれません。
 
 そんなこんなでガチャガチャしていた冒頭ですが(笑)、幕が開けると港町、バルセロナ。何回見てもプチオムライス
に見えてしまう、スカートの1枚目が黄色地、内側がオレンジのチュールの友人たちが登場。23日は安定の三雲&二瓶ペア。いつぞやのイベントでこのお2人は同期、そしてバレエ団の中でも古株だと聞いて以来勝手に先輩と呼んでいます。グランパでは先輩たちのふわっと宙に浮くジャンプが見物。回数を重ねても高さを維持できるのは素晴らしい。24日の加藤&中川ペア、アラベスクで止まる音の長さまでがピタッと揃っていて素晴らしかったです。25日長谷川&中沢ペアはイマイチ。海外のバレエ団並みに二人の主張が食い違っていました。かと思ったらバリエーションでは急に存在感がなくなったりして物足りませんでした。
 
 そして、23日は上野さんの登場。衣装裁きが他のキャストに比べてどうしてもバサバサして見えてしまうのはなぜか考えていたのですが、上野さんはダイナミックに踊られるからこそジャンプや回転の飛距離が大きくて衣装がついてこないのかと。その点、涌田さんや秋山さんは悪く言うと身長が小さく踊りがまとまっているので衣装はさばけるのかもしれません。
 
 キトリが上体を大きくのけぞらせてポーズを取るところ、上野さんは爪先が本当に美しく、見とれてしまいます。また、面白いなと思ったのはドゥルシネアのバリエーションでのバロネ。軸のトウで進むほうに意識を向けて動脚はクペから曲げ伸ばしするのが普通ですが、きちんとアンドゥオールの線を描いている。しかもパッセの位置から。空間の取り方も大きいのだと分かりました。上野さんの素晴らしさを改めて実感しました。
 
 そうそう、ワシリーエフ版って、第1幕のキトリはカスタネットじゃなくてタンバリンなのです。しかも、バジルから渡される、踊りのバトン替わり。振付もピケ・アンドゥオールから右脚を伸ばしてまたパッセに戻す、かなり難しいことをやっています。
 
 バジル柄本さんが大柄で気のよさそうな男子だとしたらエスパーダ秋元さんは細い伊達男。カルメンならばエスカミーリョだよなあと。エスカミーリョならば歌でなんとも大人なセリフが出てくるわけですが、バレエだとバジルとの差をつけるのが難しそうです。
 
 「中国の不思議な役人」で名前を知って以来気になる大塚さんですが、闘牛士でもジプシーでもひときわ溌溂としていて魅了されました。今後が楽しみー
 
 そして中島映理子さん。夢のシーンで大変長い腕の影が見えて私は目が覚めました。「ドリアードの女王」は全幕あるあるで、なぜかつなぎの音楽長くて回転少なすぎる振付。なぜ??全体のシーンでは中島さんのグランパドシャの滞空時間が長くて素晴らしかったです。上野さんと同時に踊るしプレッシャーもあったかもしれないですね。。
 
 夢のシーン、コールドもソリストも、上半身を大きく、腕を長く使うので余すところなくバレリーナの踊りを楽しめて私は大満足です。そして新国のようにおじいさんが徘徊したりしないで後ろでしっかり見守るスタイル。そうしてくれ(笑)
 
 平木さんは3人のドリアード。26日の「ジプシーの娘」役、見たかったわー残念。平木さんは「白鳥」でも「スペイン」の役をされていたし、キャラクテールにキャスティングされることが多いみたいです。
 
 足立さん、脚がちょっとムチムチしているのが気になりますが、可憐さはどのキャストよりも印象に残りました。上野さんとアラベスクキープの音が合わせられたのも良い。その点、中島さんは常に上野さんの前にいるから上野さんの長すぎるバランスが見えていなくて、先に中島さんがガクっと落ちたように見えてしまうの、大変難しい・・・泣
 
 バジル柄本さん、回転苦手なんだよね、別にバレエって回転だけじゃないもんねとは思いますが、単純にバジルのバリエーションで回転が苦手だと音が余ってますよ(笑)
 
 まとまりの良さで言うと涌田さんのキトリのバリエーションを見ていて、パッセでエポールマンを使っていたので、あれが正解なのか、正面を向いてやったらバランシンみたいになるもんねと発見がありました。
 
 涌田さんはお教室の〇先生のようにキリっと作りすぎるキトリで、あれはあれですごいとは思うのですが、バジル秋元さんがキリっとするわけではないのでなんか浮いているなと思いました。また、キトリとはうらはらにドゥルシネア姫は存在感がなくなりドリアード女王政本さんとの身長差ばかりに気を取られてしまいました。そういえばニューイヤーバレエだったかしら、ディアナとアクティオンの時も消化不良のようだったなあと思い出すと、役柄のはっきりしないバリエーションは苦手なのかなと思ってしまいました。
 
 反対に秋山さんは、前回デビューの際の課題だった脚裁きのドサバサ感、爪先の意識抜けがきちんと洗練されており素晴らしいと思いました。それだけでなくダイナミックさが加わり、1幕での可憐さと2幕での女王のような圧倒的な存在感と演じ分けができていたのも素晴らしいと思いました。
 
 宮川さん、エスパーダは緊張していたのかしら、ちょっと動きが固かったかも。バルでの牛の角を表現して両腕を前に突き出すソロの部分はシュッとして粋な感じでよかったです。反対にバジル、特に狂言自殺のところで、倒れる前に一度マントを振り返って確認するコミカルさで会場の笑いを誘っていて面白かったです。グラン・パ・ド・ドゥも秋山さんのリフトがしっかり決まっていて安定のサポート、そして高すぎるグラン・ジュテでの舞台一周など圧巻の技術を難なく見せてくれました。
 
 秋元さんはエスパーダとバジルがかぶっているように見えてしまいました。鷹揚な柄本バジルと比べるとシリアスな印象を受けましたね。ただ、マントを脱ぐ際に彼だけマジックテープの音が響かなかったのは良いです(笑)狂言自殺のシーンは音が止まるので、びりっという音がやけに響いた柄本さんと宮川さんでした。
  
 樋口さんも名前を覚えたのでガマーシュに注目。かわいい演技でよかったです。狂言自殺のシーンでもガマーシュに目を奪われていたので結婚了承のシーンを見逃しました。Lブロックから見ると正面ではなくて脇に目が行きやすいのですね、なんでだろう。反対にRブロックから見ると自然に目が正面に向きます。
 
 ブラウリオさん、お顔立ちも相まって、ドン・キホーテはかなりの風格がありました。闘牛士だとシャープに動けていないなと思いました。
 
 闘牛士といえば、初日の生方さん大塚さん和田さんが並んでいる列がとても揃っていました。優秀です。
 
 広場、バルのシーンでは後ろにいる人にもそれぞれ会話があって、コミカルに演技をしていました。舞台の登場人物1人1人に人生があって皆さん生き生きとされていました。演じる側もやはり楽しいのだと思います。お怪我のせいで今回は踊らず広場の後ろに立っている役だった榊さん、「こんなに楽しくて良いのかしら」とインスタに投稿されていました。
 
 今回は井田さんの指揮が良かったのも、公演に華を添えました。ダンサーのポーズを決める時にしっかりと合っていて、トレードミュージックの金管とパーカッションのドコドコブカブカが抑えられていましたね。指揮者の演奏も変わるんですね、驚きです。おかげで音楽がずっと頭の中に残っています。
 
 2幕の男性陣の衣装は、ナポリとかぶっているじゃないかというトルコブルーに帽子なのですが、もうきれいだから何でもOKピンク薔薇