⑥金曜日 | 身から出た素描

⑥金曜日

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日曜日に自分の生が終わる、ということにしている男は、週末の中に埋もれていた。

何かをやり遂げてもいない1週間。生の充実も全くなく、自分の無力感ばかりが感じられた。

今日と明日しかない。何をしたらいい?

自分が関わってきた人たちには会った。なんとなく行きたいと思っていた富士山も間近で見ることができた。自分には文章を書くことができないと気付かされたが、この企画のこともノートに記した。

よく晴れた日だ。
布団から出れずにぼんやりしていた。
特に行きたいところも、やりたいことも思い浮かばない。自発性がないことにも気付かされた。

仕事を辞めたことには後悔はないが、次にやりたい仕事がないのは困りものだ。

どこで間違えたのかなぁ、もっとちゃんとした人間だと思っていたけれど。

生きていくことはできるが面白味はない。自分には死ぬ勇気はあるのだろうか。

男はもそもそと布団を出た。
ゆっくり風呂に入り、きれいな服を着た。支度が整う頃にはもう夕方になっていた。

「トんでみよう」

男は電車に乗って目当てのビルに向かった。