中国人を捕らえて人為的凍傷実験、細菌感染実験などの人体実験を行った731部隊、治安維持法のでっち上げで逮捕勾留、拷問で有罪判決を下した横浜事件、いずれも、当時の医学者や裁判官が行ったことです。
人体実験の材料とされた中国人は「マルタ」と呼ばれていました。ただの実験材料・・・だから丸太。とんでもない話ですが、当時の多くの一流の医者もこの731部隊に関わっていたとのことです。
そして、思想弾圧立法の治安維持法の下で、とてつもない拷問を行って死者まで出した特高刑事たち、そして、それをわかっていながら有罪判決を下した裁判官たち・・・。
「仕方なかったんだ、だって上からの命令だったから、それが法律だったから」・・・ということなのでしょうか。だったら、本当に仕方ないのかな。
敗戦時に、731部隊はあわててハルピンの施設を破壊し実験対象の死体を焼却し、裁判所は中庭で判決その他の横浜事件の訴訟資料を燃やしました。
つまり、医学者も裁判官も、本当にやるべきこと、善である、誇りをもって行っている、とは信じていなかった、つまり、人間を実験材料にするなんておかしい、拷問をして虚偽の自白をえて有罪にするなんてデタラメだ、ということは当時の医学者も裁判官らもわかっていたのです。わかっていながら、粛々と行っていたということ・・・だから、自分の責任を隠蔽するために証拠は燃やしちゃおうということ・・・惨たらしく醜いことです。
こんなことは二度と起こらないでしょうか。「共謀罪」法も「安保法」も、いまや合法であり、裁判官は、その法に従うのではないでしょうか。武器輸出企業のサラリーマンは粛々と会社の業務をこなしているのではないでしょうか。
「だって法律だよ、仕方ないよ」「だってそれが自分の仕事だから」
結局は、同じことが繰り返されるのでは? 私たちは、目の前の「仕事」に追われ、「仕事」のせいにして、「ちょっと変だな」と思いつつ、悪を見過ごし、鈍感になって(なったふり?)、善悪を考えずに、ともかく「仕事」を全うします。
まあ、どうせ、今も昔も、悪の証拠は失くしてしまうわけだから・・・。政府から自己の責任に関わる文書が出てこないのは今も昔も一緒。
恐ろしいのは、どう考えても再び、証拠がなければ責任を問われないし、何をやってもいい、その時、その時のタスクをこなせばいい、という発想が世の中の「常識」になりつつあって、善悪の判断を自分の責任で行うなんて人間は、どんどんマイナーな存在になりつつあるような気がする、という点です。
善悪より損得・・・とはいわないまでも、命令か否か。どうせ、最後は証拠を焼却隠滅してしまえばいいし。「よくわかんないし、難しいことは」
お前はどうなのか?って? そうですよね、自分はどうか。検索したり、エライ人にお伺いしたりしないで、自分で判断しているかって?とりわけ「善悪」を。・・・どうかなあ・・・。