日雇い弁護士? 「司法改革」=弁護士激増政策に反対したワケ | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 日弁連の会員向け配布物として『自由と正義』(いいタイトルですね!)がありますが、その今月号に、弁護士としてはなかなかショッキングな記事があります。2弁の吉川精一弁護士の寄稿された「危機に立つアメリカの弁護士」という記事です。

 

 タイトルは、アメリカの弁護士の危機、ですが、内容は、その方向を政策的に目指した日本の弁護士の近未来=明日を予見させるものです。私たち、一部の有志は、15年以上前、日弁連が大きく「司法改革」推進に舵を切った頃から、この「近未来」を恐れ、反対し、反対を呼びかけてきました。

 

 まず、記事の内容を抜粋して紹介します。

 

「大事務所と町弁護士との二極化と格差は1980年代から現在にかけて一層拡大し、大事務所が経済的に一層反映してきているのに対し、町弁護士は衰退の方向にある。例えば、事務所規模が上位100位までの大事務所の売上総額は1986年に70億ドルだったものが2011年には710億ドルと10倍に・・・これに対し、個人経営(ソロ)弁護士の平均収入は2010年において46500ドル(510万円)であり、これは1988年から34%減少したとされる。」

 

「大事務所における弁護士の階層化は、エクイティ・パートナーと他の弁護士との間の収入格差だけでなく、一部論者が弁護士の『プロレタリアート化』と呼ぶ現象を生み出している。」

 

「最近、『テンポラリー・ローヤー』と呼ばれる弁護士の急増という現象がある。彼らは自分の事務所も雇用主もなく、多くは弁護士派遣会社に登録しておき、大事務所や企業が大規模訴訟や企業買収などの案件で、主として文書精査を行う弁護士を臨時に必要とするようになった場合に派遣される弁護士たちで、『日雇い弁護士』と呼ぶべき弁護士たちである。・・・一般的に1時間20ドル(2200円)から35ドル(3850円)くらい低報酬で働いているが、彼らの多くは、弁護士のスキルを必要としない、自分は単なる歯車にすぎない仕事をさせられている、みじめで搾取されている、などと感じている。」

 

「現在アメリカの弁護士数は120万人に達し、『弁護士バブル』といわれているのにかかわらず、多しの市民は弁護士のサービスに手が届いていない。まさに『金のある人には極端な弁護士過剰、金のない人には極端な弁護し不足』の状況なのである。・・・かくして、今やアメリカにおける弁護士サービスは大きく企業向けサービスに偏っている。・・・2013年の調査によれば、弁護士が社会に多く貢献していると考えている市民は18%にすぎ」ない。

 

「ジョン・ホプキンス大学の調査によれば、全弁護士の20%がうつ病にかかった経験があり、これは他の職業の3.5倍の高さであった。・・・弁護士の死亡原因中、自殺は3番目に多く・・・」

 

「このような弁護士過剰のため、労働統計局の資料によれば、現在50万人の弁護士が弁護士資格の必要とする職に就いていない。・・・しかも、ロースクール卒業生の85%は平均で10万ドルの借金を抱え、困窮状態にあるという。」

 

 私たちの「司法改革」反対の声は弁護士会の中でもこれまで主流に至りませんでした。今でも、「司法改革は(見通しを誤り)失敗した」という人もいます。そうではなくて、司法改革は狙い通りなのです。ここに描かれているアメリカの現実を日本の「近未来」として予測することは、政府も日弁連も、そして私たちも可能だったのです。

 

 だからこそ、政府は推進し、それに迎合した日弁連執行部は容認し、そして、私たち「憲法と人権の日弁連をめざす会」は何度も会長選挙にトライするなどして反対し続けてきたし、これからも反対するのです。

    多くの皆さんに理解してもらいたいと思います。