今日は、20世紀初頭のショービジネスにおいて数々のヒット曲を作曲した作曲家ジェローム・カーンの伝記映画「雲流るるはてに」です。

この映画のタイトルはなぜかいくつもあります。原題をそのままカタカナ表記にした「ティル・ザ・クラウズ・ロール・バイ」。そのほか、「雲晴れるまで」、「雲流るるままに」、そしてこのブログで採用している「雲流るるはてに」などです。

劇場未公開であり、テレビ放送時や、ビデオ発売時などについたタイトルのようです。

どれが正しいというものではなく、ここでは前から自分の中で使っている「雲流るるはてに」にしました。



1946年 アメリカ
監督:リチャード・ウォーフ
出演:ロバート・ウォーカー、ヴァン・ヘフリン、ドロシー・パトリック、ルシル・ブレマー、ジュディ・ガーランド、ジューン・アリスン、キャスリン・グレイスン、アンジェラ・ランズベリー、リナ・ホーン、ヴァージニア・オブライエン、ドロシー・パトリック、トニー・マーティン、フランク・シナトラ

雲流るるはてに


作曲家ジェローム・カーンの伝記映画で、カーンが編曲家のジム・ヘスラーと出会い、数々のヒット曲を作曲、オスカー・ハマースタイン二世とともに「ショウ・ボート」を製作するまでが描かれます。

映画は、1927年12月27日の舞台ミュージカル「ショウ・ボート」の幕開けで始まります。

「ショウ・ボート」のシーンは18分にも及びます。ここで人種差別のため船を降りなければならなくなる黒人女性を演じるのがリナ・ホーン。1951年版の「ショウ・ボート」でも、当初はリナ・ホーンが演じる予定でしたが、ホーンがアフリカ系女性だったためエヴァ・ガードナーに代えられてしまったといういきさつがあります。

そういう意味では、ホーンが演じる「ショウ・ボート」という貴重な映像でもありますね。


舞台が終了したあと、ジェローム・カーンはかつて苦楽をともにした編曲家ジム・ヘスラー(ヴァン・ヘフリン)が暮らした家へと向かいながら昔を回想します。



20世紀初頭のアメリカではイギリス人作曲家ばかりがもてはやされアメリカ人の出る幕はなかった。編曲家のジム・ヘスラーと出会ったカーンは、ヘスラーの協力のもと作曲活動を行うものの、なかなか目が出なかった。そのうちヘスラーはイギリスに移住する。

やがてカーンも渡英し、ブランコを舞台に取り入れたミュージカルを作曲するとこれが大成功を収める。

その後ブロードウェイに戻ったカーンは次々とヒットを連発するようになる。

しかしヘスラーが亡くなると、カーンは創作意欲をなくしてしまう。そんなカーンのもとにオスカー・ハマースタイン二世が新しい原作を持って訪れる。「ショウ・ボート」だった。



出演者の豪華なこと。ジェローム・カーンにロバート・ウォーカー、妻エヴァにドロシー・パトリック、ヘスラーにヴァン・ヘフリン、その娘サリーにルシル・ブレマー、当時のスターであるマリリン・ミラーにジュディ・ガーランド。

さらに数々のミュージカルショーへの出演者としてジューン・アリスン、キャスリン・グレイスン、トニー・マーティン、ダイナ・ショア、フランク・シナトラ、シド・チャリシー、リナ・ホーン、アンジェラ・ランズベリー、ガワー・チャンピオンときては涙が出ます。

ハリウッドに進出したジェローム・カーン夫妻が列車を降りるときにファンにサインをしている女性がエスター・ウィリアムズ。

ラストはシナトラの"オールマン・リバー"。豪華絢爛な舞台の上での熱唱です。ジェローム・カーンのミュージックビデオといった趣の映画ですがドラマの部分もしっかり描かれています。

ちなみにこの映画でジュディ・ガーランドが演じたマリリン・ミラーの伝記映画としては、1949年に製作されたジューン・ヘイヴァー主演の「虹の女王」があります。



この映画で使われている名曲をいくつかご紹介します。

まずは、"ティル・ザ・クラウズ・ロール・バイ"。

原題の「ティル・ザ・クラウズ・ロール・バイ」は、ジェローム・カーンが楽曲を提供したミュージカル「オー・ボーイ」で歌われた曲のタイトルからとられたものです。

この映画では、ジューン・アリスンがレイ・マクドナルドとともに雨の中を歌い踊ります。曲はまったく異なりますが、「雨に唄えば」の"Singin' in the Rain"と似たような楽しさがあります。
超オススメのシーンです・・・"ティル・ザ・クラウズ・ロール・バイ"


ジューン・アリスンはあと2曲"リーヴ・イット・トゥ・ジェーン"&"クレオパトラー"


ジュディ・ガーランドの歌う"フー"


リナ・ホーンが演じる「ショウ・ボート」の一シーンから・・・"キャント・ヘルプ・ラヴィング・ザット・マン"


アンジェラ・ランズベリーが歌っています・・・"ハウ・ドゥ・ユー・ライク・トゥ・スプーン・ウィズ・ミー"


シド・チャリシーとガワー・チャンピオンが踊る"スモーク・ゲッツ・イン・ユア・アイズ"(煙が目にしみる)・・・ミュージカル「ロバータ」で使われた曲です。フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが出演した「ロバータ」(1935)ではアイリーン・ダンが歌っています。


フランク・シナトラの歌う"オールマン・リバー"


時間のない方はこれだけでも。。予告編




この当時の映画にはエンドクレジットがなく、使用曲を知るにはオープニングクレジットに表示されればそこから、表示されなければ映画の中からわかる範囲で集めるしかありません。

予告編によると21曲が使用されているとありますが、私が映画を観ながら拾い集め、ネットを活用しながら確認すると・・・

"ティル・ザ・クラウズ・ロール・バイ"・・・ジューン・アリスン、レイ・マクドナルド
"リーヴ・イット・トゥ・ジェーン"・・・ジューン・アリスン
"クレオパトラー"・・・ジューン・アリスン
"フー"・・・ジュディ・ガーランド、リハーサルのときだけルシル・ブレマーが少し歌います
"ルック・フォー・ザ・シルバー・ライニング"・・・ジュディ・ガーランド
"サニー"・・・ジュディ・ガーランド
"アイ・ウォント・ダンス"・・・ルシル・ブレマー、ヴァン・ジョンソン
"スモーク・ゲッツ・イン・ユア・アイズ"(煙が目にしみる)・・・シド・チャリシー、ガワー・チャンピオンによるダンス
"ザ・ラスト・タイム・アイ・ソー・パリ"(思い出のパリ)・・・ダイナ・ショア
"ランド・ホエア・ザ・グッド・ソングス・ゴー"・・・ルシル・ブレマー
"シー・ディドゥント・セイ・イエス"・・・リン・ワイルド、リー・ワイルド
"イエスタデイズ"・・・MGMスタジオ・コーラス
"ハウ・ドゥ・ユー・ライク・トゥ・スプーン・ウィズ・ミー"・・・アンジェラ・ランズベリー
"キャント・ヘルプ・ラヴィング・ザット・マン"・・・リナ・ホーン
"ホワイ・ワズ・アイ・ボーン"(何故生まれた)・・・リナ・ホーン
"ロング・アゴー・アンド・ファーラウェイ"・・・キャスリン・グレイスン
"ファイン・ロマンス"・・・ヴァージニア・オブライエン
"オール・ザ・シングス・ユー・アー"・・・トニー・マーティン
"メイク・ビリーヴ"・・・キャスリン・グレイスン、トニー・マーティン
"ライフ・アポン・ザ・ウィキッド・ステージ"・・・ヴァージニア・オブライエン
"オール・マン・リバー"・・・フィナーレはフランク・シナトラ、オープニングの「ショウ・ボート」で歌っているのはカレブ・ピーターソン

ぴったり21曲でした。





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