風音の住んでいる賃貸マンション ソワサントは、三島二日町駅から少し歩いたところにあり、住人は三島駅近隣に有る大学等の女子学生やOL,フリーターだ。
別に女性専用マンションと言う訳ではないが、8部屋中6部屋の住人が女性で、7部屋目が、大家の娘である、美弥子の部屋だ。最後の一部屋は現在リフォーム中なのだ。
美弥子は両親が海外に移住してしまったので、両親が建てたマンションの管理で生計を立てている。
部屋が埋まらなかった時期もあり、非常に苦労した事もあったが,住人に学生が多い事も有り、宅配の荷物を預かって、メールでいつでも渡せるようにしたり、屋根つきのバイク・自転車置き場を,道路から死角にならない位置に移設し、且つコンクリを打つ時にアンカーを埋め込んで盗難対策をしたり色々と試行錯誤した結果、安心して住める賃貸マンションとして最近は入居率も安定している。
冷凍冷蔵庫・乾燥機付き洗濯機も部屋に備え付けにして、初期費用を軽減できるようにしているが、そういった物のメンテナンスや工事の業者を安く紹介してくれたのが礼司だ。
風音も美弥子から礼司を紹介され、パソコンの設置や家具の配置換えの時に手を借りたことが有る。
ロフトがついている部屋の天井が高いので天井の電球交換にも駆けつけてくれた事もあったし、マジェスティでは運べない、大きな荷物の買い物の際に車を出してくれた事もある。
そういう事からか、礼司はこのマンションの守護神とも言われている。
風音のマジェスティの隣には、台湾からの留学生 董琇瑛(たん しゅうえい)のマジェスティ125が止まっている。
シート下のスペースが小さい子マジェだが、琇瑛は台湾に居た時から乗り慣れていたので敢えて子マジェに乗っているらしい。その代りリアキャリアにボックスを装着して、容量を稼いでいる。
琇瑛の子マジェの隣が、フリーターの葵のアドレス110だ。
葵が何故2ストのスクーターに乗っているかは知らないが、本人曰く「大根もゴボウも折らずにシート下に収まるからこの子を選んだ。」との事だ。
夜になると、近隣のスーパーを回り開店前のお買い得品を買い集めて、料理を作っては、風音や琇瑛にもお裾分けしてくれる。
不思議なのは、葵と礼司の関係の件だ。別に疚しいというわけではないが、兄妹みたいに仲が良い。
普段、大人しい葵が子猫の様に甘えてみたり、礼司が体調を崩した時に、葵がお粥や冷えピタを持って夜中に飛んで行ったり・・・。
それに、以前葵が友人に裏切られ、引きこもっていた時期に礼司の所でリハビリし、戻ってきた事もあった。あの時は、風音達も葵の部屋に貯まったゴミの片付けや洗濯物の一部を手分けして洗ったりしたのを思い出した。
部屋に戻った風音は、冷蔵庫の中をチェックする。
この後、葵と一緒に値引き品の買い出しに行くのだ。
葵は、近隣のスーパーの情報に詳しく、各お店の発注担当者の癖も把握しているのだ。
その為、どの時間帯に値引きシールが貼られるか、どんな商品が残りやすいかを考えて買い物し、独り暮らしには多すぎる分量は、周りで分け合うのだ。
夜の買い出しに、荷物の入るマジェスティは重宝するが、街中をすいすい走る葵のアドレスの機動力には驚かされる。
ちなみに、二人で買い出しに行く場合、必然的に保冷の必要な商品は風音のマジェスティに積むことになる。