又 涌出品(ゆじゅっぽん)の中に弥勒(みろく)疑って云(い)はく「如来 太子(たいし)たりし時 釈(しゃく)の宮を出(い)でて伽耶城(がやじょう)を去ること遠からず、乃至(ないし)四十余年(しじゅうよねん)を過ぐ」已上(いじょう)。仏 答へて云はく「一切世間の天 人 及び阿修羅は 皆 今の釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)は釈氏の宮を出でて伽耶城を去ること遠からずして三菩提(さん ぼだい)を得たりと謂(おも)へり、我(われ)実に成仏してより以来(このかた)」已上。我実成仏(がじつじょうぶつ)とは寿量品已前(いぜん)を未顕真実と云ふに非(あら)ずや。是(こ)の故(ゆえ)に記(き、[細雪注・妙楽大師 著の『法華文句記』のこと])の九に云はく「昔 七方便より誠諦(じょうたい)に至るまでは七方便の権(ごん)と言ふは且(しばら)く昔の権に寄(き)す。若(も)し果門に対すれば権実(ごんじつ)倶(とも)に是(これ)随他意(ずいたい)なり」已上。此(こ)の釈は明らかに知んぬ、迹門をも尚(なお)随他意と云ふなり。
(平成新編0179・御書全集0422~0423・正宗聖典----・昭和新定[1]0301・昭和定本[1]0143)
[正元01(1259)年(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]