五常(ごじょう)は即(すなわ)ち五戒なる事。仁(じん)と云(い)ふは人を憐(あわ)れみ、生(しょう)を慈(いつく)しみ、物を育(はぐ)くむ心なり。義と云ふは事の謂(いわ)れを違(たが)へず、邪(よこしま)なる事をな(作)さず、万事(ばんじ)に理(ことわり)を失はざる是(これ)なり。礼と云ふは父を敬(うやま)ひ、母を敬ひ、天道仏神を貴び、ないがし(蔑)ろにせざるを云ふなり。智と云ふは事の有り様をよく知りて、善事悪事を弁(わきま)へ、作(な)すまじき事をなさず、作すべき事をなす是なり。信と云ふは事に於(おい)て誠を致(いた)し、僻事(ひがごと)をなさず、心の底に思ひ解くる是なり。又(また)仁は不殺生戒(ふせっしょうかい)、物を憐れむ故(ゆえ)に物の命を断(た)たざるなり。義は不偸盗戒(ふちゅうとうかい)、万(よろず)の理を失はざる故に、人の物を主(あるじ)に知らせずして我が物とせず、又 押しても取らざるなり。礼は不邪淫戒(ふじゃいんかい)、淫は必ず礼を破る。愛心あれば さる(左有)まじき人なれども、邪(よこしま)なる振る舞ひをなす。是を守れば上下濫(みだ)れず、行法も たゞ(正)しきなり。智は不妄語戒(ふもうごかい)、物の有り様を知りぬれば妄語せず。信は不飲酒戒(ふおんじゅかい)、心 狂乱せず、即ち信あるなり。酒は人の心を乱す故(ゆえ)なり。
(平成新編0018~0019・御書全集ーーーー・正宗聖典----・昭和新定[1]0025~0026・昭和定本[3]1944~1945)
[寛元01(1243)年(佐前)]
[真跡、古写本・無]
[※sasameyuki※]