私とまーさんが出会ったのは、27年ほど前。

その、出会う直前に、まーさんのおじいさんは亡くなった。

 

幼いころに父親を亡くしたまーさんの父親代わりに

なって、とてもとてもまーさんを愛しんで育ててくれた人。

 

その名も、すぎやん。

 

すぎやんのお仕事は解体業で、その昔は何人も人を雇い

羽振りがよかったという。

今も近所でまーさんの年代の頃までの人なら、知らない人も

いないくらい地域に貢献された人らしく、嫁いだころは本当に

近所のお店の人なんかには、あのすぎやんのまごならと、

とてもよくしていただいた。

 

そのすぎやん、職種が職種だからなのか、当時この職種の

人は大体背中に大きな彫り物をしていたということで、

すぎやんも御多分に漏れず、背中から右腕にかけて、大きな

鯉の滝登りの彫り物があったそうだ。

(ただし、笑っちゃうことに、その彫り物、掘ってもらってる最中に

痛みに耐えられなかったらしく、途中で帰って来たとの事)

 

 

ある夏休み。

すぎやんはまーさんとその友達数人を連れて泳ぎに連れて

言ってくれると言い出した。

まーさんも友達も大喜びで彼の後に続いた。

 

電車に乗って、乗り換えて、ケーブルカーに乗って、リフトに

乗って・・・・・・そう、どう見ても、そこは山の中。

プールでもなければ海でもない。

 

「じいちゃん、どこにいくんや!」

「もうちょっとや!」

 

と、幾度となく問い詰める孫と友達をさらっとかわし、

すぎやんはどんどん歩いていく。

不審に思いながらもついていくけれど、道はどんどん山の中に

入って行き、海は勿論のこと、川ですら見当たらない。

 

そして、一行はとあるお寺についた。

 

まーさんたちは怒った。

 

「じいちゃん!こんなん泳げるとこなんかないやんか!

海に行くって言ったやないか!!」

 

すぎやんはしれっと指さして答えた。

 

「そこにある。好きなだけ入って来い」

 

指さした先にあるのは、こじんまりとした滝。

参拝に訪れた人たちが白装束に着替えて滝に打たれ、

念仏を唱えていた。

 

当然まーさん猛反発。

 

「これのどこが海やねん!」

 

すぎやん曰く

 

「変わりはないやないか」

 

まーさん更に追撃。

 

「ほんなら魚はどこにおるねん!魚も泳いでへんやんか!」

 

「魚ならここにおる」

 

すぎやん、しれっと自分の背中の彫り物を指さして見せたとさ。

 

 

 

 

お後がよろしいようで・・・・・・。