「ところで」

森田が言った。

「神谷さんにとって、調子がいいって、どんな状態ですか?」

「調子がいい?」

「はい」

神谷は少し考えた。

「朝、すっと起きられる」

「それだけ?」

「頭がぼんやりしてない」

「なるほど」

「身体が重くない」

森田が頷く。

「じゃあ、調子が悪いときは?」

「朝から疲れてる」

「ありますね」

「何となくやる気も出ない」

「あります」

「肩も重い」

「それもあります」

神谷が笑った。

「お前、全部あるじゃないか」

「神谷さんもでしょ」

二人は笑った。

森田が続けた。

「でも、考えてみると変ですよね」

「何が?」

「調子がいい日と悪い日があるのに、その理由をちゃんと考えたことがない」

神谷は黙った。

「昨日は何を食べたか」

「何時に寝たか」

「どのくらい飲んだか」

「どのくらい動いたか」

森田が指を折っていく。

「そういうのを記録したら、何か分かるかもしれませんね」

神谷が笑った。

「お前、本気で研究するつもりだな」

「せっかく始めたんですから」

「何のために?」

森田は少し考えた。

「……元気でいるため?」

神谷は笑わなかった。

「それ、大事だな」

森田も頷いた。

二人は、しばらく黙っていた。

そして神谷が言った。

「もしかするとさ」

「はい」

「俺たちにとって一番大事なのって、そこなのかもしれないな」

「そこ?」

神谷は自分の胸を軽く叩いた。

「元気でいられること」

森田は、静かに頷いた。