現地事情に詳しく、スペイン語が堪能な在日メキシコ大使館の元職員による講座

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メキシコは日本にとって有望な投資先であることに変わりない

 

メキシコ人の好きな自虐ネタに、「メキシコは天国から余りに遠く、米国に余りに近い」というのがあります。隣国の経済大国の米国と3,000km以上にわたり国境を接して経済的に貧しいメキシコは、貿易相手国として米国に依存しすぎています。生産拠点を消費地の近隣国に移転させるというニアショアリングという最近の流れの中で、米国の製造輸出拠点としてメキシコの重要性が再認識されているのは皮肉な現象です。

 

2022年時点での日本企業の海外進出先の拠点数を国別にみると、メキシコは第11位(1,313社)で南米ブラジル(682社)の2倍です。1964年に30社で設立された在メキシコ日本商工会議所の加盟者数は、2011年に始まった日系企業の進出ラッシュを経て、2023年には527社に増えています。中南米の投資先としてメキシコが高い評価を得ていることを意味しています。しかしながら、法的安定性の欠如や電力をはじめとするインフラ整備の遅れなど克服する課題も多いのも事実です。

 

国別海外進出先拠点数(2022年)                                                 

1

中国

31,324

2

米国

8,673

3

タイ

5,854

4

インド

4,901

5

ベトナム

2,373

6

インドネシア

2,103

7

ドイツ

1,918

8

マレーシア

1,856

9

台湾

1,434

10

フィリピン

1,502

11

メキシコ

1,313

 

ブラジル

682      

 

米国の自動車製造・輸出拠点としてメキシコの重要性が再認識

 

  2011年にマツダが自動車の製造拠点をグアナフアト州(Guanajuato)サラマンカ市(Salamanca)に建設するプロジェクトを発表し、続いて、ホンダが同州のセラヤ市(Celaya)に第二工場建設計画を公表しました。マツダとホンダの完成車メーカーによるメキシコ進出が、自動車部品会社の進出ラッシュの火付け役となりました。2016年1月には、同州最大都市のレオン市(León)に日本総領事館が開設され、日本から多数の自動車関連産業の駐在員が中長期にわたり、メキシコの中央高原に赴任することになりました。

 

  当時、在日メキシコ大使館(メキシコ経済省駐日代表部)に在籍していた私は、日本企業からメキシコ進出に関する問い合わせの対応に忙殺されていました。マツダが進出先をブラジルではなくメキシコに最終決定したのは、私の上司であった大使館のメキシコ人公使の的確な助言があったからだと言えます。また、ホンダの埼玉県下の系列部品サプライヤーの投資先決定にも、駐日メキシコ大使館とグアナフアト州経済開発省の熱心な支援がなければ実現しなかったでしょう。

  工場建設の立地選定に時間を要したトヨタは、最終的にはマツダとホンダが選んだグアナフアト州のエル アパセオ グランデ(El Apaseo Grande)に決めました。メキシコで早くから進出し販売実績があるニッサンは、アグアスカリエンテス市(Aguascalientes)で生産拡大するため、ダイムラーと合弁で既存の場所に第三工場を建設することにしました。

 

  既存事業の拡大、今後の新規企業や自動車産業以外の進出を期待

 

日系企業のメキシコ進出は現在1,300社以上を超えています。これは米国市場に近い、競争力があり、豊富な労働力などメキシコの持つ優位特性と投資環境が再評価された結果です。駐日メキシコ大使館、ジェトロ新興国進出支援専門家、ハリスコ州貿易投資日本事務所、メヒココンサルティング等で私が培った経験を活かして、日本企業がメキシコ進出する支援業務を今後も個人事業として継続していきたいと思います。メキシコ進出に関するビジネスでお困りの方は遠慮なくご相談下さい。