『イン・ハー・シューズ』★★
(2005年・アメリカ)
監督= カーティス・ハンソン
出演=キャメロン・ディアス、トニー・コレット
シャーリー・マクレーン
タイプの全く違う二人の姉妹。弁護士として働くがロマンスには縁のない姉。
スタイル抜群で男とすぐ関係を持ってしまうが、フリーターですぐにクビに
なってしまう無職の妹。共通点は靴のサイズだけ。喧嘩して姉の所を飛び出
した妹は、行く当てもなく、まだ見ぬ祖母を訪ねていくことになる。
話はわかりやすく、理解しやすい。特に女性の心理が細やかに描かれている
ので、女性の立場からは共感できる部分が多いと思う。姉妹の抱く感情、世
代観の相違、親子・祖母と孫との関係が丁寧に語られている。逆に言うと、
男性側の立場は弱いかも。『マグノリアの花たち』を思いだす。
新旧のコメディエンヌの演技がいい。シャーリー・マクレーンは、明るさの
中にどこか寂しさを抱えながら、毅然として生きる姿が見事。キャメロン・
ディアスは、頭とお尻が軽い役柄にぴったり。スタイルの良さ、脚の線の美
しさには男性でなくても見とれてしまう。
それぞれどこかにコンプレックスや不満を抱えながら、日々を生きている。
何かのきっかけで、現状を変え、自分自身も変わっていく。それは、一人で
はできない事だ。嫌っていた妹や、存在さえ知らなかった祖母や、周りの人
々との関わりから生まれていく。憎んだり恨んだりする事の無意味さを感じ
させられる。その相手が、自分に幸せをもたらしてくれたのだから。誰かの
為に、その日を生きていく事を選ぶ。誰かが待っているから、明日に踏み出
していくことができる。
みな違う形で悩みながら生きている。これから先も悩みは尽きないだろうが、
何らかの形でこの女性達に、それぞれの幸せが訪れた事にほっとする。転機
はいつ訪れるかわからない。老人ホームにいても。いつでも変われる可能性
があるのだ。そう思わせてくれるハッピーな映画だった。
(2005年・アメリカ)
- 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- イン・ハー・シューズ
監督= カーティス・ハンソン
出演=キャメロン・ディアス、トニー・コレット
シャーリー・マクレーン
タイプの全く違う二人の姉妹。弁護士として働くがロマンスには縁のない姉。
スタイル抜群で男とすぐ関係を持ってしまうが、フリーターですぐにクビに
なってしまう無職の妹。共通点は靴のサイズだけ。喧嘩して姉の所を飛び出
した妹は、行く当てもなく、まだ見ぬ祖母を訪ねていくことになる。
話はわかりやすく、理解しやすい。特に女性の心理が細やかに描かれている
ので、女性の立場からは共感できる部分が多いと思う。姉妹の抱く感情、世
代観の相違、親子・祖母と孫との関係が丁寧に語られている。逆に言うと、
男性側の立場は弱いかも。『マグノリアの花たち』を思いだす。
新旧のコメディエンヌの演技がいい。シャーリー・マクレーンは、明るさの
中にどこか寂しさを抱えながら、毅然として生きる姿が見事。キャメロン・
ディアスは、頭とお尻が軽い役柄にぴったり。スタイルの良さ、脚の線の美
しさには男性でなくても見とれてしまう。
それぞれどこかにコンプレックスや不満を抱えながら、日々を生きている。
何かのきっかけで、現状を変え、自分自身も変わっていく。それは、一人で
はできない事だ。嫌っていた妹や、存在さえ知らなかった祖母や、周りの人
々との関わりから生まれていく。憎んだり恨んだりする事の無意味さを感じ
させられる。その相手が、自分に幸せをもたらしてくれたのだから。誰かの
為に、その日を生きていく事を選ぶ。誰かが待っているから、明日に踏み出
していくことができる。
みな違う形で悩みながら生きている。これから先も悩みは尽きないだろうが、
何らかの形でこの女性達に、それぞれの幸せが訪れた事にほっとする。転機
はいつ訪れるかわからない。老人ホームにいても。いつでも変われる可能性
があるのだ。そう思わせてくれるハッピーな映画だった。
『ウォーク・ザ・ライン 君に続く道』★★★
(2005年・アメリカ)
監督・脚本=ジェームズ・マンゴールド
出演=ホアキン・フェニックス、リース・ウィザースプーン
多くのミュージシャンに影響を与えたジョニー・キャッシュの自伝。
最初は、自分の思いを長く貫いた男の純愛物語かと思っていた。「自伝」と
言われると納得。幼い頃の経験からずっと丁寧に綴られている。なので、
ちょっと長め。少年時代の辛い労働、一番愛していた兄の死、両親とのすれ
違い。音楽を聴く余裕さえない。徴兵後、結婚すると、妻の為にセールスの
仕事に励む。だが、裕福な家庭に生まれ育った妻と意見の相違がある。そん
な中、幼い頃に聴いていた音楽に楽しみを見いだし、バンド活動を始める。
何事にも必死になって真剣に取り組む姿が一貫して見られる。それは、子供
の頃の兄の死によるものかもしれない。心の傷をどこかに抱いたまま、仕事
に打ち込み、妻の為、収入を得る為に、音楽でも成功を収めようと努力する。
そこには悲壮感さえ漂うようだ。失った自分の分身を取り戻そうとするかの
ように、決して取り戻せないものを求めて。
バンドが順調に活動を続け、人気が出始める。元々は、妻のため収入の為に
始めた活動なのに、そのせいで妻と過ごす時間がなくなり、心もすれ違って
いく。誰かの為にと必死に頑張る彼は、父からも、妻からも、周囲の人間か
らの理解が得られない。人気に溺れ、酒やドラッグに浸り始める。
そこで出会ったのが、ジューン・カーターだった。彼女も当時、離婚した事
で非難の目で見られながら、一人で子供を育てていた。彼女に惹かれながら
も、子供を愛し、結婚関係を続けていたジョニーにとっては不倫になってし
まう。不幸な関係を続けることは辛い。かといって、離婚も簡単ではない。
悩みを抱えたまま、ドラッグに溺れ音楽活動さえままならなくなる。
彼女とジョニーが結婚するまで十数年という事に驚いた。それだけ長い時間
が必要だったのかと。彼女に出会って、ようやくジョニーは、誰かに「理解
される」安らぎを感じられたのではないか。兄の死で自分を責め、父にも責
められているように感じ、妻からも非難される。長く続いた苦悩がようやく
報われたのだ。音楽での成功も、全ては愛する人の為。「愛情」を求めて、
やっと得られた幸せ。彼の音楽活動よりも、苦悩に満ちた彼の人生に幸せが
訪れ、最後まで続いた事が本当に良かったと思えた。
途中演奏される曲の全てを、ホアキン・フェニックスと、リース・ウィザー
スプーンが自演しているのが素晴らしい。リースは、音楽一家で育ったとい
うイメージにぴったりだし、歌も上手い!ホアキンは、やや線の太い容姿に
声も魅力的だ。主演二人の熱演が、情熱を伝えている。
(2005年・アメリカ)
監督・脚本=ジェームズ・マンゴールド
出演=ホアキン・フェニックス、リース・ウィザースプーン
多くのミュージシャンに影響を与えたジョニー・キャッシュの自伝。
最初は、自分の思いを長く貫いた男の純愛物語かと思っていた。「自伝」と
言われると納得。幼い頃の経験からずっと丁寧に綴られている。なので、
ちょっと長め。少年時代の辛い労働、一番愛していた兄の死、両親とのすれ
違い。音楽を聴く余裕さえない。徴兵後、結婚すると、妻の為にセールスの
仕事に励む。だが、裕福な家庭に生まれ育った妻と意見の相違がある。そん
な中、幼い頃に聴いていた音楽に楽しみを見いだし、バンド活動を始める。
何事にも必死になって真剣に取り組む姿が一貫して見られる。それは、子供
の頃の兄の死によるものかもしれない。心の傷をどこかに抱いたまま、仕事
に打ち込み、妻の為、収入を得る為に、音楽でも成功を収めようと努力する。
そこには悲壮感さえ漂うようだ。失った自分の分身を取り戻そうとするかの
ように、決して取り戻せないものを求めて。
バンドが順調に活動を続け、人気が出始める。元々は、妻のため収入の為に
始めた活動なのに、そのせいで妻と過ごす時間がなくなり、心もすれ違って
いく。誰かの為にと必死に頑張る彼は、父からも、妻からも、周囲の人間か
らの理解が得られない。人気に溺れ、酒やドラッグに浸り始める。
そこで出会ったのが、ジューン・カーターだった。彼女も当時、離婚した事
で非難の目で見られながら、一人で子供を育てていた。彼女に惹かれながら
も、子供を愛し、結婚関係を続けていたジョニーにとっては不倫になってし
まう。不幸な関係を続けることは辛い。かといって、離婚も簡単ではない。
悩みを抱えたまま、ドラッグに溺れ音楽活動さえままならなくなる。
彼女とジョニーが結婚するまで十数年という事に驚いた。それだけ長い時間
が必要だったのかと。彼女に出会って、ようやくジョニーは、誰かに「理解
される」安らぎを感じられたのではないか。兄の死で自分を責め、父にも責
められているように感じ、妻からも非難される。長く続いた苦悩がようやく
報われたのだ。音楽での成功も、全ては愛する人の為。「愛情」を求めて、
やっと得られた幸せ。彼の音楽活動よりも、苦悩に満ちた彼の人生に幸せが
訪れ、最後まで続いた事が本当に良かったと思えた。
途中演奏される曲の全てを、ホアキン・フェニックスと、リース・ウィザー
スプーンが自演しているのが素晴らしい。リースは、音楽一家で育ったとい
うイメージにぴったりだし、歌も上手い!ホアキンは、やや線の太い容姿に
声も魅力的だ。主演二人の熱演が、情熱を伝えている。
『メゾン・ド・ヒミコ』★★
(2005年・日本)
脚本=渡辺あや
出演=オダギリジョー、柴咲コウ
『ジョゼと虎と魚たち』のコンビ、犬童一心監督&渡辺あや脚本の作品。
実は『ジョゼと…』は期待せずに見たのだけど、面白かった。少し現実
から離れた時間と空間を創り出して、そこから現実を見てるような、
不思議な空気感を持っ た映画だった。主演の池脇千鶴が意外に良い。
今回は池脇&妻夫木から、柴咲&オダジョーのコンビ。またオダジョー
かぁ、と思いつつ。
話は、伝説のゲイバー「卑弥呼」のママが作り過ごしている、ゲイの為
の老人ホームが舞台。そこに住むゲイの春彦(オダジョー)が、借金を
抱えながら塗装会 社で働く沙織(柴咲コウ)に働かないかと誘いに来る。
まず、「ゲイ」という世界が特殊で、現実から少し外れた所にあるのが
『ジョゼと…』を思わせる。何よ りも、ゲイバーのママ「ヒミコ」役の
” 田中泯”の存在感がスゴイ!この作品が引き締まったものになり、
現実とかけ離れたものにならなかったのは、彼の存在によるものだろう。
絵空事になりがちな 設定を、現実と上手く結びつけている。ゲイ役の役
者達も、誰が本物で誰が演技なのかわからなくなるほどこなれている。
しかめっ面の”ブス”柴咲コウと、美 しく影のある”ゲイ”の青年オダ
ギリジョー。どうして顔をしかめる事でしか演技できないんだろう、
柴崎コウって。オダギリジョーはやっぱりカッコ良かっ た。好きじゃ
ないけど、今回の役は色気が感じられて悪くない。二人のキスシーンが
やけに長いなぁ…と思ってたら、あぁ、そうか、という感じ。
普通の人達の 中では、こんなに自分を開放できないんじゃないかと思う
くらいゲイのみんなは生き生きと過ごす。お互いが認め合い、否定する
こともない。それでも、壁一枚 隔てて現実は存在する。その現実が壁を
超えて押し寄せてくる。見ない振りも、存在を無視することも、やはり
できない。誰もが向き合わなければならない現実 の厳しさ。その厳しさ
は、ゲイだから、という訳ではない。が、彼等には、特に、年を重ねた
彼等には一層厳しい現実。
だからといって、彼等は否定されたり、否 定的に描かれることはない。
そこには救いがある。彼等を理解しようとする家族や子供達。人との
繋がり、っていいなぁ、とじんわり感じさせてくれる。どんな 形であれ、
人と人とが繋がる事で、そこに”何か”が生まれてくる。好きだとか
嫌いだとか、良いとか悪いとか、考えるより触れ合う事で変わっていく
ものがそこにあ る。
嫌な事も含めて、自分を持ち、現実に向き合っていく態度が清々しい。
凛とした「ヒミコ」の生き方が象徴的だ。
(2005年・日本)
- 角川エンタテインメント
- メゾン・ド・ヒミコ 特別版 (初回限定生産)
脚本=渡辺あや
出演=オダギリジョー、柴咲コウ
『ジョゼと虎と魚たち』のコンビ、犬童一心監督&渡辺あや脚本の作品。
実は『ジョゼと…』は期待せずに見たのだけど、面白かった。少し現実
から離れた時間と空間を創り出して、そこから現実を見てるような、
不思議な空気感を持っ た映画だった。主演の池脇千鶴が意外に良い。
今回は池脇&妻夫木から、柴咲&オダジョーのコンビ。またオダジョー
かぁ、と思いつつ。
話は、伝説のゲイバー「卑弥呼」のママが作り過ごしている、ゲイの為
の老人ホームが舞台。そこに住むゲイの春彦(オダジョー)が、借金を
抱えながら塗装会 社で働く沙織(柴咲コウ)に働かないかと誘いに来る。
まず、「ゲイ」という世界が特殊で、現実から少し外れた所にあるのが
『ジョゼと…』を思わせる。何よ りも、ゲイバーのママ「ヒミコ」役の
” 田中泯”の存在感がスゴイ!この作品が引き締まったものになり、
現実とかけ離れたものにならなかったのは、彼の存在によるものだろう。
絵空事になりがちな 設定を、現実と上手く結びつけている。ゲイ役の役
者達も、誰が本物で誰が演技なのかわからなくなるほどこなれている。
しかめっ面の”ブス”柴咲コウと、美 しく影のある”ゲイ”の青年オダ
ギリジョー。どうして顔をしかめる事でしか演技できないんだろう、
柴崎コウって。オダギリジョーはやっぱりカッコ良かっ た。好きじゃ
ないけど、今回の役は色気が感じられて悪くない。二人のキスシーンが
やけに長いなぁ…と思ってたら、あぁ、そうか、という感じ。
普通の人達の 中では、こんなに自分を開放できないんじゃないかと思う
くらいゲイのみんなは生き生きと過ごす。お互いが認め合い、否定する
こともない。それでも、壁一枚 隔てて現実は存在する。その現実が壁を
超えて押し寄せてくる。見ない振りも、存在を無視することも、やはり
できない。誰もが向き合わなければならない現実 の厳しさ。その厳しさ
は、ゲイだから、という訳ではない。が、彼等には、特に、年を重ねた
彼等には一層厳しい現実。
だからといって、彼等は否定されたり、否 定的に描かれることはない。
そこには救いがある。彼等を理解しようとする家族や子供達。人との
繋がり、っていいなぁ、とじんわり感じさせてくれる。どんな 形であれ、
人と人とが繋がる事で、そこに”何か”が生まれてくる。好きだとか
嫌いだとか、良いとか悪いとか、考えるより触れ合う事で変わっていく
ものがそこにあ る。
嫌な事も含めて、自分を持ち、現実に向き合っていく態度が清々しい。
凛とした「ヒミコ」の生き方が象徴的だ。
『アカルイミライ』★
(2003年・日本)
(2003年・日本)
- メディアファクトリー
- アカルイミライ 特別版
監督=黒沢清
出演=オダギリジョー、浅野忠信、藤竜也
工場で働く雄二と守は、ある日社長夫妻を殺す。刑務所に入った
守は自殺。守に飼っていたクラゲを託された雄二は、守の父親と
暮らし始める。
この映画は、題名のように「アカルク」ない。暗い。
正直、2時間は長かった。退屈を紛らわせようと、役者を見たり、
ロケ地がどの辺だったか考えていたりしていた。家で見たせいも
あるかもしれない。洋画に比べて邦画は、情報量が少なく、見慣
れた景色や人物は、時に退屈する部分もある。或いは、あまりに
リアルな現実を見せられて嫌になるのかもしれない。
登場人物は、僅かに触れ合いながらも、深くは関わらない。世代
の違い、生きている世界の違い。都市で生きるということ。カサ
カサした、ひりひりした皮膚感覚。男性ばかりの世界だからか。
光る「クラゲ」が、シンボル的な存在となる。守が唯一大切にし
ていた、毒を持つ「クラゲ」。水槽から出て、川を漂い、海を目
指す。それは何かの救いとなるのか。その「クラゲ」の行動に、
何かを感じ取る雄二。きっと彼にとっての「海」はあるはずだ。
目指すべき「海」が。
そうした事は感じられながらも、描かれる彼等の世界は狭く、閉
塞感を感じてしまう。そこに「アカルイミライ」を見られないの
は、現実を見せられ、私自身が、現実に閉塞感を感じている事に
気づいてしまったからだろうか。結末は、見ている側に委ねられ
ているのか。映画ではあまり見たくない、「現実」なのかもしれ
ない。だから、好みじゃないのかも。
この映画のインタビューを見て、オダジョーが好きじゃなくなった。
最後の場面、高校生が歩く場面で流れるBackHornは大好き。
『シンデレラマン』★★★
(2005年・アメリカ)
出演=ラッセル・クロウ、レネ・ゼルウィガー
ポール・ジアマッティ
大恐慌時代のアメリカで、復活によって人々を勇気づけた実在の
ボクサー、ジム・ブラドックの話。
ケガによって一度はボクシングから遠ざかったジム。大恐慌で、
その日の仕事も見つけるのにやっとの状態。生活も厳しい。それ
でも、子供には絶対によそへ預けたりしないと約束し、妻と子供
3人で暮らしていた。貧しさが続く中、”一度だけ”という試合
の話が舞い込む。報酬の為にその試合を受けることにする。
愛情深い父親役のラッセル・クロウがいい。ロン・ハワード監督
とは『ビューティフル・マインド』でも組んでいた。
家族と共に暮らすこと。それだけを願い、ケガを圧してボクシン
グの試合に出、荷揚げの仕事を引き受ける。子供の盗みに自らの
責任を感じ、優しく諭す。レネ・ゼルウィガーの引きつったよう
な笑顔があまり好みじゃないんだけど、気の強さが出ている。そ
の妻に比べ、気の弱さを感じる程の優しさが滲み出ている。
ボクシングのシーンは、かなり多く迫力がある。見ているのも辛
くなる負け試合もある。ボクシングは、ストイックなスポーツで
あり、戦い方によっては命の危険に直面する。他人の試合でも見
ているのが辛い事が多いのに、身内であれば尚更直視しているの
は厳しいだろう。ボクシングから暫く遠ざかっていた選手であれ
ば、不安も募る。
それでも試合を受けたのは、もちろん報酬が欲しいという点がある。
だが、彼は元々ボクサーなのだ。その姿を子供に見せ、自らもその
プライドを取り戻したかったのではないか。負けるかもしれないし、
命の危険があるかもしれないが。
映画の中で一番辛かったのは、仕事も見つからず、冬の寒さの中
電気も止められ、どうしてもお金が必要となった時に訪れる場所だ。
昔の仲間に頭を下げるシーン。プライドも捨て、ただ家族のために
頭を下げる。どんな思いだったろう。胸が締め付けられた。その時、
失ったものを彼自身が取り返したかったのだ。
そして、それを勝ち得たのもやはり家族のためだった。心の中に
「何か」を持つことは、こんなにも強いのかと思う。心の芯の部分
に、彼を支え、彼が支えていくべき存在がある。愛する人がいるこ
とで強くなれる。守るものがあって、また立ち上がれる。やっぱり
「愛」なんだなぁ。
(2005年・アメリカ)
- ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
- シンデレラマン
出演=ラッセル・クロウ、レネ・ゼルウィガー
ポール・ジアマッティ
大恐慌時代のアメリカで、復活によって人々を勇気づけた実在の
ボクサー、ジム・ブラドックの話。
ケガによって一度はボクシングから遠ざかったジム。大恐慌で、
その日の仕事も見つけるのにやっとの状態。生活も厳しい。それ
でも、子供には絶対によそへ預けたりしないと約束し、妻と子供
3人で暮らしていた。貧しさが続く中、”一度だけ”という試合
の話が舞い込む。報酬の為にその試合を受けることにする。
愛情深い父親役のラッセル・クロウがいい。ロン・ハワード監督
とは『ビューティフル・マインド』でも組んでいた。
家族と共に暮らすこと。それだけを願い、ケガを圧してボクシン
グの試合に出、荷揚げの仕事を引き受ける。子供の盗みに自らの
責任を感じ、優しく諭す。レネ・ゼルウィガーの引きつったよう
な笑顔があまり好みじゃないんだけど、気の強さが出ている。そ
の妻に比べ、気の弱さを感じる程の優しさが滲み出ている。
ボクシングのシーンは、かなり多く迫力がある。見ているのも辛
くなる負け試合もある。ボクシングは、ストイックなスポーツで
あり、戦い方によっては命の危険に直面する。他人の試合でも見
ているのが辛い事が多いのに、身内であれば尚更直視しているの
は厳しいだろう。ボクシングから暫く遠ざかっていた選手であれ
ば、不安も募る。
それでも試合を受けたのは、もちろん報酬が欲しいという点がある。
だが、彼は元々ボクサーなのだ。その姿を子供に見せ、自らもその
プライドを取り戻したかったのではないか。負けるかもしれないし、
命の危険があるかもしれないが。
映画の中で一番辛かったのは、仕事も見つからず、冬の寒さの中
電気も止められ、どうしてもお金が必要となった時に訪れる場所だ。
昔の仲間に頭を下げるシーン。プライドも捨て、ただ家族のために
頭を下げる。どんな思いだったろう。胸が締め付けられた。その時、
失ったものを彼自身が取り返したかったのだ。
そして、それを勝ち得たのもやはり家族のためだった。心の中に
「何か」を持つことは、こんなにも強いのかと思う。心の芯の部分
に、彼を支え、彼が支えていくべき存在がある。愛する人がいるこ
とで強くなれる。守るものがあって、また立ち上がれる。やっぱり
「愛」なんだなぁ。
『50回目のファースト・キス』★★
(2004年・アメリカ)
出演=ドリュー・バリモア、アダム・サンドラー、
ロブ・シュナイダー
ハワイの水族館で働くヘンリーは、旅行者と”ゆきずりの恋”を
楽しんでいた。そんな彼が出会った地元の女性ルーシーは、交通
事故の為、前日の記憶を忘れてしまう。毎日彼女を口説き始める
ヘンリーとルーシーの恋の行方は…。
南の島のおとぎ話かファンタジーといった感じ。事故による障害
は、けして軽いものではないのに、ハワイという常夏の島や水族
館の動物達、彼等を取り囲む人々によって、全く暗くない明るい
コメディに仕上がっている。
ドリュー・バリモアの笑顔と明るさが魅力的。存在を忘れられても、
毎日彼女を口説こうとするヘンリーの姿は、流行りの純愛物の路線
なのか。これ以上、あまり書くことがないけど、常夏の島にぴった
りのほんわかとした温かなハッピーな物語でした。
めでたしめでたし。
(2004年・アメリカ)
- ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
- 50回目のファースト・キス コレクターズ・エディション
出演=ドリュー・バリモア、アダム・サンドラー、
ロブ・シュナイダー
ハワイの水族館で働くヘンリーは、旅行者と”ゆきずりの恋”を
楽しんでいた。そんな彼が出会った地元の女性ルーシーは、交通
事故の為、前日の記憶を忘れてしまう。毎日彼女を口説き始める
ヘンリーとルーシーの恋の行方は…。
南の島のおとぎ話かファンタジーといった感じ。事故による障害
は、けして軽いものではないのに、ハワイという常夏の島や水族
館の動物達、彼等を取り囲む人々によって、全く暗くない明るい
コメディに仕上がっている。
ドリュー・バリモアの笑顔と明るさが魅力的。存在を忘れられても、
毎日彼女を口説こうとするヘンリーの姿は、流行りの純愛物の路線
なのか。これ以上、あまり書くことがないけど、常夏の島にぴった
りのほんわかとした温かなハッピーな物語でした。
めでたしめでたし。
『秘密のかけら』★★★
(2005年・カナダ、イギリス、アメリカ)
監督・脚本=アトム・エゴヤン
原作=ルパート・ホームズ
出演=ケビン・ベーコン、コリン・ファース、アリソン・ローマン
テレビで人気を博していた二人組、ラニーとヴィンス。突然のコンビ
解消の直前に殺人事件が起こっていた。殺人事件とコンビ解消の関係
の真相を、ジャーナリストのカレンが追い始める。
ミステリアスな雰囲気とエロティシズムが全体に漂う。ケビン・ベー
コンの軽さを持つ色気と、コリン・ファースの影のある紳士ぶりがい
い。二人とも引退後は、人目を逃れるかのようにして、生活している。
ラニー(ケビン・ベーコン)は静かに、ヴィンス(コリン・ファース)
はどこか狂気を秘めて、何かを忘れたいかのように世間とは隔絶して。
引退して15年経つ彼等に興味を持つ、新進ジャーナリストのカレン。
彼女の目的が今ひとつ曖昧だ。ジャーナリストとしての野心、彼女に
とってのアイドルだった彼等への憧れ、引退と殺人事件の関連への好
奇心、疑い、真実の解明、犯人探し…。
残念だけれど、彼女の心理がうまく伝わってこなかったために、この
作品への評価は下がってしまった。野心に満ち、子供の頃の経験を利
用して取材を成功させ、名声をものにする事に徹するか、取材を口実
にかつての憧れのスターに近づくか、被害者のためにもあくまで真相
の解明を望むのか、彼等の無実を信じて疑いを晴らそうとするのか。
お金、名声、成功。取材の結果によっては、望めば何でも手にするこ
とができるかもしれない。
常に、善意の第三者としてい続けるのがジャーナリストなのかもしれ
ないが。例えば、彼女に起きたと番組で取り上げられた「ミラクル」
が、実は「やらせ」だった、なんていう設定だったら面白かった。被
害者のモーリーンにも、明かせない秘密の部分があったように、誰し
も秘密を持ちながら生きている、という事がはっきりする。カレンの
立場と演技が曖昧だった事で、事件への集中が少し削がれた。彼女は
何が目的なんだろう、と思ってしまったから。それがなければ、ミス
テリアスな部分ももう少し盛り上がれたかもしれない。
真相は意外なものに終わる。大金が絡むショー・ビジネスの世界には、
今も昔もきな臭い部分がある。悲しい結果をもたらしたのは、持ち続
けるのが彼等の手に余った「秘密」の大きさのせいなのだろうか。
「秘密」自体に耐えられなかった、繊細な彼等の心にあるのだろうか。
ドラッグにお酒、ビッグ・マネー、マフィア。ショー・ビジネスの世界
に精神を侵された人々の末路と言えるかもしれない。
(2005年・カナダ、イギリス、アメリカ)
監督・脚本=アトム・エゴヤン
原作=ルパート・ホームズ
出演=ケビン・ベーコン、コリン・ファース、アリソン・ローマン
テレビで人気を博していた二人組、ラニーとヴィンス。突然のコンビ
解消の直前に殺人事件が起こっていた。殺人事件とコンビ解消の関係
の真相を、ジャーナリストのカレンが追い始める。
ミステリアスな雰囲気とエロティシズムが全体に漂う。ケビン・ベー
コンの軽さを持つ色気と、コリン・ファースの影のある紳士ぶりがい
い。二人とも引退後は、人目を逃れるかのようにして、生活している。
ラニー(ケビン・ベーコン)は静かに、ヴィンス(コリン・ファース)
はどこか狂気を秘めて、何かを忘れたいかのように世間とは隔絶して。
引退して15年経つ彼等に興味を持つ、新進ジャーナリストのカレン。
彼女の目的が今ひとつ曖昧だ。ジャーナリストとしての野心、彼女に
とってのアイドルだった彼等への憧れ、引退と殺人事件の関連への好
奇心、疑い、真実の解明、犯人探し…。
残念だけれど、彼女の心理がうまく伝わってこなかったために、この
作品への評価は下がってしまった。野心に満ち、子供の頃の経験を利
用して取材を成功させ、名声をものにする事に徹するか、取材を口実
にかつての憧れのスターに近づくか、被害者のためにもあくまで真相
の解明を望むのか、彼等の無実を信じて疑いを晴らそうとするのか。
お金、名声、成功。取材の結果によっては、望めば何でも手にするこ
とができるかもしれない。
常に、善意の第三者としてい続けるのがジャーナリストなのかもしれ
ないが。例えば、彼女に起きたと番組で取り上げられた「ミラクル」
が、実は「やらせ」だった、なんていう設定だったら面白かった。被
害者のモーリーンにも、明かせない秘密の部分があったように、誰し
も秘密を持ちながら生きている、という事がはっきりする。カレンの
立場と演技が曖昧だった事で、事件への集中が少し削がれた。彼女は
何が目的なんだろう、と思ってしまったから。それがなければ、ミス
テリアスな部分ももう少し盛り上がれたかもしれない。
真相は意外なものに終わる。大金が絡むショー・ビジネスの世界には、
今も昔もきな臭い部分がある。悲しい結果をもたらしたのは、持ち続
けるのが彼等の手に余った「秘密」の大きさのせいなのだろうか。
「秘密」自体に耐えられなかった、繊細な彼等の心にあるのだろうか。
ドラッグにお酒、ビッグ・マネー、マフィア。ショー・ビジネスの世界
に精神を侵された人々の末路と言えるかもしれない。
『大いなる休暇』★★★
(2003年・カナダ)
出演=レイモン・ブシャール、ディビッド・ブータン、
ブノワ・ブリエール
人口わずか125人の島は仕事もなく失業者ばかり。工場誘致
の話も医者がいない理由から頓挫しそうになる。そこで、島
に休暇で来ることになった医者に住んでもらおうと計画する。
島を気に入ってもらおうと、島民達の奮闘が始まる。
カナダで大ヒットした映画。何となく、同じカナダ映画の
「みなさんさようなら」を思い出させる。派手ではないが、
エスプリの利いた、温かみを感じる佳作。
医者のいない小さな島は、仕事もなく、生活保護で暮らさざ
るを得ない状態。島を出ていく人も増えている。島で仕事を
得て働くためには、工場誘致が必要であり、その為には医者
が必要になる。やってきた医者クリストファーに、島に住ん
でもらうための島民達の努力と、その騒動が描かれている。
島の人々は仕事もなく生活保護を受け、のんびりと暮らすこ
とに慣れ満足しているのかと、最初は思った。支給を受けれ
ば、何とか生活していけなくはないのだ。だが、人々は工場
誘致を必死に進めようとする。何しろ、町長まで仕事と医者
がいないために島を出ていき、ジェルマンの妻も、島を出て
働きたいと言い出すのだ。だが、島で生まれ育った彼等は、
島に住み続けたいのだ。
島を気に入ってもらう為の努力は、涙ぐましいほどで、一生
懸命さの度が過ぎて笑いを誘う。みんなが一致団結して協力
する姿が微笑ましい。それぞれにみな愛すべき人達ばかりだ。
計画が次第にうまくすすむにつれ、ジェルマンには罪悪感を
感じ始める。失恋し、親友にも裏切られて打ちひしがれ、島
で新しい生活を始めようと考え始めたクリストファーを、み
んなで騙しているのだから。
ジェルマンの選ぶ決断がいい。自分たちの目的の為に、好き
勝手に行動していたことに気づく。彼等には「誇り」がある。
目先にある利益よりも、その事が大切なのだ。仕事を持って
働くことで、誇りを取り戻し、日々の幸せな毎日を取り戻す。
それは、忘れてしまいそうになるが、生活の、幸せな生活の
基本となる大切なことなのだ。小さなプレゼントをもらった
みたいな気分にさせられた映画だった。小さな島からの小さ
な贈り物。クリストファーにとっては、大きな贈り物だった
に違いない。
(2003年・カナダ)
- ハピネット・ピクチャーズ
- 大いなる休暇
出演=レイモン・ブシャール、ディビッド・ブータン、
ブノワ・ブリエール
人口わずか125人の島は仕事もなく失業者ばかり。工場誘致
の話も医者がいない理由から頓挫しそうになる。そこで、島
に休暇で来ることになった医者に住んでもらおうと計画する。
島を気に入ってもらおうと、島民達の奮闘が始まる。
カナダで大ヒットした映画。何となく、同じカナダ映画の
「みなさんさようなら」を思い出させる。派手ではないが、
エスプリの利いた、温かみを感じる佳作。
医者のいない小さな島は、仕事もなく、生活保護で暮らさざ
るを得ない状態。島を出ていく人も増えている。島で仕事を
得て働くためには、工場誘致が必要であり、その為には医者
が必要になる。やってきた医者クリストファーに、島に住ん
でもらうための島民達の努力と、その騒動が描かれている。
島の人々は仕事もなく生活保護を受け、のんびりと暮らすこ
とに慣れ満足しているのかと、最初は思った。支給を受けれ
ば、何とか生活していけなくはないのだ。だが、人々は工場
誘致を必死に進めようとする。何しろ、町長まで仕事と医者
がいないために島を出ていき、ジェルマンの妻も、島を出て
働きたいと言い出すのだ。だが、島で生まれ育った彼等は、
島に住み続けたいのだ。
島を気に入ってもらう為の努力は、涙ぐましいほどで、一生
懸命さの度が過ぎて笑いを誘う。みんなが一致団結して協力
する姿が微笑ましい。それぞれにみな愛すべき人達ばかりだ。
計画が次第にうまくすすむにつれ、ジェルマンには罪悪感を
感じ始める。失恋し、親友にも裏切られて打ちひしがれ、島
で新しい生活を始めようと考え始めたクリストファーを、み
んなで騙しているのだから。
ジェルマンの選ぶ決断がいい。自分たちの目的の為に、好き
勝手に行動していたことに気づく。彼等には「誇り」がある。
目先にある利益よりも、その事が大切なのだ。仕事を持って
働くことで、誇りを取り戻し、日々の幸せな毎日を取り戻す。
それは、忘れてしまいそうになるが、生活の、幸せな生活の
基本となる大切なことなのだ。小さなプレゼントをもらった
みたいな気分にさせられた映画だった。小さな島からの小さ
な贈り物。クリストファーにとっては、大きな贈り物だった
に違いない。
