今日は、受験生から、質問がありました「切り分け」についてのノウハウの話しをさせていただきます。

切り分けの必要性

切り分けの間違い例；競争戦略を問われているのに、個別戦略を答えてしまった。

このような間違いを犯すと、その設問は「0」点になります。大事故です。

ここからの挽回は、非常に困難です。細心の注意が必要です。

切り分け失敗の防止策

この大事故を防止する方法として、一言で言えば、「題意を正確に、素直に、掴む」と言うことになります。しかし、それができれば、苦労はないですね。

今日は、題意を掴む方法を１つご紹介します。

１，「時系列SWOT」の戦略策定プロセスを活用

　設問を「戦略策定プロセス」に当てはめると、試験委員の題意を掴みやすく、切り分けの判断根拠として、有効です。

　下図は、私が大変お世話になった「クレアール」のノウハウです。(事例Ⅱの例）　設問の要求を具体化するときに、各設問番号を該当する戦略プロセスに記入します。

　さらに、下図の「時系列SWOT」（私が考えた事例の与件文の情報整理に活用したフレームです。）には、戦略策定プロセスが右側に設定してありますので、これを活用すると、「設問ストーリー」を想定しやすくなります。

　各設問の解釈したあと、試験問題用紙の余白部分に簡略化した「時系列SWOT」を記入し、下図右側の「戦略策定プロセス」に該当する戦略プロセスを記入します。

　これをやると、試験委員がこの事例で受験生に何の知識を問おうとしているのか、題意を想定できます。

　具体的には、

第１問：これまで成長できた理由
第２問：競合対策
第３問：事業体制、その問題と課題
第４問：今後の成長戦略
第５問：具体的な販促策

などを時系列的に「設問ストーリー」にして、思い浮かべるようにします。そうすると、自ずと、試験委員の題意を汲み取ることが可能になります。

２．戦略とその付帯知識の整理（使えるようになること）

　また、「事業戦略上では、この知識を使う。個別戦略上では、この知識を使う。逆に、この知識は、事業戦略で使う。この知識は、個別戦略で使う。」もし、あなたが、各戦略とその付帯知識の整理が出来ているなら、切り分けは、さらに容易になります。（付帯知識とは１次の知識です。１次のキーワードです。）

　以下、設問ストーリーに付帯する知識の記入例です。

第１問：これまで成長できた理由　→　コアコンピタンス、顧客の評価（強み）
第２問：競合対策　→　差別化集中、VRIOのI（模倣困難性）
第３問：事業体制、その問題と課題　→　バリューチェーンの不調和、コニュニケーション不足、機能別組織の限界、社長の業務集中から権限移譲、モチベーション、従業員の高齢化、中核人材不足
第４問：今後の成長戦略　→　アンゾフのマトリクス、関連多角化、コアコンピタンスの磨きあげ、新分野展開
第５問：具体的な販促策　→　SNS等ネットを活用した販促、口コミによる顧客拡大、リアルの展示会、ショウルーム

３．「切り分け」というより「付帯知識の確認」の方が実際的

　「設問ストーリー」＆「付帯知識の記入」まで想定したあとに、与件文を読み始めてください。そうすると、与件文は、「読む」のではなく、「探す」作業に変わっていることに気づきます。設問ごとに想定した付帯知識と与件文を対応させてゆきます。この作業は、戦略レイヤーの切り分けというより、むしろ、設問と解答する付帯知識の対応付けであり、まさに、確認と言えます。

まとめ

　切り分け失敗による大事故を起こさない方法として、

時系列SWOTの戦略策定プロセス部分に設問番号を記入
付帯知識を書き出す
設問ストーリーを想定する
与件文で、付帯知識の確認をする

　このような手順を踏むことで、事故防止になります。

　とはいうものの、本番試験のときには「時系列SWOT」フレームを書いたり、そこに設問番号を記入したり、そこに１次の知識を書き出したりは、しませんでした。この方法で何度も事例を解いているうちに、「時系列SWOT」が滲み込んできますので、最終的には設問文の下も余白に１次の知識を書き出すだけになりました。

　以上より、考え方として、「時系列SWOT」「戦略策定プロセス」「設問ストーリー」を理解、また、使えるように訓練すること。それにより、与件文を読むのではなく探しに行くようになることができるようになると、自ずと、切り分け失敗事故がなくなると思います。

　結局、２次試験は１次試験の知識を実際に使えるか！を問う試験です。使えるように訓練する方法として、ご参考にしていただければ幸いです。

事例Ⅰ〜Ⅲのレイヤー切り分けノウハウ