わたしは服が好きだ。
流行りに乗っかり、すたれたら降りる。
子どもの頃に満たされなかった欲は、大人になってから取り戻しがち。
だと聞いたことがある。
電車の中で週刊漫画誌を少年のような顔で読みふけっている大人を見ると、よしよしと思う。
思春期真っ只中の中学生のとき。
私服は全て母のセンス1択だった。
ジーパンを履きたいと言ったら、どストレートで曖昧な色味が選ばれた。
花瓶敷きのようなフリフリレースのブラウスを着させられた。
ベビーピンクのワンピースは、胸元に熊さんとうさぎさんがいた。
とてもじゃないが好きな人には見られたくなかった。
映画を見に行こうよ。
彼氏からの誘いを本気で喜べなかった。
だって、私服でしょ。
「先生に呼ばれてるから終わったら行くね」
学校から直接来たよ、だからこんな格好なんだよ。
言わずとも伝わるように健気な嘘をついた。
ティシャツに制服のスカート。
これがデートの一張羅だった。
今では笑い話のあの頃を経て。
大人になったわたしは好きな服に囲まれている。
それにしても。
欲深過ぎてちょっと狭苦しい。