眠りは深くない。
深い眠りがどんなものだったか、もう説明もおぼつかない。
夢を見なかったことがない。
無夢、で目覚めたことなぞない。
手に持っているあんぱんが夢であることに夢の中で気づき、握りしめて起きたこともある。
うっすらあんぱんは手の中にあった。
ような記憶がうっすらある。
人のものでも人ではない存在のものでも、気配で目覚める。
秒で起きられる。
寝込みのわたしになにかを仕掛けるのは不可能だろう。
真夜中の雨音を意識が聞いている。
窓の外は月の灯りのない銀灰色だった。
「干しっぱなのにぃ」
自宅に夜干ししている洗濯物を意識が映し出す。
見せてくれなくていい。
浅い眠りのままつぶやいた。
「やっちまったなぁ」
寝言ではない。